より良いセルフレジの UI/UX を考える
はじめに
セルフレジ(フルセルフ、セミセルフ)での決済が普及してきました。
決済体験の善し悪しでお店の印象も変わりますので、(利用客の立場で)どんな UI/UX が良いのかを考えてみたいと思います。
みなさんの体験も教えていただけると幸いです。集合知によってより良いセルフレジが広がっていくことを願っています。
業態によって適切なレジ形態は異なる
レジには大きく分けて
- 有人レジ(すべて店員と対面)
- フルセルフレジ(すべて利用客が処理)
- セミセルフレジ(一部を利用客が処理)
がありますが、店の業態ごとにどれが良いか変わってきます。
小売り店はセミセルフ
スーパーなどの小売り店はセミセルフレジが効率的です。
商品スキャンは毎日何時間もやっている店員が行ったほうが素早く行えます。もちろんスキャンが上手な利用客もいますが、平均すれば圧倒的に店員のほうが早いでしょう。
一方で支払い作業時は、店員の待ち時間が多くなります。利用客が財布から現金やカード類(ポイントカード含む)を出したり、レシートをしまったり。
従って、スキャンを店員、支払い作業を利用客が行うセミセルフが効率的になります。利用客が支払い作業をしている間、店員は次の利用客のスキャンを行えるので、レジ待ち時間が減って快適になります。
昨今は決済手段が多様化しており、店員がすべての決済手段に瞬時に反応するのは困難というのもあります。利用客は自分の決済手段を分かっているので、店員にまごつかれるより自分で決済した方が高速です。
実際、筆者の体感でもスーパーはセミセルフが増えてきたかなという気がします。店側の事情としても、有人レジだと店員の待ち時間は人件費の無駄ですし、フルセルフはスキャンに迷う人のためにお手伝い役の店員配置が必要で結局人件費削減にならないというのがあるのかもしれません。
飲食店はフルセルフ
レストランなどの飲食店(後会計方式)はフルセルフレジが効率的です。
注文の料理がテーブルに運ばれる際に伝票も一緒に運ばれてきて、利用客は帰りにその伝票を持ってレジに行きます。
伝票のバーコードを 1 回スキャンするだけなら、店員がやっても利用客がやっても効率は変わりません。むしろ、店員が来るのを待つ必要のないフルセルフの方が早くスキャンできます。
支払い作業は利用客が行うほうが効率的なのは小売り店と同じなので、すべて利用客が行うフルセルフレジが効率的です。
現状は、伝票スキャンだけ店員が行うセミセルフも多いです。店員が他の利用客の配膳などをしていると来るまでに時間がかかることもあり、レジ待ち時間が増えます。
また有人レジも多いのですが、昨今はダブルポイントなどで複数ポイントカードを出す場面もあり、店員の待ち時間が長くなって申し訳ない気持ちになってしまうので、マイペースでできるフルセルフにしてほしいところです。
その他
介護でスポット的に支払う場合などは、利用客がレジ操作するのは困難なので、有人レジが向いていると思います。
他にも、同じ業態でも店の個性によって適切なレジ形態は変わってくるかと思います。
シンプルイズベスト
ここからはセルフレジ自体の UI/UX について考えていきます。
特に初めて行く店のセルフレジは操作方法が分からなくて不安になりますので、「初見でも使える」わかりやすさが求められます。
「分かりやすい」を実現するためには、画面を見やすくする、音声案内でヘルプするなどいろいろ方法がありますが、最も根本的な解決策は「シンプルにする」です。
シンプルの好例がサイゼリヤのフルセルフレジです。
- 伝票スキャン
- 決済手段の選択
- 決済
たった 3 ステップで完了します。
実際に使ってみましたが、スキャンから Suica のタッチまでおよそ 10 秒で完了しました。初めての時も問題なく行えましたし、2 回目以降も苦になりません。素晴らしいセルフレジです。
手順を減らす
シンプルイズベストに至るためには、極力手順(ステップ数)を減らす必要があります。
レジ袋の有無
小売り店はそもそもセミセルフが良いのですが、理由あってフルセルフにしている店舗があったとして、最初に「レジ袋が必要か?」を聞いてくるレジがあります。
このステップはよく考えると不要で、レジ袋が必要な利用客は他の商品と同じようにレジ袋のバーコードをスキャンすれば良いのです。
必要不必要の回答で 1 ステップ増えるだけではなく、途中で「あ、やっぱりレジ袋欲しい」となった場合に対応できない不便なレジになってしまいます。
クレジットの差し込みかタッチか
決済手段としてクレジットカードを選んだ場合、「差し込みかタッチか?」を聞いてくるレジがあります。
このステップも不要で、どちらも受け付ければ良いのです。
