エンジニア社内勉強会を運営して大成功させたけど、勉強会自体を打ち切った話
エンジニア社内勉強会が始まった経緯
偉い人が過去にあったエンジニア社内勉強会を復活させようぜ!と言い出した。
結論だけ最初に
「勉強会を復活させよう!月例で1Q3回やって試してみようぜ!」 > 3回で打ち切り
自分が運営スタッフになった経緯
上記の理由で偉い人が勉強会の復活を決め、勉強会運営スタッフの募集をしました。
私はエンジニア向け勉強会を主催したり盛り上げてきた経験があり、興味も強かったのでそこに応募しました。
スタッフは3人。私以外の人(3年目の若手)が委員長で、私含め残り二人は彼より年長でした。
勉強会の企画
・有志が登壇者となり、それを他の参加者が聞く形式の勉強会。登壇時間は1人10分程度
・時間の長いLT大会のような感じ
・発表内容は「(任意の新技術)に触ってみた」から「自作キーボードの勧め」「ドローン買ってみた!」あたりまで割とフリーダム
・社内キーボード部隆盛のトリガーになるなどエンジニア文化には貢献
・募集範囲は社内のみ。後述の理由からエンジニアの社員だけにほぼ絞って欲しいと言われた。
・ただし社員以外やエンジニア以外が聴衆に入っても文句は言わないルール
・目標集客人数は30人程度。参加者は多ければ多いほど良いと言われた
・予算が組まれており、食事と飲み物(ビールなど)は会社から提供される
・ただし飲食を利用していいのは社員だけ
一度勉強会が途絶えてしまった点を踏まえてサステナブルな運営体制も要求されました。
スタッフの仕事
・当日の勉強会の運営と設営と撤収
・勉強会の日程決めとキャッチコピーの設定
・勉強会の告知とスケジュールの広報
・当日の飲食物の手配
…三番目が一番大変でした。逆に残りはたいしたことなかったです。1~2人でよかったかもと思う程度には。
工夫した点
事前の他イベントの感触から、ただ社内SNSでLT大会を開いた程度では10人強程度しか集まりはしないと言う感触がありました。
しかし要求されていたのは30人の集客。
そのためポスターや告知にはかなりの労力を使いました。
登壇者のいる社内技術イベントは登壇者が必要不可欠です。
そして登壇者はポスターなどの告知から運営の「本気度」を読み取ります。
適当な運営はレベルの高い登壇者やプレゼンを引き寄せることはできません。
運営の「本気度」が良質な登壇者を引き寄せるのです。
そして良質な登壇者がいてこそ聴衆を集客できます。
良質な登壇者を誘う工夫
なので本気度を示すためにポスターを態々作り、各フロアの出入りする扉に貼り付けました。
移動のたびに目にする扉にクオリティの高い「登壇者募集!」のポスターを貼り付けることで登壇者が集まり
移動のたびに目にする扉にクオリティの高い「豪華な登壇者たちのプレゼン」のポスターを貼り付けることで聴衆を集客できることを狙いました
目論見は成功し、無事30人どころか40人超の参加者を集客できました
良質な登壇者を誘うクオリティの高いポスターとは?
