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第19回YANSシンポジウムに参加してきました!(2024)

2024/09/13に公開

はじめに

一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科 欅研究室の中島秀太です。
今回は、2024年9月4日(水)〜6日(金)に開催された第19回YANSシンポジウムに参加してきました。

本記事では、出張で学んだことを振り返りつつ、YANSの魅力について発信していきたいと思います。
未来のどこかでYANS参加に悩む人の目に留まり、一つのみちしるべになることができればと願っています。

YANSとは

YANSは、年に1度開催される、自然言語処理及び関連分野の若手研究者向けの発表会・交流会です。言語処理学会の一事業として、近年は8月末〜9月初頭に開催されています。
https://yans.anlp.jp/

YANSの特徴として、以下の3点が挙げられます。

1. 若手の成長の場
YANSのコンセプトは「若手の成長の場」であり、「学生および学位取得後8年以内の参加者」の発表が歓迎されています。発表者のメイン層はB3〜M2の学生で、参加者の6割程度を占めます(主観)。
初発表で不安があるという方でも、周囲に同じ境遇の方が少なからずいるので、共に励まし合える環境です。

2. 未完成の研究発表でもOK
発表について事前の査読は行われず、未完成の研究に関する発表が奨励されています。研究に行き詰まり悩んでしまっている方でも、発表を行うことで外部の方から有益な意見が得られるかもしれません。もちろん発表者としてではなく、聴講者としての参加も出来ます。

3. 旅費補助 (スポンサー支援)
また、費用面の補助も手厚いです。参加の際には出張に係る旅費を研究室から支援いただくのが一般的ですが、研究室から支援がない場合、YANS運営から旅費を補助いただける場合があります(発表者に限る)。
申請についてはシンポジウム開催の3ヶ月前(6月ごろ)から開始されるので、早めにチェックしておきましょう。

以上、主な特徴3点について紹介しました。
他にも様々な特徴が挙げられますが、ぜひご自身で参加して発見してみてください。

【クイズコーナー】

Q. YANSはある文字列の頭文字をとった略称ですが、正式名称は何でしょう。

A. Young Researcher Association for NLP Studiesの略称。
過去のwebサイトを遡ると、第9回シンポジウム(2014)から使用され始めた略称の模様。
http://yans-previous.anlp.jp/modules/menu/main.php?page_id=110&op=change_page

いざ大阪へ!

第19回YANSシンポジウム

第19回YANSシンポジウム(2024)は、大阪・梅田(梅田スカイビル)で開催されました。
https://yans.anlp.jp/entry/yans2024

いまだ残暑が続く中、9/4〜6の3日間開催され、私は9/5〜6の2日間に参加してきました。
初日(9/4)にはハッカソンや留学交流会が行われていましたが、今回は参加を見送りました。

大阪までの道のり

大阪のYANS会場に赴くにあたり、まず私に与えられた使命は…
「2日目のオープニング(10:00)までに会場に到着している」
ことです。

東京在住のため、前泊も検討しましたが、結局、当日早起きして新幹線で現地入りすることとしました。

当日6:30には無事東京駅から新幹線のぞみに乗り込み、新大阪へ。
車内では仮眠をしたり、おにぎりを食べたり、YANSのプログラムに目を通したりしてました。

9:00頃には新大阪駅に到着。
「エスカレーターの右立ちマナー」を見て大阪に来たことを実感しつつも、ウカウカしてはいられません。
急ぎ足でJR神戸線に乗り込み、会場最寄りの大阪駅へと向かいました。

会場には9:30に余裕を持って到着し、無事使命を果たすことが出来ました。

大阪駅前の様子。写真右奥に進むと、会場が見えてきます。

【クイズコーナー】

Q. 大阪駅前では、「グラングリーン大阪」と呼ばれる大規模都市開発が進行しており、会期中の9/6には◯◯◯◯公園の一部施設が公開されました。さて、◯◯◯◯に入るひらがな4文字は何?

A. うめきた
大阪の一等地が緑で埋め尽くされており、開放的な景観となっています。
「みどりとイノベーションの融合拠点」をコンセプトとし、今後も開発が進んでいくようです。

YANS2日目

オープニング

YANSは2日目から参加する方も多く、ここから徐々に盛り上がりを見せていきます。
オープニングでは、シンポジウム概要の説明、スポンサー紹介、会場の紹介等が行われました。

