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プロジェクトマネージャー試験の午後問題をアジャイルで書くTips

2025/01/26に公開

はじめに

令和5年度のプロジェクトマネージャー試験で合格しましたので、その時の論文試験対策について残しておこうかと思います。

特に自分が試験勉強をした際に、アジャイル・スクラムなどで午後Ⅱの論文を記載して合格したという情報があまり載っていなかったので、特にこのアジャイル案件での書き方について書こうかと思います。勉強方法周りや解答の考え方についてはウォーターフォールの方でも参考になるかと思います。

試験に記載した案件概要

私は業務で4年ほどアジャイル/スクラムでの開発を行っており、案件としては自社開発ではなくお客様からの受託開発となります。そのため、お客様がプロジェクトオーナーとして私の会社は準委任契約で開発を行っている構成となります。

私の立ち位置としては、開発者兼プロジェクトオーナーを補佐する立場でプロダクトオーナーアシスタント(POA)として業務を行っています。また、チーム内の自社視点での予算管理・労務管理に加えて、開発メンバーの面談・アサインなどの調達業務なども行っているため、プロジェクトマネージャーの仕事も混ざっている状況となります。

以降は早速自分のプロジェクトに当てはめた際に、論文試験でどう書くか迷った内容と記述した内容を記載します。

アジャイルで記載する際の疑問点、注意事項

プロジェクトのどこを切れ目とするか

後述するプロジェクト概要の記述書にも関係ありますが、プロジェクトのどこからどこを記述すればよいのでしょうか?

ウォーターフォールであれば

  • 「◯◯追加対応」
  • 「◯◯更新案件」

などのような、プロジェクトに対する対応とそれに対する人員、予算などが明確になっており、完了の定義が非常にわかりやすいです。しかし、アジャイルの場合だと継続的にデリバリーされて改善を行われるため、案件によっては細切れのもので記述が難しいものもあるかと思います。

個人的なTipsですが、もし開発の中で大きめの開発を行ったり、年度で切り替わる際に体制や予算の組み方が変わる節目があったのであれば、その期間をターゲットとして決めておいた方が良いです。なぜなら、試験問題の中には予算の決め方や納期などについて交渉をした際の内容や、どうコミュニケーションを取って着地させたかを聞かれる問題が多々あるので、何かしらの変化の切れ目が書きやすいためです。

そのため、私は4年続いているため全期間を初め記述しようとしていたのですが、その場合だと問1のプロジェクト概要を説明しながら、特定期間の内容を説明しようとすると800字で説明しきれませんでした。なので、ある特定期間に増員を行い大きな機能の開発と並行しながら継続改善を行っていた時期があったため、その時の1年弱の内容を前提として過去問を解き、当日もその範囲を切り出して記述しました。

プロジェクトの概要をどう記載するか

午後Ⅱでは試験の解答シートだけでなく、プロジェクトの概要を記載する質問票が配られます。(みよちゃん本のWEB特典にサンプルがあるので、それを利用するとよいです。)

この記述書ですが、ウォーターフォールモデル向けのような記載なので、アジャイルだとどう書くか悩む箇所があったので、自分が書いた内容や考えを記載します。

【プロジェクト規模】

  • 特定期間で区切った総工数と期間、費用を記載

【プロジェクトにおけるあなたの立場】

  • 担当したフェーズ
    • 立ち上げから開発、夜間監視まで行っているため全てに◯を付けました。
  • あなたの役割
    • プロジェクトの全体責任者、チームリーダーに◯を付けて、その他に「弊社側における実施責任者」と記載しました。あえて、実施責任者を記載した理由は後述するIPAが作成しているアジャイル開発外部委託モデル契約をしっかり読んでいることを暗に明示したいからです。

プロジェクトオーナーはプロジェクトマネージャーでは無いのでは

アジャイルの場合、一つのスクラムチーム内に

  • プロジェクトマネージャー
  • プロダクトオーナー
  • スクラムマスター
  • 開発者

という構成のチームはあまり見かけないかなと思います。そして、プロダクトオーナーはプロジェクト成功のための作業として、ステークホルダー調整・予算管理や開発内容の意思決定などを行うと思いますが、チームビルディングやコミュニケーションについては、スクラムマスターロールの方が行う方が多いかと思います。

実態としてはプロダクトオーナーが上司的な立ち位置としてメンター的な内容やチーム管理を求められるケースがあるため記述することは可能な人が多くいると思いますが、本来のロール外の作業を行なっているということを記述すればプロダクトオーナーでも試験上では問題ないと思います。