この話だけで1記事余裕でかけてしまうので今回は書くのを見送ります。
きつかった点
当時エンジニアの社員が100人弱いましたが、この中から30人が参加するというのは相当高いハードルでした
「別に社員以外も来ていい」「だが会場の飲食には手をつけてはいけない。自分で持ち込め」
というのは同じ会場にいる人間の一体感としてどうかと思うので、社員以外は積極的には呼び込めませんでした。
※社員以外も呼べれば150人から30人がくればいいのでハードルが下がる
集客力
基本勉強回は回を重ねるごとに集客力が低下するのと、前回比で集客が決まるので、第一回が集客失敗したらもうそれ以降挽回できません。
なので第一回の告知のプレッシャーは厳しかったです。
肥大化する自分の労力支出
エンジニア向け勉強会であり、ポスターを作るためのデザイナーの協力が呼びかけはしたものの得られませんでした。
なので集客に必要不可欠な「クオリティの高いポスター」をスタッフで作る必要があり、画像編集できるスキルとソフトウェアを持つのは自分だけだったので自分が頑張る必要がありました。
※ソフトウェアはもともと自分の私物PCに入っていたので問題ありませんでした。
こいつが業務外の時間を使ってポスター1枚あたり最低半日以上作業する必要があり、月例イベントのため月一で発生する作業な上に納期もタイトでした。
ポスターは登壇者募集と登壇内容の告知で2枚発表する必要がありました。
業務も忙しかったのでこれが非常に苦痛でした。なぜ睡眠時間を削ってこんな作業を?もうこんな仕事やめてしまいたいと何度も思いました。
Googleドキュメントでもポスター自体は作れるのですが質の低いポスターでは集客できません。
なので画像編集スキルは必要不可欠でした
高い集客を達成するために質の高いポスターが必要という縛りがかなりキツかったです。
他のスタッフの仕事。企画と設営と撤収、飲食物の手配自体はポスター作成を含む告知に比べると、負荷が低い作業でした。
他のスタッフは最後まで勉強会の運営を「負荷が低く、コスパのいいイベント」という認識でいたらしいです。
「前回と同じじゃつまらないよね!」
他のスタッフの発言です。
少しずつ改善を加えると言う名目で回を重ねるごとに作業が増えていきました。
正直ポスター作成だけで「限界レベルに辛い」負荷を感じていたのに、回を追うごとに負荷が増え続けたことで最後の回では「耐えがたい苦痛」レベルにまで負荷が増大しており、「たとえ次回開催されても自分は絶対にここで降りる」と決意していました
サステナブルな勉強会運営という理念は完全に忘れ去られたために、負荷が増えていく勉強会の運営業務で自分は消耗させられました
反省点
飲食の予算が吝く、一番廉価な大阪王将か、半額クーポンがたまたま手元にある時だけドミノピザが選ばれていました。
ピザは持ち帰り半額が多いのでタクシーを使っても安く上げることはできます。ただ30人だと7枚くらい用意する必要があり、持ち帰りに2人必要でした
この2人必要、と言うところで1人他チームからヘルプを借りたのが自分の心が折れるきっかけの1つになります(後述)
予算を飲食費の補助に当てて、参加費を500円にして、参加費と補助と合わせてピザを注文する形式の方がよほどよかったかなと思っています。参加者の評価の中で特に食べ物が満足度が低かったです。
予算があればそれが一番ですが、ないからないなりに工夫する必要がありました。
また予算獲得はハードルが高く、勉強開催に予算獲得が必須、と言うふうにするのはどうかと思います
持ち込み+現地販売はありかも
また「飲食費は福利厚生費の予算から捻出、なので社員以外禁止」の縛りも外せるので
「飲食物持ち込みで」「スタッフが事前に買ってきた飲食物を使って売店やるので現地購入可能」
と言う形式はアリかと思ってました。
スタッフが事前に仕入れる飲食物の仕入れ費用と、現地にそもそも財布持ってきてない問題は出ると思いますが。
ツケはツケた相手の翌日のカレンダーに支払予定をブチこむ形式にすると比較的支払ってくれます。2回支払ってくれない場合、上司もinviteした支払予定を毎日ブチ込むツケ払いルールを定めていたのですが、そもそも2回目の支払予定までに皆きっちり払ってくれた(時には利子としてお菓子かコーヒーをくれた)のでそのルールは発動しませんでした。
支払時に財布持ってこない問題は当時ならKyashか仮想通貨払いにしておけばよかったかもですね。(当時はどっちも便利に社内で使われていた)
持ち込み+現地販売なら「プレミアム」感が欲しい
以前に別の会社で勉強会を開催した時は、少し遠くの安いスーパーで箱で仕入れたモルツやエビスを250円/本、クラフトビールを300円/本で販売していました。
最寄りのコンビニより近くて安く、また他では目にしない珍しいビールを取り揃えていたため好評でした。
※ただしその会社は治安が悪く、後半の無人販売所にしたところ料金未払いが多発しておりました
事件発生
エンジニア社内勉強会の発起人である偉い人が唐突に転職。
弊社にジョインしてから転職まで1年未満の早技でした。
偉い人からのフィードバック
・高い集客状態を維持したまま勉強会を運営できたことは満足している
・3人スタッフを貼り付けただけで運営できているから成功として良い
と伝えられました
(ただし人事評価には跳ね返らなかった。)
前述の通り当初にこの勉強会を企画した偉い人は離職していたので、引き継いだのは別の偉い人です。
偉い人へのフィードバック
自分の運営負荷が耐えがたいレベルに大きかったことは伝えました。
今までの高い集客は自分のスキルと業務外の労働に依存していました。
なので業務負荷の分散も不可能です。
代替わりしたスタッフに入れ替えて運営したいなら
案1.