会場の様子

チュートリアル1「ニューラルネットワークの損失地形」

YANSでは計2回チュートリアルが開催されますが、そのうちの一つです。
オープニングの盛り上がりのまま始まるのが、チュートリアル1になります。
チュートリアルではNLPの第一線で活躍する若手研究者の講演を聞くことが出来ます。

チュートリアル1の発表者(=第19回YANSシンポジウムのトップバッター)を飾るのは佐藤竜馬さん(NII)です。
全発表者の中で最初に発表を行う緊張はないのか伺いたくなります…。
https://speakerdeck.com/joisino/landscape

発表スライドは、ご本人曰くシェア&拡散希望とのことでした。
「平坦解」・「先鋭解」という聞きなれないワードから始まり、なぜ「平坦解」が優れているのか分かりやすく発表してくださいました。

より詳細に知りたい方は、『深層ニューラルネットワークの高速化』(佐藤竜馬、技術評論社、2024)を読んでみるとよいかもしれません。

ポスターセッション

今年のポスターセッションは、2日間で計5回、総勢196名の発表が行われました。
学生の中では、こちらをメインの企画と考えている人が多い印象があります。

参加する若手研究者及び技術者にとって、現在進行中の研究の成果を報告・共有する場となっています。
発表者のメイン層はB3〜M2の学生で、東大・東工大・東北大・NAIST所属の方が多い印象です。

発表者にとっては、1時間まるごと自分の研究成果を発表する場として利用できる他、興味を持った聴講者と議論を深めることも出来ます。
ポスターセッション会場の様子

スポンサーセッション

スポンサーと参加者の交流企画として、スポンサーセッションが実施されました。
本大会では、

  • ダイヤモンドスポンサー:1社
  • プラチナスポンサー:3社
  • ゴールドスポンサー:16社
  • シルバースポンサー:4社

の計24社のご支援があったようです。

セッションやブースでは、インターンの募集等も行われており、積極的にコミュニケーションをとってみることをオススメします。

ラウンドテーブル

ラウンドテーブルは少人数のグループで特定の話題について話す企画です。グループについては事務的に決定されるため、滅多に話す機会がない方とも親睦を深めることができます。
本企画に参加するメリットとしては、やはり先輩研究者・技術者と膝を交えることが出来る点でしょう。
私の場合は招待ポスターの発表者の方やYANS委員の方と同じグループになることが出来、修士卒業後のキャリア選択のアドバイス等を頂きました。

ランチ・ディナー

運営によって行われる企画ではありませんが、ランチやディナーも会期中の楽しみの一つです。
同じ大学の人と行くのもよし、会期中に仲間を見つけて行くのもよし。

ランチは、同じ大学の人と、大阪名物「串カツ」を食べにいきました。

ディナーも、同じ大学の人と、「トマトリゾットのオムライス」を食べました。
リゾットオムライス 写真撮り忘れないでよかった

【クイズコーナー】

Q. YANS2日目の夜には、NLPの研究を始めたて/始めたい学生を中心とした懇親会が「NLP◯◯の会」によって開催されます。さて◯◯に入る漢字2文字とは?

A. 新米
NLP界隈の知り合いがおらず寂しい思いをしている方は、「NLP新米の会」への加入を検討してみるとよいかもしれません。

YANS3日目

ハッカソン報告会

3日目の最初は、1日目に行われたハッカソン企画について、報告会/表彰式が行われました。
内容としては「大喜利生成タスク」、「川柳生成タスク」の2部門が行われ、どちらも盛況であったようです。
およそ6人程度のグループで4時間程度で提出モデルや発表資料を作成しなければならないため、効率的な役割分担とタイムマネジメントが重要であることがうかがえます。
ハッカソンには私も昨年参加しましたが、自身の技術力を向上させたい方、YANS2日目以降の知り合いを作りたい方等にオススメの企画です。

