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インターンが体感した、AIとの“正しい距離感”

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本記事は、#IVRy_AIブログリレー の9月26日の記事です。昨日は、エンジニアのyunibaさんが『「属人化」「 勘だより」「分析の壁」を乗り越えるAIによるカスタマーサクセス業務改善レポート』という記事を公開しました。ブログリレーの記事一覧は「IVRy AIブログリレー全記事まとめ」をぜひご覧ください。

はじめに

こんにちは、株式会社 IVRy でデータ分析インターンをしているキム(Kim)です。

もともとは AI エンジニアのインターン志望で応募しましたが、面談の中で「経験や関心からするとデータ領域でより力を発揮できそう」となり、アナリティクスエンジニアとしてデータ周りに深く関わっています。配属から約半年、チームの信頼をいただきつつ多様なタスクに取り組むなかで、エンジニアとしても人としても大きく成長できたと感じています。

日々の業務では、Slack や Notion の AI 機能に加え、Databricks の AI Assistant(Genie)や Cursor+Claude Code を活用し、分析や実装を効率的に進めています。これらを組み合わせることで、準備に時間をかけることなくすぐにタスクに取りかかれたり、これまでなら腰が重かった作業にも挑戦できるようになりました。

今回の記事では、インターンとしてAIを実際の業務に取り入れる中でどのような成果や気づきを得られたのか、そして日々の試行錯誤から学んだことを、具体的なエピソードを交えて紹介していきます。AIを単なる効率化の道具として使うのではなく、学びを加速させる相棒としてどう向き合ってきたのか—その経験を率直に共有します。

業務での AI 活用

IVRy ではあらゆるデータを Databricks に集約しており、ノートブック内で AI アシスタントを直接使える環境があります。たとえば「業種が NULL のクライアント数を期間別に集計したい」と自然言語で要件を投げると、関連テーブル候補・結合キー・集計粒度を含む“叩き台の SQL”がすぐ返ってきます。

右上の AI Assistant(Genie)のダイアモンドをクリックして自然言語で要求する例
右上のAI Assistant (Genie) のダイアモンドをクリックしてから、自然言語で要求をすることができます

そこから自分でテーブル名や日付境界、除外条件を合わせ込み、出力列の意図をコメントで明示しつつ仕上げると、実装までの時間は明確に短縮されました。

可視化でも同様で、ヒートマップや折れ線などをプロンプトで反復しながら、「軸ラベルに単位」「凡例を右寄せ」「月末締めで再集計」などの指示を重ね、コードを直接編集せずにレイアウトを詰められます。

また、顧客企業の業種自動ラベリングの半自動化にも取り組みました。外部 DB のカバレッジに限界があるため、会社名・所在地・Web の公開情報からテキストを抽出し、Cursor+Claude Code で作成した小さなプログラムにより、日本標準産業分類などのコードへマッピング。キーワード一致や記述の明確さで信頼度スコアを付け、低スコアはレビュー・バケットへ送ることで、人手なら「数十社/時間」の作業を、数千社規模の下ごしらえまで一気に進められる効率的な仕組みを実装できました。
IVRy株式会社
IVRy株式会社のウェブサイトをスクレーピングした内容をもとに業界分類をできた例


実務で AI を使うときの基本的な注意点

意図しない編集が紛れ込む

「ここだけ直して」と指示しても、別セルの処理順や既定スタイル、型推定の変更が連鎖し、気づかないうちに結果がズレることがあります。長期のプロジェクトなどでClaude Codeのようなツールを使うときは段階ごとに変更点を確認してログを残すのが安全ですが、単発の依頼や“その場で出す”系タスクではチェックが甘くなりがち。見落とすと、集計やグラフの解釈を誤ったまま共有してしまい、最悪は誤報に直結します。

自戒メモ:duration の SUM を取れていないので分析破棄
自分用Notionに残した自戒メモ。「duration の SUM を取れていないので、こっちの分析は破棄」。どこかの段階で SUM() が抜け、気づかないまま可視化まで進めて数時間分を全捨てすることになった、悔しい記憶がある例

以前、実際に自分はある依頼に対して、 SUM() が抜け落ちていたことに気づかず可視化まで進め、数時間分の分析を丸ごと破棄する羽目になりました。これをきっかけに、グラフを描く前には必ず中間データを出して集計や計算列を説明できるか確認し、主要指標の Before/After を小テーブルで横並びにして意図しない変化がないかを見るようにしました。また、プロンプトには「列名やスキーマは変えない」「集計粒度や期間はそのまま」など不変条件を明記し、実行時にはゼロ値や欠損、極端値が混ざっていないか簡単な検算を挟むようにしています。

