パソコンの保管方法を改善した話
情シスは物品管理もやるんやで
こんにちは、しもしゃんです。
SaaS を中心に情報システムの導入や運用、改善を生業としています。
その傍らで従業員が使うパソコンの調達、貸与、回収、廃棄の一連のライフサイクルの運用も担当してます。
というわけで、今回は技術的なことではなく物理の話です。
何が一体どんな課題があったのさ?
会社では、パソコンの調達にはリースを利用しています。そして概ねこのような感じで2年の期間で1台のライフサイクルを実現しています。
さて、弊社では窓口会社と LCM 契約を結んでいるため、前段 1 〜 3 の調達からキッティング、従業員への送付は窓口会社が担当してくれます。
情シス担当者が端末を触れることはありません。
返却においては LCM の仕様や会社側で初期化の実施等をするために一度オフィスに集めてから返却しています。(上記一覧の6の部分)
しかし、2年返却のサイクルのため平均して従業員数の24分の1の台数を毎月返却しなければなりません。
するとどうなったか……
オフィスが返却用のパソコンで溢れました……。
適当に積まれたパソコンたち
保管ルールを決めていなかったため、棚にパソコンが無秩序に平積みされていきました。
情シスが利用できる保管スペースはそれほど広くないため、平積みせざるを得ない状況を生み出していました。
その結果として、「ここにおいてあるパソコンって結局何?」な状態になり、そのパソコンを置いた人・触った人しか所在が分からなくなりました。
リモート勤務が主ですのでメンバーの出勤日はバラバラです。そのため、保管場所が現地で共有されているわけではありません。
他のメンバーは積まれた山から都度探さないといけない状態でした。
進捗管理が難しい
特定のパソコンがいつ返却なのか、返却確認済みかどうかの進捗・ステータス管理はデータ上で実施していましたが、ここでも難しさがありました。
データでしか存在しないため、担当者は作業するときに常に自身のパソコンを手放せません。
手元にある実機とパソコンから確認できるデータとを都度照らし合わせる作業は、実際に作業すると思う以上の煩雑さを生み出していました。
改善するぞ
上記の課題を毎月回さなくてはいけないことはメンバーに負担をかけることになります。
もっと他のことに集中できるようにしたいためこれらの課題を改善することにしました。
物品周りの改善は製造現場で見られる「カイゼン」のやり方を取り入れます。
(ここで昔、製造業に勤めていた経験が活きる。)
これらの課題を解決するためのポイントを整理すると次のことが必要であることがわかりました。
- 返却タイミングごとにパソコンの保管をまとめること。限られたスペースを最大限活用すること。
- 進捗管理をデータではなく紙で実施すること。進捗管理に確実性を担保すること。
カイゼンの実施
要件が定まったので、行動に移します。
保管方法のカイゼン
簡単な話、棚に区画を設けて区画ごとに同じ返却タイミングのものをまとめることです。
パソコンの初期化作業やリース会社へ送付するときの梱包作業は、保管場所とは異なるエリアで作業します。
そのことを考えると、ある程度まとめて移動できたほうが効率的です。
以上のことから区画の分け方として複数のパソコンを保管できる収納箱を用意することが適切と考えました。
収納箱の要件を考えるとこのようになります。
- 保管物はパソコン本体と周辺機器(電源アダプタ、電源ケーブル)
- MacBook Pro 16 インチモデルが最も大きい機種
- 収納箱には内容物の明細を表示し、一目で収納されている端末が見分けられるようにする
- 持ち運びを考慮する
- 保管重量は安全面を考慮すると最大 15kg まで
- 取手は必要
- 繰り返し使用できる耐久性が必要
- 既存の棚を有効活用する寸法でなければならない
収納箱の仕様
まず、収納箱あたりの収納量です。
最大重量の想定が全て MacBook Pro 16 インチモデルを収納した場合です。
MacBook Pro 16 インチモデルは本体重量が約 2.2kg なので、周辺機器も考慮すると 6 台が許容できる収納量となります。
次に収納箱の材質です。
繰り返しの使用が想定されるため金属または樹脂製が求められます。
最後に収納箱の外寸、内容物の保管レイアウトです。
与えられた収納スペースに限りがあるので、高い収納効率が求められます。
レイアウトを考えた結果、会社で使っている棚ではパソコンは長手方向に縦置きし、周辺機器は手前または奥方向にまとめることが最も効率がいいことがわかりました。
仕切りの高さも、パソコンが倒れないかつ取り出しやすさを損ねない程度の高さで設定しました。
これらの仕様では既製品では対応できないため特注の必要があります。
今回の仕様を考慮すると、プラスチックダンボール(プラダン)製の収納箱が有力候補として挙げることができます。(ここも製造業勤めの経験から)
収納箱の発注
特注対応が可能なプラダン会社に連絡して、ざっくり次のような流れで発注をしました。
- ざっくりイメージ図を描いて先方に送る
- 先方が詳細に図面に起こしてくれるので、それを検図して齟齬がないか確認する
- 加えて、オプション品(蓋や取手)の有無を指定する
- 見積もりもらう
- 発注する
イメージ図はスプレッドシート方眼紙で描きました。プライベートで CAD 持ってるけどそれを仕事で使うわけにはいかないので。
収納箱のイメージ図
お値段は発注数量にもよりますが、1 箱あたり 1 〜 2 万円です。(多分……)
進捗管理方法のカイゼン
要件で進捗管理は紙でおこなうとしました。
しかも進捗管理の確実性も担保しなければなりません。
「私たち、入れ替わってるー!?」な端末間違いやステータスの更新忘れを排除できる仕組みでないといけません。
それに保管方法の要件に挙げていた「収納箱には内容物の明細を表示」もまだ解決していません。
実はリース物件の返却に当たって必ず発行する書類があります。
それは送付状です。
この書類を「送付状」兼「進捗管理表」兼「収納箱に表示する内容物一覧表」にすることで、諸々の課題をまとめて解決しました。
そのためにパソコンをリース会社に発送(返却)するときの梱包は、収納箱単位で実施する運用にしています。
実際の運用では6台分の返却物を明細に記載した送付状を予め印刷し、収納箱の側面に表示します。
表示には直接貼り付けではなく、収納箱に貼り付けてある透明なプラスチックのハードケースに差し込みます。
送付状を山折りにして明細が見える面を差し込んだ図
完成
完成した収納箱はこのようにピッタリ棚に収めることができました。この写真に写っているだけでパソコン 42 台の収納能力があります。
全体のイメージ図。この頃はまだ表示用のハードケースがない
この収納箱は積み重ねができるよう、上辺コーナーに段積み用のリブがついています。
棚に収まらない場合は別の場所で積み重ねておくことも可能です。
中身はこんな感じです。13 〜 16 インチのノートパソコンが収納できます。
収納箱の中身
結果・まとめ
これにより様々な改善効果を得られました。
-
複数人で分担して作業が取り組めるようになった。
- 視認性に優れ、パソコンが見つけやすくなった。
- チェックの有無でステータスが分かるようになった。
- 表示が簡潔のため簡単な説明で済むようになり、情シスが対応できないときに他の部署にも手伝ってもらいやすくなった。
- 収納箱の中身と送付状をそのまま梱包することで、発送間違いのリスクをなくした。
特に太字の1つ目について、メンバーが異なる曜日にそれぞれ出勤しても運用が回るようになったため凄まじい効果を発揮しています。
ということで、カイゼンの取り組みでした!
読んでくださった方の参考になれば幸いです。
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