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IT事情徒然1章 なぜ日本には検索エンジンが残らなかったのか?─チェコ Seznam との比較から考えるIT文化の違い
チェコの「Seznam」との比較で考える、ITインフラと文化の違い
🧠 なぜ Seznam は生き残れたのか?
〜検索エンジン技術と戦略の観点〜
1. 🌍 言語的ニッチ:チェコ語の特殊性
- チェコ語はスラブ語系で、文法的に非常に複雑(語尾変化、格変化、語幹変化など)
- Googleが自然言語処理で対応する以前から、Seznamは独自の言語処理エンジンを持っていた
- 地元言語に最適化された検索補完・形態素解析・辞書データを維持
📌 グローバルなGoogleよりも、地元に強い検索が可能だった
2. 🧱 “検索だけ” ではなく “地元ポータル” として進化
Seznamは、以下のように多くの機能を自社開発または提携によって提供しています:
分野 | Seznamのサービス例 |
---|---|
検索 | Fulltext.cz(独自クローラーを保有) |
地図 | Mapy.cz(詳細な地図とナビ) |
メール | @seznam.cz、@email.cz など |
ニュース | Seznam Zprávy(オリジナル記事) |
ブラウザ | Seznam Browser(Androidアプリ) |
動画共有 | Stream.cz(YouTubeのローカル版的) |
求人・不動産 | Sreality.cz、Firmy.cz など |
🏡 Googleに対抗するのではなく、“Googleが来る前に生活インフラを築いた” のが大きな要因
3. 🛡 検索インデックスとクローラーを今も自前で運用
- Seznamは 自社開発の検索クローラー「Seznambot」 を保有
- 検索アルゴリズムも独立して運営
- 2019年時点で、1日あたり 3億ページ以上 をクロール
🔧 「Fulltext.cz」や独自のAdTech(広告技術)基盤も開発・維持している
4. 📊 政治・文化的な地元志向の強さ
- チェコでは「地元企業を応援する」という文化が根強い
- 教育機関や行政サイトでも Seznam が推奨されることがある
- ユーザーも「地元サービスを使う」ことに親しみがある
🇨🇿 実際、チェコの一部地域では Seznam が検索シェア1位(2020年時点)
5. 💸 検索広告の収益モデルも独立運営
- Google AdSense ではなく、自社の広告ネットワーク(Sklikなど) を運用
- ローカル企業が広告を出しやすい構造
- ニュース・不動産・求人などのコンテンツと結びついた広告配置
✨ Seznamが「生き残る」ではなく「選ばれている」理由
- チェコ語という言語的強み
- インフラ全体をカバーした生活密着型の戦略
- 独立した検索・広告・ブラウザ基盤
- 国民のローカル志向と文化的な応援
📌 逆に、日本ではどうだったのか?
かつて日本にも:
- goo(NTT)
- livedoor
- Infoseek(楽天)
- BIGLOBE
- @nifty
など、多数の検索ポータルが存在しましたが…
→ ほぼすべてが GoogleまたはYahoo にエンジンを委託し、独自性を失っていきました。
その理由は?
- 日本語処理の難しさに 長期的な投資が続かなかった
- 広告収益モデルで Googleに勝てなかった
- ローカル志向が弱く、「便利ならOK」という文化的気質
🔚 結論
Seznamが残ったのは技術力だけでなく、
文化・政治・戦略・ユーザー習慣の総合力によるものです。
特に「小国だからこそ、独自性を持って生き残れた」
という逆説的な強みがあったのかもしれません。
📘 次回予告(シリーズ第2回)
「なぜ日本には国産クラウドが育たなかったのか?」
をテーマに、次回はクラウドインフラの比較とローカル技術の課題を掘り下げます。
Discussion
チェコでは独自の検索プラットフォームが進化しているとは知りませんでした。歴史的に大国からの影響を受け続けてきたスラブ民族として「自分たちの言語や文化を守る」という強い意識も関連しているのですね。Seznamが便利さはもちろん、歴史的な独立心や誇りの延長にあると思うととても興味深いです。
tabibunさん、コメントありがとうございます。私はSeznamの存在さえ知らなかったのですが、なりすましメールを監視する中で、Seznamからのレポートがあり、調べてみたところ、チェコのIT事情が分かった次第です。確かに大国から自衛する意識がこのような自国製を重視することにつながっているかもしれませんね。