この記事では現代数理統計学の基礎の変形で私が難しいと感じた部分の導出と解説を記載しています.
第7章 例7.6: 統計的仮説検定の式の導出
以下の文章の変形が直感的に分からなかったので計算し, 確かめた.
【例 7.6】
X_1,\cdots ,X_n, i.i.d. \; \sim \mathcal{N}(\mu,\sigma_o^2) とし, \sigma_0^2 は既知とするこの場合尤度関数はL(\mu,\mathbf{x}) = (2\pi \sigma^2)^{-n/2} \exp\{ -\sum_{i=1}^n (x_i-\mu)^2 /2\sigma_0^2 \} であり, 変形すると
L(\mu, \mathbf{x})=(2\pi \sigma_0^2)^{-n/2} \exp \{ -\sum_{i=1}^n (x_i-\bar{x})^2/(2\sigma_0^2) - n(\bar{x}-\mu)^2/(2\sigma_0^2) \}
導出
Lのexpの中身のみが変わっているのでその部分を比較する. 変形後のexpの中身から変形前のexpの中身に変形できることを確かめる.
\begin{align*}
(\text{与式該当部分})
&=
-\sum_{i=1}^n (x_i-\bar{x})^2/(2\sigma_0^2) - n(\bar{x}-\mu)^2/(2\sigma_0^2)\\
&=
-
\frac{1}{2\sigma_0^2}
\biggl[
\sum_{i=1}^n (x_i-\bar{x})^2
+
n(\bar{x}-\mu)^2
\biggr]
\\
&=
-
\frac{1}{2\sigma_0^2}
\biggl[
\sum_{i=1}^n (x_i-\bar{x})^2
+
\sum_{i=1}^n (\bar{x}-\mu)^2
\biggr]
\\
&=
-
\frac{1}{2\sigma_0^2}
\biggl[
\sum_{i=1}^n \{ (x_i-\bar{x})^2
+
(\bar{x}-\mu)^2
\}
\biggr]
\\
&=
-
\frac{1}{2\sigma_0^2}
\biggl[
\sum_{i=1}^n \{ (x_i-\bar{x}
+
\bar{x}-\mu)^2
-
2(x_i-\bar{x})(\bar{x}-\mu)
\}
\biggr]
\\
&=
-
\frac{1}{2\sigma_0^2}
\biggl[
\sum_{i=1}^n
(x_i-\bar{x}+\bar{x}-\mu)^2
-
2(\bar{x}-\mu)
\sum_{i=1}^n
(x_i-\bar{x})
\biggr]
\\
&=
-
\frac{1}{2\sigma_0^2}
\sum_{i=1}^n
(x_i-\mu)^2
\\
&=
-
\sum_{i=1}^n
(x_i-\mu)^2/(2\sigma_0^2)
\end{align*}
最終行より, 変形前のexpの中身になっているので逆変形を行うことにより導出が出来るとわかる.
解説
3行目の変形では(\bar{x}-\mu) が i に依存しないため n 回足すことが n を掛けることと同じであることを用いている.
5行目の変形では, 以下の公式を用いている.
\begin{align*}
(a+b)^2
&=
a^2+b^2+2ab
\\
(a+b)^2-2ab
&=
a^2+b^2
\end{align*}
この公式にa=x_i-\bar{x}, b=\bar{x}-\muを代入することで5行目の変形を得られている.
6行目では(\bar{x}-\mu) は i に依存しないため, 総和記号から括りだしている.
7行目では偏差総和になっていることから第二項を除去している.
参考文献
久保川達也.”現代数理統計学の基礎”.2017.共立出版
Discussion