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【書評】『会社で使えるChatGPT』がビジネス導入のハウツーを詰め込んだ実践ガイドと言える1冊である理由

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はじめに

2024年4月に私がリックテレコム様より出版した著書『ChatGPT 大規模言語モデルの進化と応用』の際、大変お世話になったマスクド・アナライズ様とのご縁から、今回ご著書をご恵贈いただきました。簡単ではございますが、レビュー記事を執筆させていただきます。

https://x.com/shisyu_gaku/status/1853648895378870297

※表紙をご覧になって「SNSで見かけた!ちょうど買おうと思ってた!」という方はこちらのAmazonリンクよりすぐにご購入可能です👇
https://www.amazon.co.jp/【Amazon-co-jp-限定】会社で使えるChatGPT-個人の業務改善も組織への導入-(特典:社内稟議が通る!-ChatGPTチェックリストPDF-データ配信)/dp/4492047794

結論、急に社内でAIツール(特にChatGPT)導入が決まったが、具体的にどう動けばいいのかわからない方は手に取ってみるのおすすめです!!💡

👇他にもこんな方にも・・・

  • 企業でChatGPTの活用を推進する担当になった方: 案件の進め方・資料化のコツ・社内政治の乗り越え方など網羅的に学べます。
  • 上司・管理職・経営者: 「AIやChatGPTに興味はあるが、まず導入・使い方を理解したい」「費用対効果はどう測るのか知りたい」といった疑問に答える一冊になりそうです。
  • 業務を効率化したい現場担当者:「自分の仕事にどう役立てるか」について、【“型”ד系統”】のアプローチでヒントが見つかります。
  • 社内研修や勉強会の教材を探している人: プロンプトの基本から導入事例、ガイドライン、効果測定まで網羅的に解説されているため、一冊あると社内メンバー全体のAIリテラシーを底上げしやすいと思います。

まずは、前提として本書籍の立ち位置についてご紹介します。2024.12.29時点でChatGPTに関する日本の書籍は1000件以上存在します(書店に並び続けられるのはごく一部・・)[1]。多く出版されているChatGPTに関する書籍はざっくり分類すると以下のようになります。その中でも今回の書籍は、2. ビジネス活用書を中心に1. 基礎解説・入門書の要素が入っている書籍に該当します。もしもこの時点でも求めている内容と異なる場合は対象読者から外れている可能性が高いです。

カテゴリ 対象読者 内容の特徴
1. 基礎解説・入門書 初心者、一般ユーザー ChatGPTの基本的な使い方、プロンプト例、日常や仕事での簡単な活用法
2. ビジネス活用書 ビジネスパーソン、経営者、チームリーダー 業務効率化、タスク管理、マーケティング活用、組織導入の手順や課題
3. 教育・学習支援書 教師、学生、教育関係者 授業や教材作成、学習支援の具体例、教育現場でのAI活用の倫理や課題
4. テクニカル解説書 エンジニア、AI研究者 ChatGPTやLLMの仕組み、API活用方法、開発環境や統合の実践
5. 社会的・倫理的考察書 社会学者、倫理学者、一般読者 AIの社会的影響、倫理的課題、ChatGPTと人間の共存に関する考察
6. 特定分野応用書 専門家、実務者 法律、医療、金融、デザインなど特定分野での活用事例、業界特有の課題解決
7. 創作・クリエイティブ活用書 作家、アーティスト、クリエイター 物語生成、詩やシナリオ作成、デザインやアート制作への応用
8. その他(ハウツー本やエッセイ) 幅広い一般読者 ChatGPTを活用した生活術、趣味、体験談やエッセイ、ChatGPTとの対話をテーマにした創作物

前書きでも記載されていますが、こちらの書籍は以下の点にフォーカスしています。

  • 初心者が仕事でChatGPTを使いこなし、会社に導入して活用するまでの流れを1冊で学べる
  • 仕事と会社で役立つ最新機能から、日本企業における導入活用事例を多数紹介している

