人とくるまのテクノロジー展2025名古屋 参加記録
2025年7月17,18日の二日間、こちらにお邪魔してきたのでその記録です。
人テク展、と略したいと思いますが、人テク展に参加するのは今回が初でした。なので今までとの比較とかはできません。
あと、こういう展示会は業務の一環として行く人が多いのかもしれませんが、私は今回ただの趣味で行ってます。ちょうど転職の合間の有休消化期間中だったので。
ちなみに今まではモータの会社で勤めていて、8月からは車の会社に行きます。なのでモータ系の話題が多めになります。
適当に章を分けながら書いていきます。
1.勉強会編
1.1 JSAE中部支部研究発表会
17日にJSAE中部支部研究発表会というのを聴講しました。
色々テーマが分かれてますが、聴講したのは「安全/社会実装」というテーマの3件。
安全論証の観点からの自動運転に対する社会受容性調査…デンソー
色々なシチュエーションにおいて、自動運転車で事故があったときに、許せるか許せないかのアンケートを、日本とヨーロッパと欧州の三つのエリアで実施してみて、そこから得られた知見の共有、という内容。全体の傾向として、日本人は事故を許容しにくい、アメリカ人はそれ以上に許容しにくい、欧州は割と寛容、みたいな結果。それに対して会場から「アメリカはもっと自動運転に寛容なイメージだった」という感想が上がってましたが、それへの回答として「このアンケートはデンソーグループ内でとったアンケートなので偏りがある(そもそもアメリカと欧州はサンプル数が少ない)またアメリカは地域によっても違うと思われ、今回は中部エリアからの回答が多かったのでこの結果になったかもしれない」みたいな話でした。
AIを利用したドラレコ映像からのシミュレーションシナリオ生成…トヨタテクニカルディベロップメント
これはタイトルの通り、ドラレコ映像から自動運転のシミュレーションシナリオが生成できたら、日本勢がWaymoとかから走行距離で大きく離されている状況の挽回ができるのでは、というアプローチでした。
あまりわかってないですが、自動運転のシミュレーションのためには、経路情報のベクトルみたいな?そういうデータ形式が必要みたいで、OpenSCENARIOとしてASAMで標準化されているそうです。ドラレコ映像からその形式に変換は可能だが、そうすると色々ノイズでシミュレーションの車両の挙動が変になるので、ノイズを消す方法などを今回検討したという話でした。同じく標準化された道路ネットワークの情報としてOpenDRIVEというのもあるらしいです。勉強になりました。
交換式バッテリ搭載EV二輪車の開発…スズキ
2023年にe-BURGMANという車両で実施された実証実験の話。
東京で8台、大阪で8台、計16台を走らせて、走行データやユーザの感想などを収集したとのこと。登坂路でのトルク不足を感じたという声が多く、出力アップが必要という結果が出ています。あと、ノーマルとエコという二つの動作モードを設定していたが、エコモードがやはりトルク不足で使えないということと、電費向上を狙ったモードだけど、反対にエコのほうが電費が悪くなった例もあったとのこと。その原因としては、エコだとガンガンにスロットルを開けてしまうので、結果としてモータ効率の悪い動作点ばかり使ってしまい、電費悪化に繋がるとのこと。スロットル開度とトルクの関係性、味付けに改善の余地ありという話でした。あとはユーザに瞬間電費をディスプレイで表示したらエコ意識がつくのでは、という話も。ちゃんと結果に対して考察や今後の改善案などが示されており、勉強になりました。1.2 フォーラムNAGOYA
18日にも勉強会に参加しました。これも色々テーマ分かれており、「EVモデルとカーボンニュートラルおよび量産設計での熱と電子回路へのCAE(MBD)活用と実証」というテーマを聴講しました。
その中でも色々講演ありましたが、全部書いてるとあれなので詳しくは以下を参照ください。
大きく前半が「デジタル認証」という話題について、後半が「モデルベースによる回路解析」みたいな話題でした。