グラフの信頼性は最後のひと手間で決まる

AI を使うと高度な可視化や複雑な集計が短時間で形になる一方、“基本”の仕上げを置き去りにしがちです。私は外れ値対策として「上位 5% を除外して可視化して」と指示し、期待通りの図は出たのですが、タイトルや注記に“上位 5% 除外”が明記されていなかったため、後で見た人が全体分布と誤解しかねない内容になっていました。

外れ値(上位5%)除外は成功したが、タイトル反映が漏れた例

グラフは正しく生成(緑枠)された一方、タイトルの修正は未反映(赤枠)で、後日の参照時に混乱を招いた例。

それ以来、タイトルには対象・期間・前処理、軸ラベルには単位、凡例には定義や条件を必ず反映し、注記に前処理の意図を一文で添えることを習慣にしました。さらに「このグラフだけ見た第三者は、何をした図だと理解するか?」と声に出して確認し、必要に応じて“結論先出し型”のタイトルに差し替えるようにしています。AIが作った美しい初稿を最後のひと手間で“読み手仕様”に仕上げることが、成果物の信頼性を左右するのだと痛感しました。

直感と“手を動かす”ことを失わない

要約や平均値だけで「分かった気」になるのは危険です。AI を使えば数値サマリーは一瞬で出せますが、それだけでは全体像はつかめません。私自身、生データを数十行ざっと眺めるだけで「欠損が思ったより多い」「外れ値が平均を引っ張っている」といった“手触り”のある直感が得られることがよくあります。

例えば、電話の通話時間の平均を AI で算出したとき、一見すると「想定より短い」と感じたことがありました。実際の生データを確認すると、通話が開始された直後に相手が切ってしまい、通話時間がほぼ 0 秒として記録されているケースがいくつか含まれていました。平均値が低かった背景にはこの“即切り”の存在があったわけですが、こうした事情は生データを直接見なければ分かりません。時には、この確認を省き AI の結果だけに依存してしまうことで、誤情報や誤解につながる危険があります。

AI は探索を速める有効な相棒ですが、データの“手触り”を掴み、数字の変化が現場で何を意味するのかを自分の言葉で説明するのは人の役割です。確認や突き合わせを省かず、直感を鍛えるプロセスを重視することが、最終的な品質と納得感を支えます。

「自分がすごい」の錯覚を警戒し、AI を学びの機会にする

AI が作った成果物をそのまま自分の実力だと思い込むのは危険です。前提や手順を自分の言葉で説明できるか、破綻する条件を挙げられるか、別の集計や可視化でも同じ結論に至るか ── こうした問いに答えられて初めて「理解した」と言えます。逆に、理解を深めずにAIを便利なツールとして使うだけだと、結局は毎回同じ指示を繰り返すことになり、学びが積み上がりません。

私は生成コードに意図や前提の短いコメントを残し、うまくいったプロンプトはスニペット化して再利用しています。これは「なぜこの処理をしているのか」を言語化する練習になり、将来ほかの人の成果物をレビューするときにも役立つからです。インターンという立場でも、いずれはレビューを任される機会が増えていきます。そのときに“何をやっているのか”を掴める直感を育てておくことは、自分の成長だけでなくチームの信頼にもつながると感じています。


おわりに

AI には、意図しない編集や直感の喪失といった落とし穴があります。しかし、それらを理解したうえで人が担うべき基本(検算・説明責任・前提の明示を外さなければ、AI は非常に強力な相棒になります。経験の浅い私でも、AI の助けで「難しそう」と感じていた課題に挑戦し、任される範囲を広げることができました。

何より、こうした挑戦の機会を与えてくれる IVRy の環境に感謝しています。スタートアップならではのスピード感と豊富なデータに触れながら、Databricks(Genie)や Cursor+Claude Code の活用を含め、インターンにも積極的に AI ツールの使用を後押ししてくれる文化があるからこそ、学びが指数関数的に加速しています。

最終的に大切なのは、AI に依存することではなく、AI を通じて人が果たすべき基本を愚直に守りながら自分の力を伸ばしていくこと。これからもAIとともに成長し、より多くの価値を生み出せるよう挑戦していきたいです。

IVRyでは「イベントや最新ニュース、新着ポジションの情報を受け取りたい」「会社について詳しく話を聞いてみたい」といった方に向けて、キャリア登録やカジュアル面談の機会をご用意しています。ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひ以下のページよりご登録・お申し込みください。

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