書籍の目的として、「企業におけるChatGPT導入活用プロジェクトを成功させること」を挙げています。余談ですが、国内でChatGPTのEnterpriseプランを全社員に初導入した企業はOpenAIを確認の上でWebマーケティング事業などを手掛けるZenkenらしいです[2]

2. 本書の特長と概要

多くのChatGPT本がある中で、こちらの書籍は、ChatGPTの導入をいち早く実現した以下の会社様に取材を行い、今すぐ役立つ知見をご紹介されている点が大きな特徴かと思います。各会社のChatGPT導入関するweb記事(一部Azure OpenAI Serviceも含む)と伏せてお読みいただくとより理解が深まりそうです。

  • [事例1] 三井住友海上火災保険株式会社

https://xtech.nikkei.com/atcl/nft/column/051100005/051700516/

  • [事例2] ライオン株式会社

https://diamond.jp/articles/-/324795

  • [事例3] 住友生命保険相互会社

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08425/

  • [事例4] 株式会社ベネッセホールディングス

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2306/19/news037.html

また、ChatGPTを社内導入・推進するにあたり、事前に知っておきたいツールや組織の話、アプローチ方法の話など、詳細に書かれている社内AI推進におけるバイブルのような1冊です!!!

3. 内容の構成とおすすめポイント

amazonリンクや出版元のページでは以下のように簡潔に章のタイトルのみ構成が記されているため、本レビュー記事の読者がより他の書籍との違いや内容を踏み込み書籍を知っていただくために、もう少し節タイトルにも触れてみます。また、節タイトルと共に各章のおすすめポイントをご紹介いたします。

第1章 ChatGPTを知る

  • 本書の役割
  • なぜChatGPTを学ぶのか
  • ChatGPTとは何か?
  • ChatGPTの仕組み
  • ChatGPTは質問力が9割
  • 検索とChatGPTの違い
  • AIブームの失敗を繰り返さない

🌟第1章内の個人的なおすすめ部分:

  • ChatGPTの細かい機能アップデートの歴史が記されている表あり
    • →シンプルなチャットUIだからこそ何ができるのかを機能ベースで知れること、アップデートの頻度、リリース時期からツールとしての勢いと今後の可能性を感じられる。ここに関しては自己理解はもちろん、ツールを他者に説明する立場になった時に地味に有益な情報
  • 業界ごとの会社のChatGPT導入事例と活用の仕方のまとめ表あり
    • 同業他社の動向を知れる。 まだ導入できていない企業に取っては判断材料の1つにもなりうる可能性がある有益な情報。同じ業界の中でも競合他社と比較して、乗り遅れないためにもこれらの情報は嬉しい。書籍でディープダイブしていない話もweb検索してさらにリサーチを進めるのにも良い情報源。特にChatGPTに関する書籍の情報は陳腐化しやすいのでより詳しく・最新の情報を知るためのあたりになる情報が並んでいるのは心強い。。。
  • ChatGPTを利用するにあたり、質問力がいかに大切か論じている
    • →私も強く伝えたいと感じる点。全然欲しい答えが返ってこない、ChatGPT使えないという人の入力プロンプトを見て、プロンプトコンサルをしたくなる今日この頃、、。同僚に口頭で説明やお願いごとをされても複数の解釈がされるような聞き方は「おおお、どゆことでしょう?」となり、聞き返して理解を深めるようにAIに聞くときも解釈が一意に定まるようにという点は意識してプロンプトを投げたいところ(他にもいろんなプロンプトテクニックはあるが難しいことを抜きにするならば)。
  • ChatGPTの弱点やGoogle検索との使い分けを知れる
    • →やりたいことは世の中に溢れる先人の知見や事実情報から自分が知りたいことに辿り着くための「検索」をしたいということを忘れていけない。いろんなツールが増える中、どのようにツールと向き合うべきなのか、入手した結果を鵜呑みにしないためにもツールの差別化ポイントと限界点は他者にツールを勧める上で忘れてはいけないポイントだと私も思う。
  • AI導入が失敗するケースを知れる
    • →AIを導入する理由やきっかけは、「トップダウンからの何かAIの取り組みをしよう」、「同業界の他社から遅れをとりたくない」、「漠然とAIで解決できるんじゃないか?」から「具体的な課題の解決」、「ユースケースの横展開」など幅広く存在する中、導入を進めていく前に事前に失敗する要因の理解から確率を下げ、一定の基準を持って成功する確率が上がる環境が作れるのか、リソースは足りているのか等、期待値調整はプロジェクトとして事前に確認しておきたいところ。この辺りの一般的な知見を事前に上司などにインプットしておける点では良い情報。