デジタル認証について、最初セキュリティの話かと思いましたがそうではなく、認証というのは車両の型式認定の話で、昨今の認証試験不正の件などを背景に、その試験をデジタルでやってしまおうという話でした。デジタルというのは要はモデルベースで、シミュレーションでデータを出すという考え方です。それこそデータの改ざんし放題なんちゃう?と思いますが、シミュレーションモデルに対して暗号化ハッシュ関数を適用することでハッシュ値に変換し、改ざんを検出可能とすることで信頼性を担保する、という試みがされているそうです。衝突安全とかでEuroNCAPが先行しているとか。
あと今後の話としてCO2排出の話が絡んできて、背景に2030年に日本にオフサイクルクレジットという制度が導入されることがあるとか。オフサイクルというのは、実車での燃費試験の結果には反映されないような燃費低減のための技術みたいなことで、代表的なものがガラスとか車体の塗装とか、あとエアコンとかが対象になるようです。その技術に対応してるかしてないかで、車両メーカーが税金を払う必要が出てくる、みたいなことかと思います。以下の資料などにもう少し詳しいことが書いてあります。
で、このオフサイクルに対するデータの出し方としても、モデルベースが有効になるだろうということを言われていました。
実際に実車で取った電費のデータと、シミュレーションの電費データがよく一致することが示されていました。その車両モデルはJAMBEのサイトで公開されているようです。
色々と知らない話が聞けて勉強になりました。
後半の「モデルベースによる回路解析」の話は、どちらかというとオーソドックスなシミュレーションの話で、でも取り扱うのがMOSFETのゲートドライブ回路のシミュレーションということで回路寄りの話でした。あとコンセプトとして、ツールに依存しないオープンな環境ということで、SIEMENSのPartQuest Exploreというツールが紹介されていました。VHDL/AMSという標準化された作法に基づいているとか、インストール不要でブラウザ上で動かせるとか、クラウドで共有できるのでTier1/Tier2とか横断で使えるとか、無償で始められるとか、メリットが語られていました。
もう一つの取り組みとして、ソレノイドバルブを駆動する回路基板を実際に製作して、シミュレーションと実機の挙動を比較したところ、実機ではシミュレーションで見られない挙動が出ており、今後その原因を調査する、という話がありました。
2.展示編
2.1 車両展示
いろいろ車両は展示されていましたが、その中で自分が写真を撮ったものだけ紹介します。
トヨタ車体
コムスという小型BEVの展示がありましたが、特に今回は外装にTABWD(タブウッド)という木材の再利用素材みたいなのを使ってて、カーボンニュートラルの取り組みがアピールされていました。
あとはこんなバギーみたいなやつ。
これは燃料電池車のようです。
全体的にトヨタ系の会社は、サステナビリティを意識した展示が多かったような印象です。
いすゞ自動車
こちらはいすゞ自動車のギガLNG車というもの。LNGだから液化天然ガスですね。
タンクがごつくてかっこよかったです。
日野自動車
これはFCVだから燃料電池車ですね。
こちらはBEVの小型バス。
ティアフォー
こちらは実車というよりモックアップぽかったですが、自動運転タクシーのプロトタイプ車両
こちらは8つのカメラの信号を1本のイーサネットケーブルにまとめて伝送する基板のデモ。
日産
これは実際に道路を走っている車両の展示かな
日産はいろいろコンポーネントの展示もしていて力が入っている感じがしました。
スズキ
クルマではなくバイクの展示をしていました。
その他
こちらは中国のHONPE PROTOTYPINGというデザイン会社?の展示で、車両の詳細は不明ですが、とりあえず車両の展示です。
こちらは車両ではないですが、しげる工業の運転席回りの展示です。
2.2 部品関係
ここからは部品とかでマニアックというか個人の趣味の色が強くなります。
株式会社TOP
小型のE-Axleなどが展示されていました。
Fβコイルという巻き方が特徴で、占積率を高められるようです。
A2MAC1
分解調査とかの会社かな。NIOの車両から取り出したモータとかが展示してありました。
日本ケミコン
これ個人的に結構おもしろかったんですけど、MLCCを長ーくして並列に繋いで容量を稼いだモジュールがありました。
まだコンセプト段階、みたいな話で、実用化はされてないようです。なんかすぐに割れそうに見えるので車載で使うのは難しそうに思いました。でも見た目は好きです。ブレードバッテリーみたいですね。