とはいえこれは最近は改善傾向です。stera terminal など端末側で同時受付をサポートしているものもあり、先ほどのサイゼリヤのように stera terminal と連動すれば自ずと解決されます。
クーポン入力その 1
飲食店などに限られますが、クーポン入力のステップも削減できます。
好例がガストです。ガストでは座席のタブレットで料理を注文しますが、写真をタッチしても料理番号を入力しても構いません。この時、クーポン番号を入力すると割引価格で注文でき、レジでは値引き操作が不要になります。
利用客としては「注文入力+レジでのクーポン入力」の 2 度手間が「(割引価格後の)注文入力」の 1 度に減るだけではなく、(前の利用客がクーポン入力に要する)レジ待ち時間も短縮されて快適になります。
クーポン入力その 2
店舗がアプリまたはポイント会員システムを運営していれば、クーポン入力のステップも削減できます。
ポイントカードをスキャンした段階で会員向けクーポンをすべて適用するようにすれば、クーポンを何回もスキャンする必要はなくなります。
比較的近いところまでいっているのがイオンのアプリです。ただし、事前にアプリ内での操作が必要で、また、会員アプリの電波問題を抱えています。
ダブルポイント
店舗独自のポイントシステムに加えて、共通ポイント(V ポイントなど)も貯まる店舗があります。
利用客としてはダブルでポイントが貯まって嬉しいのですが、アプリで店舗のバーコードと、登録した V ポイントのバーコードの両方を提示する必要があるシステムもあります。
アプリ内で V ポイントの登録作業もしたのですから、店舗のバーコード 1 回だけ読めば V ポイントも加算するようにして欲しいところです。
案内は分かりやすく
理由あってステップ数を増やさなくてはならない場合、「案内を分かりやすくする」ことが重要です。
スキャンできないスキャンボタン
「ポイントカードの有無」を尋ねる画面に「スキャンする」と「持っていない」の 2 つのボタンがあった場合、ポイントカードを持っている人は「スキャンする」ボタンを押したくなりますが、実はボタンを押すとスキャンできないシステムがありました。
画面をよく読めば分かるのですが、「スキャンする」ボタンは磁気方式のポイントカードをスラッシュ(スワイプ)するためのもので、アプリバーコードをスキャンする場合は「ボタンを押さずに」スキャンする必要があります。また、磁気スラッシュの人はボタンを押す 1 手間が増えます。
ややこしい案内は避けるべきというのもありますが、根本的には、先ほどの「クレジットの差し込みかタッチか」と同様、どちらも受け付ければ良いのです。
独自性は出し過ぎない
セルフレジが普及してきて、利用客にもなんとなく「セルフレジってこんな感じだよね」というイメージができてきている昨今、そのイメージから外れている動きをするセルフレジがあると戸惑ってしまいます。
最初に領収証
どこの店舗か忘れましたが、利用開始直後くらいに領収書の有無を尋ねてくるレジがありました。
「あれ、会計終わった?」と混乱しました。
座席で事前準備が必要な飲食店
とある回転寿司店では、伝票をセルフレジに持って行ってスキャンするとエラーになります。
実は、レジに行く前に、座席のタブレットで「会計する」ボタンを押す必要があります。
例外的な動きで混乱するだけではなく、「手順を減らす」にも反しています。
その他
会員アプリの電波問題
レジそのものではありませんが、ポイントカードなどの会員アプリはレジで使用するので、レジ体験に直結します。
とはいえ(レジ前における)要件はシンプルで、「すみやかに会員コードを表示できれば良い」というだけなのですが、時間のかかるアプリが多いのが現状です。高機能なアプリの場合、会員コード表示だけは優先処理するなどの工夫が必要でしょう。
特に、会員コードの表示時にサーバーとの通信が必要なタイプのアプリは注意が必要です。店舗の電波環境が悪い場合は、店舗にブースターやフリー Wi-Fi を設置するなどの対策が必要になってきます。なかなか会員コードが表示されないとレジ待ち時間が増えてしまいます。
根本的な解決策は、サーバーと通信せずに会員コードを表示することです。店舗側の事情としては複数名でのアプリ共有を防ぐために何らか通信しているのかと思いますが、もともと板カードの時は共有していた利用客もいたでしょうし、それで集客になるならむしろプラスではないでしょうか。度が過ぎるもの(例:北海道と沖縄の店舗で同時に同じ会員コードがスキャンされた)だけサーバー側の処理としてエラーにする仕組みにすれば、会員コードの表示に利用客の電波を使う必要はなくなります。
主な改訂履歴
- 2025/02/10 初版。
- 2025/02/11 会員アプリの電波問題を記載。
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