第2章 ChatGPTを使う

  • ChatGPTのはじめ方
  • ChatGPTの基本①:質問と回答
  • ChatGPTの基本②:追加の指示を出す
  • ChatGPTの基本③:誤った回答をしてしまう
  • プロンプトの解説
  • 利用制限と機能比較
  • ファイルの登録・操作
  • GPT-V(画像・音声認識)
  • スマホアプリ
  • 有料版(ChatGPT Plus)の登録と機能
  • ChatGPTを使いやすくする
  • 利用における注意点
  • Chrome拡張機能
  • ChatGPTを業務改善につなげる

🌟第2章内の個人的なおすすめ部分:

  • 悪いプロンプトの例や良い回答を得るための基本的なノウハウなど今すぐ試せることが書かれている点
    • →会話のラリーをせずに一度の質問で回答を求める人もちらほらいる中で、じゃあどう聞き返したらいいの?の答えがこの書籍にはある。また、企業内で利用するとなると、ファイルに対して聞きたいこともあると思うが、各ファイルに対してどのようにChatGPTを用いて聞いたら良いのか、具体例を挙げてくださっている点もありがたい。
  • モデルごと(GPT3.5とGPT-4o)の違いや機能の利用制限、有料版でできることについて書かれている点
    • →ChatGPTを課金して利用しているユーザばかりではない社内の想定ユーザの中、ツールの利活用を推進していく上で、よりツールの可能性と個人の業務のタスクレベルでの解決したい事柄に対してのアプローチ方法についてイメージを持っていただける点も良き。導入側の視点では、何ができるのかに加えて、ユーザの利用率、継続率がどのくらいあるのかを感覚値でも持っておきたい方は多いかと思います。

第3章 ”仕事”で使えるChatGPT

  • 自分の仕事で業務改善
  • 業務改善における「守破離」
  • 3つの「型」
  • 6つの「系統」
  • 調査系
  • 生成系
  • 対話系
  • チェック系
  • 分析系
  • プログラミング系
  • 業務改善に必要な「棚卸し」
  • 「型」と「系統」のまとめ
  • 自分で取り組む業務改善
  • 会社で使えるから意味がある

🌟第3章内の個人的なおすすめ部分:

  • ChatGPTは、なんでも聞いて良いという自由度が高すぎるツールに対して、何をやるのかの「型」と何ができるのかの「系統」に分類して、できるだけ自分の業務の場合にはどういう使い方が使えるのかの利用イメージが湧きやすい説明と細かいガイドが記載されていること
    • →ChatGPTを日常的に活用している人は理解できていても、活用頻度が低かったり、有効活用できていなかったりする方にうまく活用してもらうためにはその人自身の毎日の業務タスクを理解して利用してもらう必要があります。この章に書かれている内容を整理しスライド化して社内で展開されるだけでも、自走していただくという観点でかなり有益な情報かと感じました。

第4章 ”会社”で使えるChatGPT

  • 企業がChatGPTを導入活用する理由
  • なぜ失敗するのか?
  • ChatGPTを活かす環境整備
  • 導入活用プロジェクトの流れ
  • 導入のきっかけ
  • プロジェクトチーム立ち上げ
  • ガイドラインの規定
  • データ基盤の整備
  • 課題設定
  • 社内政治
  • スケジュールと費用
  • 開発と実装
  • 社内への導入と展開
  • 効果測定と成果のアピール
  • 導入後におけるチームの役割
  • 働き方と組織の変化