チュートリアル2「生成aiの二大潮流と自動運転」

発表者は荒居秀尚さん(Turing)で、Turing株式会社のエンジニアとしてご活躍されている方です。Turing社は生成AIを活用した完全自動運転車両の開発に取り組んでいることもあり、その開発事業におけるLLM関連技術・Diffusion model関連技術についてご紹介いただきました。

https://speakerdeck.com/koukyo1994/sheng-cheng-ainoer-da-chao-liu-tozi-dong-yun-zhuan

もともとTuring社は以前から注目していた企業の一つで、同社CEOとして活躍されている山本一成さんは将棋AI・「Ponanza」の開発者としても著名な方です。Turing社の存在を知ったときには「なぜ将棋AIエンジニアが自動運転車両の開発者に?」と思ったのですが、略歴を調べると当然の道理だなァと納得させられました。山本さんとプロ棋士の藤井聡太さんとの対談動画・記事等も広く公開されているので、興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。

ポスターセッション

3日目のポスターセッションでは私の発表がありました。

ファイナンス分野の「ボラティリティ予測」、自然言語処理分野の「LLM利用・応用」の融合分野の研究として発表させていただきました。

YANSの本流的な発表ではないため、聴講者がほとんど来ないのではないかと危惧していましたが、杞憂に終わりました。喉が渇いて話すのがつらくなるほど多くの発表者に来ていただき、様々な方面から助言を頂きました。改めて聴講者の方々にはお礼申し上げます。ありがとうございました。

ポスターについてもこちらに掲載しておきますので、発表を検討している方は参考にしてみてください。
また私の研究に興味を持っていただいた方がいらっしゃったら、記事下部記載のメールアドレスまでご連絡いただけますと幸いです。

https://github.com/nakajimash/yans2024/blob/main/YANS2024_0901.jpg

発表後のランチ

発表後は少し気持ちも落ち着き、美味しく「お好み焼き」を食べました。
大阪名物を色々と食べることも出来良かったです…!

いか玉(左)、豚玉(中央)、モダン焼き(右)

招待ポスター

招待ポスターセッションでは、「異分野交流」をテーマとし、音声・画像処理等の周辺分野や人文・社会学系の分野の研究者・技術者15名がポスター発表を行いました。
https://yans.anlp.jp/entry/yans2024invitesession

クロージング

3日間に渡り開催されたYANSもようやく終わりを迎えます。

クロージングでは奨励賞およびスポンサー賞の発表が行われ、およそ40名(発表者の2割)が受賞しました。
特にスポンサー賞については副賞が豪華で、「ipad」、「PCモニター」、「ワイヤレスヘッドホン」、「書籍詰め合わせ」、「高級肉詰め合わせ」等々…。

一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科からも2名の学生が受賞しており、嬉しい限りでした。

https://www.sds.hit-u.ac.jp/activities/第19回-yans-シンポジウムで受賞しました/

また最後にはYANS委員の皆さんに割れんばかりの拍手が飛び交い、盛況の中終了しました。

【クイズコーナー】

Q. 奨励賞の授与では、複数の受賞者をひとまとめにし、一斉に賞状を授与する方式が採択されました。これをある機械学習手法になぞらえて、会場では「◯◯◯◯◯授与だ!」と盛り上がっていました。さて「◯◯◯◯◯」には何が入るでしょう。

A. ミニバッチ
例年の1人ずつの授与から複数人一斉の授与に変更され、大幅な時間短縮を実現していました。

おわりに

本シンポジウムでは、私自身の発表において有益な意見を多く頂いた他、他者の発表から得るものも多く、自身の成長に繋げることが出来たと感じています。
YANS委員の方々やスポンサーの方々をはじめとする参加者の皆様に、改めてお礼申し上げます。

本記事についてお問い合わせいただく際には、
dm230004[at]g.hit-u.ac.jp
までご連絡いただけますと幸いです。

また本記事の内容は個人的な見解であり、所属する大学、組織とは全く関係ありません。

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