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AIはドキュメント整備の「苦行」を終わらせるか? - Single Source of Truthとしてのコードと自動生成の未来

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はじめに

エンジニアの皆さん、「仕事で面倒なことランキング」があったら、何が上位に来るでしょうか?
おそらく多くの人が「ドキュメントの作成・整備」を挙げるのではないでしょうか。

一度作って終わりならまだしも、仕様変更のたびに更新し、常に最新の状態を保ち続けるのは、まさに「苦行」です。しかし、新メンバーのオンボーディングや将来の自分、チームのために、ドキュメントは不可欠な存在。

「最新じゃない」「内容が間違っている」「書いてあることが理解できない」…
そんなフィードバックに心を痛めながら、放置されがちなドキュメントの山。

この長年の課題に、ついに終わりを告げるかもしれない技術が登場しました。そう、AIです。
本記事では、AIがどのようにドキュメント整備のあり方を変え、私たちを「苦行」から解放してくれるのかについて考察します。

なぜドキュメント整備は「苦行」なのか?

私たちがドキュメント整備に苦しめられる理由は、主にその性質にあります。

  1. 陳腐化との永遠の戦い
    特に新規事業やアジャイルな開発現場では、状況は刻一刻と変化します。昨日正しかった情報が、今日はもう古い。その変化に追従してドキュメントを更新し続けるのは、膨大なコストがかかります。

  2. 「落ち着いたら書く」という幻想
    「リリースが落ち着いたらまとめて書こう」と考えたことはありませんか?しかし、その「落ち着いたタイミング」は、次の開発や改善タスクによって、なかなか訪れません。結果としてドキュメントは後回しにされ、気づいた時には誰も手を付けられない状態になってしまいます。

  3. 労力に見合わないと感じる瞬間
    時間をかけて書いたドキュメントが、誰にも読まれなかったり、すぐに古くなってしまったりすると、モチベーションは大きく低下します。この徒労感が、「ドキュメント整備は無理ゲーだ」という諦めにつながってしまうのです。

発想の転換:コードこそが「Single Source of Truth」

この問題を解決する鍵は、「何が本当の情報源か?」を再定義することにあります。

エンジニアにとって、最も信頼できる情報源は、実際に動いているコードです。コードは、コンパイルされ、テストを通り、ユーザーに価値を届けている「成果物」そのものです。つまり、コードは「動くドキュメント」であり、Single Source of Truth (SSoT: 信頼できる唯一の情報源) と言えます。

ドキュメントがコードと乖離してしまうのが問題なら、コードからドキュメントを生成すれば良いのです。この発想の転換こそが、AI時代における新しいドキュメント運用の出発点となります。

AIを活用した新しいドキュメント運用フロー

では、具体的にAIをどう活用すれば良いのでしょうか。

1. コードをAIに渡して、ドキュメントを自動生成する

もはや、人間がゼロからドキュメントを書く必要はありません。
例えば、開発が一段落したコードをAIに渡し、次のように依頼します。

# プロンプト例
以下のPythonコードを解析し、この関数の仕様をマークダウン形式でまとめてください。
- 関数の目的
- 引数の説明(型、役割)
- 戻り値の説明
- 使用例

AIは瞬時にコードの意図を汲み取り、人間が読むための自然言語のドキュメントを生成してくれます。これをベースに少し手直しするだけで、高品質なドキュメントが完成します。

2. CI/CDパイプラインに組み込み、更新を自動化する

さらにこのプロセスを自動化します。
コードがマージされ、テストが通ったタイミングで、CI/CDパイプラインの一部としてドキュメント生成・更新のジョブを組み込みます。

【自動化フローの例】

  1. 開発者がコードをリポジトリにPushする。
  2. CIが走り、テストが実行される。
  3. テストが成功したら、変更があったコード部分をAIに連携。
  4. AIが該当部分のドキュメントを自動で生成・更新し、ドキュメント管理ツール(Confluence, Notionなど)にPushする。

こうすることで、ドキュメントは常にコードと同期され、最新の状態が自動で保たれるようになります。
(具体的な組み込み方は模索中。。。)

3. 読み手に合わせてフォーマットを変換する

AIの真価は、単なる生成に留まりません。
生成されたドキュメントを、読み手のコンテキストに合わせて変換してくれるのです。

  • 非エンジニア向け: 「この機能の概要を、専門用語を使わずに小説風に説明して」
  • 新人エンジニア向け: 「このクラスの注意点をQ&A形式でまとめて」
  • 音声で聞きたい人向け: 「このドキュメントを音声で読み上げて」
  • 動画で見たい人向け: 「この仕様を解説するショート動画を作って」

このように、元となる「データ(コード)」さえあれば、AIが翻訳者となり、あらゆる形式のアウトプットを生成してくれます(動画や音声はまだ未発達?)。ドキュメントはもはや静的なテキストではなく、読み手のニーズに応じて姿を変える動的なコンテンツになるのです。

まとめ:私たちは「データ」を残すことに集中すれば良い

AIの登場により、ドキュメント整備のパラダイムは大きく変わろうとしています。

  • Before: 人間が頑張ってコードとドキュメントの同期を取る。
  • After: コード(SSoT)を正しく書くことに集中し、ドキュメントはAIに生成・翻訳させる。

私たちエンジニアがやるべきことは、AIが解釈できる、クリーンで質の高い「一次データ」、すなわちコードを残すことです。
そうすれば、面倒な「苦行」であったドキュメント整備はAIに任せ、私たちはより創造的な仕事に時間を使うことができるようになります。

ドキュメント整備が「撲滅」される日は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

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