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# NOA搭載車を徹底比較:中国メーカーはなぜ多センサーでも安いのか? テスラとの戦略差を分析
はじめに
2025年、自動運転の中でも注目を集めているのが、ナビ連動で高速道路を自動走行できる「NOA(Navigation on Autopilot)」です。
本記事では、NOAを実現する各社(テスラ、中国のBYDやAITO、IM Motorsなど)の センサー構成・価格・技術戦略 を比較しつつ、「なぜ中国メーカーはこれだけセンサーを積んでも価格を抑えられるのか?」という疑問に迫ります。
1. NOAとは?
NOAは、高速道路の 合流〜走行〜追い越し〜出口までを自動で制御する運転支援機能。
現在のところ完全自動運転(レベル4以上)ではなく、ドライバーの監視が求められますが、実用性は高く、搭載車が急増しています。
2. 各社のセンサー構成を比較
メーカー | センサー構成 | カバー方位 | 特徴 | 推定価格帯 |
---|---|---|---|---|
Tesla(米) | カメラ ×8(前3・側4・後1) | 全周囲(ただし視野重複なし) | 完全カメラ構成。ソフト主体で低コスト追求 | 約600万円〜 |
BYD(中) | LiDAR ×3、カメラ ×13、ミリ波 ×5、超音波 ×12 | 全方位を冗長カバー | 「God’s Eye」戦略で信頼性を強調 | 約450万円〜 |
AITO M7(中) | LiDAR ×1、カメラ ×11、ミリ波 ×3、超音波 ×12 | 前方中心 | Huaweiとの共同開発。市街地対応も重視 | 約400万円〜 |
IM Motors LS6(中) | LiDAR ×1、カメラ ×11、ミリ波 ×3、超音波 ×12 | 全周囲(特に側面強化) | NVIDIA DRIVE搭載で演算力◎ | 約500万円〜 |
3. センサーの方位ごとの役割比較
方位 | テスラ | 中国勢(BYD, AITO, IM) |
---|---|---|
前方 | カメラ3基(広・中・狭) | LiDAR+カメラ+ミリ波 |
側方 | カメラ4基 | カメラ+ミリ波 |
後方 | カメラ1基 | カメラ+超音波(+一部ミリ波) |
✅ テスラ:1種で全方位をカバーするミニマル設計
✅ 中国勢:センサーを組み合わせて冗長性を持たせ、安全性と精度を両立
4. テスラ:ソフトで戦う、アメリカ式ミニマリズム
テスラは2023年からミリ波・超音波センサーを廃止し、完全にカメラベースの認識(Tesla Vision)へ移行しました。
✅ 特徴
- ソフトウェア主導(ニューラルネットと動画処理)
- センサーを減らしコスト・生産効率を向上
- 雨や霧などの 悪条件での信頼性には課題あり
5. 中国勢:センサーで信頼性を積み上げる「ハード重視設計」
中国メーカーはLiDARやミリ波センサーを惜しみなく搭載し、ハードウェア冗長性で信頼性を確保しています。
たとえばBYDの「God’s Eye」では3基のLiDARが搭載され、視界の死角を極限まで減らします。
6. 【注目】中国はなぜ多センサーでもコスト競争力が高いのか?
ここが 日本や欧米との決定的な違い です。主な理由は次の通り:
✅ ① センサーの垂直統合と国産化
- 多くのLiDARメーカー(RoboSense、Hesaiなど)が中国国内にあり、コストと供給が安定
- 自動車OEMとTier1(部品メーカー)が連携して、短期間で安価な量産が可能
✅ ② 国家主導の技術育成支援
- 中国政府が「スマートEV」と「自動運転」を重点産業に指定し、補助金や研究開発費を支援
- これにより、コストの一部が社会的に吸収されている
✅ ③ OTAやデジタルプラットフォームで収益回収
- ハードの利益は抑え、ソフトウェア(定期課金型のNOA機能など)で利益を回収
- HuaweiなどIT企業の参入により、車のビジネスモデルが「端末+サブスク」に近づいている
7. まとめ:どちらの戦略が正解か?
比較項目 | テスラ | 中国勢(BYDなど) |
---|---|---|
コスト | ◎ | ○(センサー多いが安価) |
ソフト依存 | ◎(FSDで高依存) | ○(OTAありつつハード重視) |
悪環境対応 | △(カメラの限界) | ◎(LiDARとミリ波が補完) |
生産効率 | ◎(少部品で大量生産) | ○(多センサーでも国産化) |
ユーザー評価 | 賛否両論 | 高評価が多い(安心感) |
おわりに
自動運転車の進化は、センサーの「数」だけでは測れません。どのセンサーを、どこに、どう組み合わせて、どう判断させるか?
この設計思想の違いこそが、各社の強みや弱点を浮き彫りにしています。
中国メーカーの「多センサー × 安価」という矛盾のない設計戦略は、世界的にも注目すべきモデルと言えるでしょう。
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