YAGEO
YAGEOはチップ抵抗器で世界シェア1位だったんですね、知りませんでした。
その中で個人的に気に入ったのは下の写真のセラミックキャップ付き絶縁トランス。放熱用にセラミックキャップをつけているようです。見たことなかったのでなるほどと思いました。
調べると、インダクタ系はトーキンて会社の製品で、YAGEOの傘下に入ったことでここに並べられていた、という感じみたいです。
ユニパルス
トルクセンサの会社として知ってはいましたが、どちらかというとムーンリフタという以下の製品を推している感じでした。
トルクセンサのデモとしては以下のようなものがありました。
株式会社オキナヤ
こちらは前いた会社でお付き合いがあったところで、色んなメーカのモータやインバータの輸入販売や技術サポートをしている会社です。モータ、インバータ、バッテリなど展示してました。
アイシン
言わずと知れたところですが、強そうなものを展示していました。
メタルアート
鍛造が得意な会社ということですが、モータ関連の展示がありました。
0.1mmって薄いですよねぇ。
DATWYLER
コネクタの防水パッキン?とかが展示されてました。
株式会社ハシバモールド
石膏鋳造が得意な会社。小規模の量産や試作が得意とのこと。
ここに目が留まった理由は、マグネシウムの加工品が展示してあったから。
マグネシウムって燃える可能性があるって話を聞いたことがあって。だから聞いてみたんですけど、「いや、案外大丈夫ですよ。普通に削ってます」だとか。でも細かい切り屑が出ると確かに危ない、ということも言われてました。あと夜間に無人で切削の機械にかけて帰ることもない、とのこと。
株式会社ファインシンター
こちらは粉末冶金という工法が得意なメーカー。粉末冶金て何?てなったので話を聞いてみました。
金属の粉末に圧力をかけて固めて焼結する、ということで、強度が必要そうな部品も作れるようです。あとは磁性体を使ってモータコアの圧粉磁心にするとか。
こちらの会社の方曰く、モータコアの作り方は電磁鋼板の積層から圧粉磁心にトレンドは移っている、とのこと。
あと調べてみるとこの会社の筆頭株主はトヨタ自動車でした。
デンソー
こちらも言わずと知れたところですが、ここで私が気になってたのはこちら。
調べると工法に新規性があるようです。
村田製作所
こちらのブースは人が多かった…。その中で私が興味を持ったのは以下と、
あとこちら。
パワー半導体の最近傍に配置して、一緒にパッケージングできるサーミスタ、ということです。
マイクロチップ
こちらはバッテリマネジメントとか、AC/DCコンバータとか、いろいろなデモが展示されていました。
神戸製鋼
こちらもいろいろ展示ある中で私が気になったのがこちらの磁性材料。
電流流して電磁石にした時の特性が確認できるデモになっていて、右側の半硬質磁性材料は、一瞬電流流すだけで強力な磁石になって、消磁しないと外れない、という感じでおもしろかったです。
2.3 測定・評価関係
リゴルジャパン
最近ご家庭のオシロスコープといえばリゴル、みたいな感じになってきてますが、今回初めて実機が見れました。以下のポストで触っている機種が、サイズ感がちょうどいい感じで。電源もUSB type-Cで供給できるらしく、使い勝手よさそうです。欲しくなりました。
小野測器
色々専門的な測定器が並んでいました。車両のダイナモベンチも取り扱っていたり。今後もお世話になりそうです。
デュージャパン
ロガーの会社ということで、母体はオーストリアの会社とのこと。知らない会社でしたが、車載だと有名なんですかね。
他にも訪問したブースはあるんですが、一旦こんなところにしておきます。また気が向いたら追記します。
感想
初めての参加でしたが、だいぶ楽しめました。
メイカーフェアみたいな個人の趣味開発の展示は何度か参加してましたが、やはりプロの展示は見ごたえがあります。ビジネスに繋げるためということで目的も結構違ってますが。
今回私は所属先のない一般人として参加したので気楽でしたが、所属を背負っての参加になると、ビジネストークも必要になるので面倒な面もあるかもしれない(というかそれしかないかもしれない)
まあでも今後もたまには参加できればいいかなと思いました。
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