Anthropicが発表した経済指標Anthropic Economic Indexについて
はじめに
Anthropicは2025年2月10日、AI技術が労働市場に与える影響を追跡・分析する新しい取り組み「Anthropic Economic Index」を発表しました。この指標は、Claude.aiプラットフォームで行われた数百万件の会話データを匿名化して分析し、現代の経済においてAIがどのように実務に組み込まれているかを明らかにしています。
本記事ではその発表内容を簡単にまとめて紹介します。
主要な調査結果
1. AIの利用状況
- ソフトウェア開発と技術文書作成が最も活発な利用分野
- 全職種の約36%が業務の4分の1以上でAIを活用
- 全職種の約4%が業務の4分の3以上でAIを活用
職種や業務によってAIの活用度は大きく異なることが明らかになりました。最も顕著な例が、ソフトウェア開発と技術文書作成分野です。これらの分野では、コードのデバッグやドキュメント作成など、具体的なタスクでAIが積極的に活用されています。全職種の約36%が業務の4分の1以上でAIを活用しており、さらに約4%の職種では業務の4分の3以上でAIが活用されています。
2. 活用形態の傾向
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増強的利用(Augmentation): 57%
- 人間の能力を補完・強化する形での活用
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自動化(Automation): 43%
- AIが直接タスクを実行する形での活用
AIの活用は大きく2つの形態に分類されることがわかりました。57%を占める「増強的利用(Augmentation)」は、人間の能力を補完・強化する形での活用です。例えば、作業の検証や新しいスキルの習得支援などが含まれます。一方、43%を占める「自動化(Automation)」は、AIが直接タスクを実行する形態です。
3. 給与水準とAI活用の関係
- 中~高給与の職種(プログラマー、データサイエンティストなど)で活用が進む
- 最低賃金層および最高賃金層での活用は比較的低調
- 現在のAI技術の限界や実践的な導入障壁が要因と分析
調査では、給与水準とAI活用には興味深い相関関係が見られました。プログラマーやデータサイエンティストなどの中~高給与の職種で特に活用が進んでいます。一方で、最低賃金層および最高賃金層での活用は比較的低調です。これは現在のAI技術の限界や、実践的な導入障壁が要因として考えられます。
研究手法
データ収集と分析
- Claude.aiの無料版・有料版ユーザーの会話データを分析
- 「Clio」と呼ばれる自動分析ツールを使用
- ユーザーのプライバシーを保護しながら会話内容を分類
- 米国労働省のO*NETデータベース(約20,000の業務タスクを分類)と照合
研究チームは、Claude.aiの無料版・有料版ユーザーの会話データを分析対象としました。分析には「Clio」と呼ばれる自動分析ツールを使用し、ユーザーのプライバシーを保護しながら会話内容を分類しました。さらに、米国労働省のO*NETデータベースに登録されている約20,000の業務タスクと照合することで、より詳細な分析を可能にしました。
研究の限界と留意点
- 趣味・私的利用とビジネス利用の区別が困難
- ユーザーの実際の利用方法(編集の程度など)が不明
- APIやエンタープライズユーザーのデータは含まれていない
- 画像生成を除く創造的な用途のデータが欠落
本研究にはいくつかの制約があることも明らかにされています。例えば、趣味や私的利用とビジネス利用の明確な区別が困難であることや、ユーザーの実際の利用方法(AIの出力をどの程度編集しているかなど)が不明であることが挙げられます。また、APIやエンタープライズユーザーのデータは含まれておらず、画像生成を除く創造的な用途のデータも欠落しているため、全体像を完全に把握するには限界があります。
このレポートは、AIが労働市場に与える影響について、実データに基づく貴重な洞察を提供しています。ただし、政策提言は行わず、代わりに幅広い観点からの議論を促すことを目的としています。研究チームは分析に使用したデータセットを公開し、研究者からのフィードバックを募集しています。
データセットについて
今回調査が行われたデータについてはhaggingfaceにて公開されています。
以下のURLからご確認いただけます
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