スタッフに「画像編集スキルのあるデザイナー」を加えて1回の開催あたり半日x2の工数をかけてポスターを作成し高い集客(今まで通り30人以上)を維持しながら勉強会を継続する案
※ただし今までは好調な集客に関してはほぼ私のスキルとセンスと経験に依存していたため、過去の集客を依存できるかはギャンブルになる
案2.
負荷の大きい告知を社内SNSに告知するレベルに縮小して、小さい運営コストでサステナブルに勉強会を継続する縮小均衡を狙う案(その場合集客は半分以下まで縮小すると予想)
のいずれかを選ぶことになるだろう、と伝えました。
結果として勉強回は打ち切りとなりました。
納得はできると思います。
前者はコストかかりますし。
後者の案だと質のいい登壇者は集まらないと思うんですよね。
すみっこでひっそりやっている感じになりますし、LT大会系の勉強会は渋谷駅周辺のWeb会社でよくやってますからそっち行ったほうが絶対楽しい。
第三の案
当時は思いつかなかった(というか思考から勉強会を追い出したかった)んですけど今なら第三の案が思いつきます。
今回は高集客を低予算で、という縛りを入れた結果私のスキルに依存せざるを得ませんでした。
1回開催するごとにデザイナー1日動かすコストを考えたら
・飲食予算を+5万円
・ベストスピーカー賞にアマゾンギフト券1万円
を餌に集客すれば個人のスキル依存にはならない気がします。
低予算をスキルで補おうとするから人材が消耗するんです。
この案なら運営スタッフの負荷も低いですし。
ただ8万円程度かけて何かしらのリターンが得られるかは、それはその会社のコンテキスト依存だと思います。何を得たいかは会社によって違いますし。
自分の中の結論。
忙しいスケジュールの中相当無理をしてポスター制作などの時間を捻出しました。
しかし評価の面で全く報いられることはありませんでした。
言い出した偉い人が早々に転職した点も理由として考えられると思います。
ピザ引き取りにヘルプを募集した時に、「業務時間中に業務以外のことをするだけでもよくないのに、さらに他のエンジニアの工数まで使うのはどうか」と苦言を呈されました
このときエンジニア向け勉強会の運営は「業務時間中に遊んでいる」程度の認識しかされない仕事なのかと思いました。
3回目には自分にとってのこのイベントの運営コストが「耐えがたい苦痛」に変わっていたこと。投入したコストに対してリターンがほぼなかったこと。むしろ遊んでいると思われていた対外評価も考えて、私はこの会社にいる限りは社内技術イベントにはもう関わりたくないとさえ思いました。
この記事を読んだ人に伝えたいこと
「成功する社内技術イベント」の定義は人それぞれです。
しかし多くの場合集客が成功していること。ある程度盛り上がった状態で複数回継続されることが条件に含まれると思います。
この条件を満たした社内技術イベントの運営には特殊なスキルが必要であり、このスキルの保有者は希少です。
よほど注意してやらないと、社内技術イベントの主宰はだいたい消耗していき、最後には燃え尽きて社内技術イベントの開催をやめてしまいます。
その希少なスキル保有者を消耗させ続けるような体制はむしろ社内技術イベントの土壌を荒廃させる行為ですらあると思います。
スキル依存にしないサステナブルな勉強会運営は登壇者をどう集めるか、集客力をどうするか?の問題が出ると思います。
そこに予算をつける覚悟はありますか?
「予算は付けたくないけど、好きな人がいい感じに盛り上げてよ!」
それ人事評価などで報われるんですか?そうでないならやりがい搾取ですよ。
「社内技術イベントとかあると面白くない? (俺は忙しいから運営には関わらないけど)そういうのが好きな人やってよ!」
と無邪気に言ってしまう会社の偉い人には特にこの点を伝えたいです。
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