Anthropic APIに追加された4つの新機能でAIエージェント開発が大きく進化
はじめに
Anthropicが2025年5月23日に発表した新機能により、開発者がより簡単にAIエージェントを構築できるようになりました。今回追加された4つの機能は以下の通りです。
コード実行ツールは、ClaudeがPythonコードを実際に実行して結果を出力できる機能です。これにより、データ分析や可視化を自動的に行えるようになります。
MCPコネクターは、外部のサービスやツール(AsanaやZapierなど)とClaudeを簡単に連携させる機能です。複雑な統合作業なしに、様々なシステムと接続できます。
Files APIは、ファイルを一度アップロードすれば、その後の会話で何度でも参照できる機能です。大きなデータセットや文書を効率的に管理できます。
拡張プロンプトキャッシュは、長い指示や背景情報を1時間まで記憶し続ける機能です。これにより、複雑な作業を継続的に実行できるようになります。
これらの機能は、Claude Opus 4とSonnet 4と組み合わせることで、開発者が独自のインフラを構築することなく、高度なデータ分析、外部システム連携、効率的なファイル管理、そして長時間のコンテキスト維持を実現できます。
AIエージェント開発の開発がより簡単に
これらの新機能を組み合わせることで、プロジェクト管理AIエージェントのような実用的なアプリケーションが可能になります。例えば、MCPコネクターを使ってAsanaと連携してタスクを参照し作業を割り当て、Files APIを通じて関連レポートをアップロードし、コード実行ツールで進捗とリスクを分析し、拡張プロンプトキャッシュによって全体のコンテキストを維持する、といった複合的な作業を一つのエージェントで実現できます。
これらの機能は、既存のウェブ検索や引用機能と合わせて、AIエージェント構築のための包括的なツールキットを形成しています。
コード実行ツール
新しく導入されたコード実行ツールは、Claudeがサンドボックス環境でPythonコードを実行し、計算結果やデータ可視化を生成できるようにします。これまでClaudeはコードを書くだけの助手でしたが、今回の機能によってデータアナリストとして動作し、可視化を反復的に改善し、データセットをクリーニングし、API呼び出し内で直接洞察を導出できるようになりました。
このツールにより、Claudeはデータセットを読み込み、探索的なチャートを生成し、パターンを特定し、実行結果に基づいて出力を反復的に改善することが、単一のインタラクション内で可能になります。つまり、コードを提案して別途実行してもらうのではなく、複雑な分析タスクをエンドツーエンドで処理できるということです。
主要な活用場面
コード実行ツールが威力を発揮する場面として、以下のような用途が挙げられます。
金融モデリングでは、財務予測の生成、投資ポートフォリオの分析、複雑な財務指標の計算が可能です。
科学計算においては、シミュレーションの実行、実験データの処理、研究データセットの分析を行えます。
ビジネスインテリジェンスでは、自動レポートの作成、販売データの分析、パフォーマンスダッシュボードの生成ができます。
文書処理に関しては、フォーマット間でのデータ抽出と変換、フォーマット済みレポートの生成、文書ワークフローの自動化が実現します。
統計分析では、回帰分析、仮説検定、データセットに対する予測モデリングを実行できます。
料金体系
organazationには1日あたり50時間の無料利用時間が提供され、それを超える場合はコンテナあたり1時間0.05ドルの料金が発生します。
MCPコネクター
MCPコネクターは、開発者がクライアントコードを書くことなく、Claudeを任意のリモートModel Context Protocol(MCP)サーバーに接続できるようにします。
従来、MCPサーバーに接続するには、MCP接続を処理するための独自のクライアントハーネスを構築する必要がありました。今回の機能により、Anthropic APIがすべての接続管理、ツール発見、エラー処理を自動的に処理します。API リクエストにリモートMCPサーバーのURLを追加するだけで、強力なサードパーティツールに即座にアクセスでき、ツール対応エージェント構築の複雑さが大幅に軽減されます。
自動化された処理プロセス
ClaudeがMCPサーバーが設定されたリクエストを受信すると、以下の処理を自動的に実行します。
指定されたMCPサーバーへの接続、利用可能なツールの取得、呼び出すツールと渡す引数の判断、十分な結果が得られるまでのエージェント的なツール呼び出しの実行、認証とエラー処理の管理、そして統合データを含む強化されたレスポンスの返却です。
成長するリモートMCPサーバーのエコシステムにより、一回限りの統合を構築することなく、AIアプリケーションに機能を簡単に追加できます。ZapierやAsanaを含む任意のリモートMCPサーバーと統合できます。
Files API
Files APIは、Claudeを使った開発時の文書の保存とアクセス方法を簡素化します。すべてのリクエストでファイルアップロードを管理する代わりに、文書を一度アップロードして会話全体で繰り返し参照できるようになりました。
この機能は開発ワークフローを合理化し、特にナレッジベース、技術文書、データセットなどの大きな文書セットを扱うアプリケーションで効果を発揮します。
コード実行ツールとの統合
Files APIはコード実行ツールと統合され、Claudeがコード実行中にアップロードされたファイルに直接アクセスして処理し、レスポンスの一部としてチャートやグラフなどのファイルを生成できるようになります。これにより、開発者はFiles APIを通じてデータセットを一度アップロードし、再アップロードすることなく複数のセッションでClaudeに分析させることができます。
拡張プロンプトキャッシュ
開発者は、プロンプトキャッシュの標準的な5分間の生存時間(TTL)と、追加コストで1時間のTTLを選択できるようになりました。これは12倍の改善であり、長時間実行されるエージェントワークフローの費用を削減できます。
拡張キャッシュにより、顧客はClaudeに豊富な背景知識と例を提供しながら、長いプロンプトのコストを最大90%、レイテンシを最大85%削減できます。
これにより、マルチステップワークフローの処理、複雑な文書の分析、他のシステムとの連携など、長期間にわたってコンテキストを維持するエージェントを構築することが実用的になります。以前は費用が禁止的だった長時間実行エージェントアプリケーションが、現在では大規模に効率的に動作できるようになりました。
まとめ
今回発表された4つの新機能は、AIエージェント開発における大きな前進を表しています。コード実行による高度な分析能力、MCPコネクターによる外部システム連携の簡素化、Files APIによる効率的なファイル管理、そして拡張プロンプトキャッシュによる長時間コンテキスト維持により、開発者はより実用的で強力なAIエージェントを構築できるようになりました。
これらの機能を組み合わせることで、従来は複雑な統合作業や高いコストが障壁となっていたユースケースが、現実的な開発プロジェクトとして取り組めるようになります。AIエージェントの可能性が大きく広がった今、開発者コミュニティがこれらの新機能をどのように活用していくかが注目されます。
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