🌟第4章内の個人的なおすすめ部分:

  • 「なぜ失敗するのか?」のセクションの内容が他のツール導入やプロジェクト始動にも言えることであること
    • →機能として提供されていても、必ずしも自分たちの組織でフルにその機能を活用できるわけでもなければ、導入の壁が人の観点やセキュリティの観点、社内政治の観点など、障壁は多い。今後、ChatGPTのようなDX促進の起爆剤になるようなツールが出たとしてもこの辺りの障壁は必ず出会う。。。
  • 導入まで活用まで、どのような役割の関係者がいて、どのような文書整備や許可が必要でそれらを意思決定する上で何を気をつけないといけないのか、工数がどのくらいかかるのかについて細かく書かれている点
    • →こちらの書籍の中でも一番内容が濃く、他の書籍では語りきれていない部分が濃縮されていてとても良き。正直この章だけだとしても購入する価値がある文書たち。
  • 効果測定の事例があること
    • →経営陣は数字でわかる効果を求めるのに対して、各企業それぞれの活用シナリオでどのような効果があったのか、何を測定したのかを示してくれている点。導入活用事例は次章の4社のみかと思っていたが、ここでは、「茨城県」、「KDDI」、「パナソニック コネクト」、「日立製作所」、「三井化学」、「LIFULL」、「ワークマン」の異なる業界・シナリオの7社を例に挙げ紹介されていた。

導入企業の活用事例

  • 以下の4社は、1社あたり約3ページほどに渡り、具体的な導入と活用についてインタビュー形式でまとめられています。
    • 三井住友海上火災保険株式会社
    • ライオン株式会社
    • 住友生命保険相互会社
    • 株式会社ベネッセホールディングス
  • 👉導入前の心情や組織体制、導入後に新しく出た課題や定着度などリアルに語られており、他の書籍では中々入手できない情報かと、説得力になる文書ばかり(神)。

最終章 人間に残された仕事は”土下座”だけなのか

  • 2025年のChatGPT
  • ChatGPT×データ×人間=価値
  • 人間に残された仕事は”土下座”だけなのか?

付録

もっとChatGPTを使いこなす

  • 高度なプロンプト
  • DALL・E(ダリ)
  • GPTs(専用ChatGPT)の使い方
  • データ分析を使いこなす
  • ChatGPT以外の生成AI
  • 様々なAI系ツールを使いこなす
  • 参考資料/取材・執筆協力

4. 他の方の書評(一部)

私の記事だけでなく、他の方が感じた視点や意見も参考にすると、より多角的な理解につながると思います。ここには記載しませんが、X(旧Twitter)上にもいくつか感想が投稿されています。

https://data.wingarc.com/chatgpt-in-jtc-77057
https://www.youtube.com/watch?v=I5sAG7IEyhY

5. 最後に

『会社で使えるChatGPT』は、「ChatGPTを実務にどう使うか」からさらに踏み込んで、「どう組織として導入・展開していくか」を具体的に示してくれるのが最大の特徴と感じました。すでに技術的な基礎知識を持つ方にとっても、特に第4章以降の導入プロセスと事例は有益かと思います。また、まだChatGPTの使い方をよく知らない初心者にもやさしい構成です。今後も生成AIの動向はめまぐるしく変化していくと考えられますが、それでも**「実際に会社として動く際のプロセスや社内整備」という部分は比較的ブレにくく、長く参考にできる内容**だと思います。

総じて、「急に社内でChatGPT導入・推進担当を任された人」や「自社の業務改革に興味があるビジネスパーソン」 にとって、実践的かつ役立つヒントが満載の1冊に仕上がっていると感じました。

最後に、ご恵贈くださりました著者であるマスクド・アナライズ様、誠にこのような機会をいただきまして、とても感謝しております。引き続きよろしくお願いいたします。

脚注
  1. 国立国会図書館サーチの結果 ↩︎

  2. 日本初、「ChatGPT Enterprise」を全社員に導入 WebマーケのZenken ↩︎

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