そのためプロジェクトマネージャではないロールで論文を記載する場合は、

  • プロジェクトで自分がどのような立場で作業や指示を行ったのか
  • それは一般的にはそのロールが行うべき作業ではないが自分が行ったという内容の明記

ができていれば良いと思います。例を挙げるなら下記のような書き方でしょうか。

「本来それは誰がやるべきで、どう構成されるのがあるべき姿だが、今回は自分がこれを行った。何故なら、今回のプロジェクトではこのような状態であったからだ。」

自分は正しいやり方を理解していて立ち振る舞ってるということを全面に出すと良いです。

実際の論文対策

論文試験においては基本的な勉強に加えて、当日書く内容の下書きやプロジェクトの棚卸しが必要となってくるので、それらを記載していきます。勉強項目としては下記4項目かと思います。

  • 書籍による知識学習
  • 過去のサンプル論文を読み込んでの知識ストック
  • 実際に論文を書いてみての実践
  • 当日書く予定の論文事前準備(プロジェクト記述書、問ア)

書籍による学習

勉強内容という意味では基本的に下記2冊の内容をやれば良いです。余った時間は実際に論文を書いたりする時間に当てた方が良いです。

  • 「受かる!プロジェクトマネージャー」掲載の過去問(通称:みよちゃん本)
  • プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第6版

また下記でそれぞれの書籍の使い方と所感を記載します。

「受かる!プロジェクトマネージャー」掲載の過去問(通称:みよちゃん本)

午後Ⅱについて、問われる問題をジャンルごとに記載しておりとても利用がしやすいです。またWEB側に過去問のサンプル解答があるため、ダウンロードして空いた時間に解答を読んで知識ストックを増やしておくとよいです。

自分は◎と◯が付けられている問題は全て読みました。

プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第6版

論文試験での段落構成や論理展開について詳細に記載しているので文章の書き方に自信がない場合はこちらの書籍を合わせて学習した方が良いです。

時間がない場合は前半部分を読み、後半の論文サンプルについてはいくつか確認する程度で良いかと思います。個人的にサンプル論文については、プロジェクトの構成が完全なウォーターフォールであったり、設問に対する対策案がこれで合格できるの?とやや懐疑的なものもあったので、サンプル論文はそこまで読み込まなかったです。

過去のサンプル論文読み込み

合格論文の書き方のサンプル全てに加えて、みよちゃん本の特典論文を読み込みました。

特典論文についてはみよちゃん本に重要度記載にある◎と◯は全て読みました。

基本的な読み込み方法については、

  • 問題文を読む
  • 自分のプロジェクトの場合に、どの期間のどの内容を書くか
  • 問題は何?どう解決するか?最後のクロージングをどう書くか?

を10~15分でシミュレーションしてから解答を読むというのを繰り返しました。

実際に論文を書く

論文の記載については何個も書いている暇はなかったので、

  • パソコンで4回分
  • 紙での記述が2回分

それぞれ学習を行いました。パソコンで記載したものに関しては基本的に制限時間を設けずに「合格論文相当を完成させる」ことに注力して記載しました。

この際に記述した論文のカテゴリーは、みよちゃん本にある前から4つの

  • プロジェクト計画作成
  • ステークホルダー
  • リスク
  • 進捗

で記載を行いました。理由としては出題頻度が高そうなので、時間対効果が良いというただそれだけの理由です。紙での記述はステークホルダーとリスクで適当に選んで書きました。また、それぞれで記載するプロジェクトや期間は基本的に同一で書いた方が良いです。当日想定していない問題が来ても、すでに何度も同じプロジェクトでシミュレーションできているので、当日いきなりでも書ける確率が上がります。

そしてここで注意して欲しいのですが、紙での記述は一度は経験した方が良いです。

パソコンでの記述よりも、実際に書いた記述の方が圧倒的に遅いです。そのためパソコンで時間を測って解いた時の時間感覚と紙で書いた時間感覚で大きく乖離があるため、パソコン記述で時間がギリギリの場合は、当日に論文を完成させられなくなる可能性が非常に高いです。

私の場合はほぼ手が止まらないと仮定して、30分800~1000字が書けるスピードであったため、最低1時間半を書くことに費やせる想定で組んで解いていました。

当日書く事前準備

当日に向けた実践的な対策としては下記二つを事前に用意することができます。

  • プロジェクトの概要記述書
  • 問アのプロジェクト説明

これらは基本的に毎年ほぼ同じになるため、用意しておくことで当日の時間節約に繋がります。問アの説明については、その後の問いにつなげやすくするため、多少記載を変更することがありますが、自分はほぼ予定していた内容を丸々記載しました。

令和5年 問1の所感

当日自分が受けた内容についてどのような内容を記述したのかを記載しようかと思います。当時の記憶を元に記載しているので、少し違う点があるかもしれませんが、大筋はこのような感じです。

実際の過去問はこちらから確認できます。

https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/ps6vr70000010d6y-att/2023r05a_pm_pm2_qs.pdf

