2015年度の英国の歳入と歳出の可視化と分析
目的
この記事では、Tableau での探索的データ分析(EDA)スキルの向上を目的として、information is beautiful にアップされていた「UK Government Spending」のデータである UK Government Incomes & Outcomes を可視化し、分析した結果を共有します。😁
背景
Tableau のDATA SABAR プログラム の学習の一環で、独自のViz を作り、Tableau Public にアップしています。いくつかの分析企画を同時並行で進めており、その内の一つが、今回の 「2015年度の英国の歳入と歳出」 でした。😏
UK Government Incomes & Outcomes とは
David McCandless、Dr Stephanie Starling によって作られたデータで、 2015年度のイギリス政府の歳入と歳出を10億ポンドの単位で、記録したデータです。 歳入と歳出で、それぞれシートが分かれており、勘定分類、費目で構成されています。費目毎に歳入・歳出額が記録されており、費目が所属する勘定分類の合計が灰色にハッチングされ合計金額として、記録されています。
尚、このデータは、費目の合計と、費目が所属する勘定分類の金額が一致していなかったりと、若干、正確性に疑問が残るデータになっています。 😓 目的は、あくまで探索的分析(EDA)の練習であったため、特段、細かな裏取り等はしませんでした。 又、合計が合わなかった勘定分類については、「その他」の費目を足して調整する等のクレンジングを行いました。☺️
分析の設計
以下の問いを設定し、分析を行いました。
- 歳入源は、どうなっているだろうか?
- 歳出先は、どうなっているだろうか?
- 歳入源と歳出先に、どのような特徴が観察されるだろうか?
結論
観察事項
歳入源は、どうなっているだろうか?
- 最大の歳入源は「Taxes On Production」(生産課税)で2,423億ポンドでした。「Taxes on Wealth and Income」(富と所得に対する税金)が次いで、2,217億ポンド、3位は「Public Sector Receipts」(公共部門の収入)で、1,987億ポンドでした。🤔
- 気になるのは 「Budget Deficit」(財政赤字)で、710億ポンド でした。😳
歳入源には、どのような特徴が観察されるだろうか?
- 「Taxes On Production」(生産課税)の内訳を見ると、「VAT」(付加価値税)が最多の1,310億ポンド、「Fuel Duties」(燃料税)が276億ポンドで続き、「Business Rates」(店舗、事務所、工場などの事業用資産にかかる地方自治体の固定資産税)が僅差で262億ポンドでした。
- 「Taxes on Wealth and Income」(富と所得に対する税金)の内訳は、「PAYE」(源泉徴収)が最多の1,460億ポンドで、2位は「Corporation Tax」 (法人税)で351億ポンド、3位は「Self Employed」(自営業者からの徴収)で243億ポンドでした。
- 「Public Sector Receipts」(公共部門の収入)の内訳を見ると、「National Insurance」(国民保険による徴収)が最多の1,140億ポンドで、「Operating Surplus」(営業余剰)が453億ポンド、「Council Tax」(地方自治体が住居に課す地方税)が289億ポンドになっています。
- 尚、費目数は全部で29項目ありました。
歳出先は、どうなっているだろうか?
- 歳出先は「Social Protection」(社会的保護)が最多で、2,679億ポンド使われており、続いて「Health」(保険・衛生)が1,387億ポンド、「Education」(教育)が3位で840億ポンドでした。
- これらに加え、イギリスを構成する「Scotland」(スコットランド)に435億ポンド、「N. Ireland」(北アイルランド)に251億ポンド、「Wales」(ウェールズ)に171億ポンドがそれぞれ使われています。
歳出先には、どのような特徴が観察されるだろうか?
- 「Social Protection」(社会的保護)の内訳を見ると「Pensions & Old Age」(年金と高齢者)が最多の1,201億ポンドでした。これに続いて「Sickness & Disability」(病人並びに障害者)への歳出が530億ポンド、「The Socially Excluded」(社会的排除者)への歳出が315億ポンドでした。
- 「Health」(保険・衛生)の内訳は、「その他」を除き、「Technical & Managerial Staff」(技術並びに管理部門スタッフ)への歳出が292.2億ポンド、「Doctors & Nurses」(医師並びに看護師)への歳出が194.8億ポンド、「Private Healthcare」(民間で提供される医療サービス)への歳出が161.7億ポンドでした。
- 「Education」(教育)は、「Secondary」(セカンダリー・スクール。日本の中学校に相当)が最多の381.9億ポンド使われており、「Primary」(プライマリー。日本の小学校に相当)が続く276.9億ポンド、「Post-Secondary School」(ポスト・セカンダリー・スクール。大学、専門学校、職業訓練校が相当)に59億ポンドが使われています。
- 又、 歳出の費目数は、57項目でした。
観察から得られた示唆
- 2015年度時点のイギリス政府の歳入は、歳出に対して710億ポンドの財政赤字 でした。これは、歳出に対して、歳入が不足している ことを表しています。
- 単純な費目数の比較では、歳入源が29項目であったのに対し、歳出は57項目と、約2倍の差があります。 😮
- 歳出では「Social Protection」(社会的保護)や「Health」(保険・衛生)等、公共・福祉に関する歳出が多い ことが伺えます。特に、高齢者や、病弱者、障害者等にお金が使われています。
- 「Health」(保険・衛生)に於いては、「Technical & Managerial Staff」(技術並びに管理部門スタッフ)や「Doctors & Nurses」(医師並びに看護師)等、人件費の占める割合が高い ことが伺えます。🤔
- 「Education」(教育)では、「Secondary」(セカンダリー・スクール。日本の中学校に相当)が、他の年次と較べ、歳出が厚めに充てられており、重要視している ことが伺えます。🤓
今後の課題
- 今回は、2015年の単年度のみを見ましたが、 10年間等まとまった期間の歳入・歳出を分析することで、時系列での推移も見えてくる と思います。
- 又、他国と比較することで、国毎の違いや特徴も浮かび上がってくる と思われます。🤔
学び
今回の分析を通じ、得られた学びは、以下の通りです。
- Tableau で分析するにあたり、元データから、勘定科目の大分類、中分類を作りました。 どの費目がどの勘定分類に紐づいているかを把握するのに時間が掛かりました。 😓 勘定分類の合計が合わなかった場合は、 「その他」等の費目を作り、帳尻を合わせました。
- データの信頼性が重要 だと感じました。仕事の場合、分析前に出自を調べるという一手間を加えることで、後々の手戻りを減らせるのではないか? と感じました。🤔
- テクニックとしては、ツリーマップ、計算フィールドを使った色の指定、ダッシュボードのフィルターアクションを使いました。又、ダッシュボードにレイアウトする際、歳入と歳出が対比できるようにレイアウトし、青と赤〜金を使い、表現を変えました。
- 分析スキルを上げるためには、小さいデータから始め、アウトプットを作り、公開するという一連のPDCAサイクルを数多く、回した方が効果的 だと感じました。PDCAサイクルを数多く回すことで、思考回数が増え、結果、得られる示唆や気付きを増やすことができ、指数的にスキルを伸ばせるため です。🤓
- 最初から大作を作ろうとすると、腰が重くなりがちなため、今、できることを素早く実行し、結果を得ながら、サイクルを徐々に大きく・速くする アプローチの方が、今は良さそうです。もう暫く、Tableau を使い、クイックにPDCAサイクルを回す訓練を続けようと思います。
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