考えたこと

  • 問1・問2それぞれを確認
    • 問1:どんな書き方でも書けそうなタイプなのでかなり個人的に書きやすそう。ただし、問いがかなり広めなので、自分は何を書くのか前提を置きながら記述しないと、散らかった文章になるので要注意が必要
    • 問2:終結評価とあるがウォーターフォール向きの文章であるうえに、なかなかに記載が難しそう。アジャイルでも遅延やリリース延期を引き起こしていた際は、その部分を記載できるであろうが、自分たちのプロジェクトではそのような大きな問題を起こしたことがないので、書くにしてもかなり書きづらそう。
  • 問1にすることに決定
  • 論理展開をどうするか?
    • 問ア:時間・コスト・品質以外となるので、問題文にもあるコミュニケーションについて記載を行うことにする。問題文以外の内容を書こうとして無駄なリスクを負う必要がない。
    • 問イ:問アでメンバーを増やすことになった内容を記述しているので、コミュニケーションの取り方を修正するストーリーとした。
      • ペアプロを行なっているためペアプロ時に仕様なども細かく説明しながら行う
      • レトロスペクティブにおいて新規メンバは比較的意見がしづらいため、話しやすい雰囲気作りやファシリテーションが必要
      • 上記を行うために新規メンバアサイン前に事前に既存メンバに対して説明を行なっておく。またスクラムマスターにも上記が上手く回るように注視を依頼
      • またこれらの改善はトップダウンで基本自分から一方的に発信するものではないため、メンバと相談を行いチームの決定として行ったというのを記述し、スクラムを理解していることを明記
    • 問ウ:モニタリング結果の指標は基本的にベロシティーが話しやすいのでベロシティーの上昇について記述。
      • 過去のメンバ増員の実績を元に出した想定しているベロシティーが立ち上げ時は出ていた
      • 必要に応じて行った対応として、立ち上がりは上手くいっているように思われたが、有識者×新規メンバでのペアプロで、有識者に新規メンバが頼りすぎていたこともあり、新規メンバ同士でペアプロを行うと機能が完成しないケースが発生し、ベロシティが安定しないことが発生。
      • 新規メンバ同士でも機能開発ができるように有識者主導で開発を行うのではなく、あくまで補助で開発を行うように、新規メンバ主導での開発方式にする
      • 上記の変更もあり、新規メンバの案件や言語理解が深まりベロシティーが改善し、また想定していたよりも開発スピードが上がる
      • 最終的に想定よりも早いスピードで開発ができたため、狙っていたリリースタイミングにはスコープから外していた機能を追加してリリースすることができ、お客様からも喜ばれた

問アのサンプル

実際の業務内容のため少しボカしを入れています。またこちらの記載では、私は開発者として業務を行っている内容は削っており、専業でプロジェクトオーナーを補佐していることにしています。

論述対象は、A社が提供している「EC事業者向け営業管理システムのZ社追加開発」である。本システムは主に中小企業の自社で専用の営業管理システムを持たない事業社をターゲットとしたサービスで、本システムと連携することで営業管理を改善することのできるサービスである。今回A社では、既に提携している外部の連携サービスに加えて、新たにZ社のサービスに対応することを目標としている。
本プロジェクトは、市場や利用者の要望に迅速に対応していくために、お客様をプロダクトオーナーとしたアジャイルでのスクラム開発を準委任契約で行っている。本開発期間は10月から翌年3月までの6ヶ月の開発としており4月リリースが目標である。またA社からは「来年度の予算は厳しく、本システム開発は増員を行ってでも今年度予算内での完了を必達して欲しい」という要望を頂いており、6名から10名に増員を行い、継続的な改善リリースに加えて本サービスを4月にリリースを行うことが本プロジェクトの絶対目標となる。
私は本プロジェクトにおけるA社のプロダクトオーナーの要件定義や優先度決定などを補助する役割に加え、弊社側における実施責任者としてのチームの労務や指示系統をマネジメントしている。

最後に

プロジェクトマネージャ試験を受けた感想としては「既にプロジェクト管理経験を行っており、日頃の業務でしっかり課題管理や改善提案を行なっていれば合格できる」試験であると感じたので、文章の書き方にも自信がある人はかなり少ない勉強時間で合格できるかも?と思います。

また私のようにアジャイルの案件で試験を受ける方にぜひ一度読んで貰いたいのですが、下記のIPAより出されているアジャイルに関する資料を読んでおいてください。

https://www.ipa.go.jp/digital/model/agile20200331.html

こちらの内容を元に記述を行った上で、ここの定義から外れる場合には「この資料上や一般的にはこうするものではあるが、今回はこうしている。」と記述するだけで、玄人感が出て良いと思います。

長くなってしまいましたが、こちらの記事内容が皆さんの合格に寄与できれば幸いです。

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