プロダクトの価値をどう測るのか
はじめに
ソーシャルデータバンク企画チームの塩浦です。
前回は 「せっかくリリースした機能が"喜んでもらえない"3つの理由」 を書きました。
顧客に価値のあるプロダクトにしていく上で気を付けていることを、「機能開発」というスコープで紹介しています。
では、開発を通して実際にプロダクトの価値が高まっていることを、どのように計測したらいいでしょうか?
顧客のことを考えた開発をしたとしても、その結果が見えないと振り返りや改善活動ができません。開発をしているメンバーも効力感を覚えにくいです。
もちろん、サブスクリプション型のビジネスであればMRRやチャーンレート、LTVなどビジネスとしての指標はさまざまに存在しますが、開発チームとしてはもっと製品価値に近い指標が欲しくなるのではないでしょうか。
このことには、私たち開発チームも今まさに手探りで模索している最中の課題です。
という中で先日NTTコム様が主催しているワークショップ[1]をたまたま知って参加してきました。
そのワークショップの学びについてシェアしたいと思います。
(なお、ワークショップについてシェアすることはNTTコム様から許可をいただいています。)
2種類のデータアナリティクス
SaaSやプロダクト開発においても、データ分析の重要性が説かれて久しいですが、いわゆるデータアナリティクスには2種類あります。
- マーケティングアナリティクス
- プロダクトアナリティクス
マーケティングアナリティクス
いわゆる、獲得フェーズのデータ分析です。
Web広告→サービスサイト流入→問い合わせ(リード獲得)→商談化→購入
上記のようなプロダクトを購入してもらう過程のデータを分析することで、ボトルネックを特定したり改善活動に活かしたりできます。
ワークショップでは、世の中においてはデータアナリティクス=マーケティングアナリティクスになりがちだと説明されていました。
確かに体感としてもそうかもしれません。
プロダクトアナリティクス
マーケティングアナリティクスが、顧客を獲得する(=サービスを購入してもらう)過程で用いられるのに対して、プロダクトアナリティクスは、獲得した顧客が常連化していく過程で用いられる分析を指します。
トライアル利用→オンボード→パワーユーザー
このように、初心者としてプロダクトを使い始めた顧客がパワーユーザー・常連になっていく過程でもデータ分析を用いた可視化・改善活動は必要です。
仮に「価値のあるプロダクト=常連の多いプロダクト」と定義するのであれば、常連化を促進するためにデータを有効活用することは有効だということです。
では、いったいどんなデータを取ればプロダクトの価値を測れるのでしょうか?
プロダクト分析指標
ワークショップでは、「プロダクト分析指標」というフレームワークに沿って、「どんな指標を取ればいいのか」を定義していきました!
フレームワークの全体像はこちらです。
KPIの設定例 [2]
用語解説
指標 | 概要 |
---|---|
フォーカス指標 | サービスにおいて最も重要で、チーム全体で追うべきKPI(詳しくは後述)。以降の5項目は、フォーカス指標に影響を与える指標になる |
リーチ | サービスを利用するユーザー数 |
アクティベーション | ユーザーが価値を発見する(初めてサービスの価値に気づく)回数 |
エンゲージメント | ユーザーがサービスの価値を受けた回数 |
リテンション | ユーザーが継続的に価値を受けた回数の指標 |
ビジネス固有 | 自社のビジネスモデル固有の指標(解約率や、LTVなど) |
この記事では、この中でも特に重要な「フォーカス指標」に焦点を当てて説明したいと思います。
フォーカス指標
サービスにおいて最も重要な指標で、チーム全体でおくべきKPIです。
画像の例では「月の購入者数」をフォーカス指標に置いています。
フォーカス指標は、「バリューモーメント」と「頻度」で構成されます。
バリューモーメント
ユーザーがサービスを利用していてもっとも喜ぶ瞬間はいつか、ということです。
ECの例であれば、「購入した商品が家に届く時」がバリューモーメントですね。
提供している機能単位で考えるのが設定しやすいということでした。
確かに機能単位であれば利用数の計測もやりやすいですね。
頻度
こちらは読んで字の如く。
どれくらいの頻度でユーザーが喜べば良いかを考えます。
こちらもECの例では「月に1回」をユーザーを喜ばせたい頻度として採用しています。
個人的には頻度を考えるのが結構難しかったです。
ワークショップではその場で考えましたが、
実際は現状のデータなどをみて考えていくのが良いとのことでした!
やってみて
弊社は「Liny」というLINE公式アカウントの拡張ツールを提供しています。
私がワークショップで考えたフォーカス指標は「毎日エンドユーザー(LINEの友だち)から反応がもらえるアカウント数」と置いてみました。
LINE公式アカウントを運用するユーザーが一番嬉しい瞬間は、「アカウントの友だちから返信が来る」「予約が入る」「アンケートに答えてもらう」など何かしらのリアクションが発生することだと考えたからです。
また、そのデータがある程度は弊社側で測定できそうというところも理由でした。
「ユーザーがもっとも喜ぶ瞬間」を指標にするというのは、非常にシンプルで当たり前ながら、意外とできていなかったことだと気づきました。
他機能なプロダクトであればあるほど、バリューモーメントを1つに絞るのは難しいと思います。
しかし、あえて絞ることが重要だということです。
ビジネスサイドも含めて、納得感のある指標を立ててそれを全体で追っていくことがフォーカス指標の重要なポイントだからでしょう。
もちろん、指標自体についても定期的なブラッシュアップが必要です。
指標と価値の紐付きが弱ければ、指標を変えることも指標を追うことと同じくらい重要なことですね。
社内で実際にやってみた
と、いうわけで、実施に社内でもプチワークショップを開催してみました!
プロダクト分析指標について概説した上で、弊社の開発チームのみんなにもフォーカス指標を考えてもらいました。
かなり短時間でやったので、考えるのが難しい、というのもありつつ、立場ごとにさまざまな意見が出てきました。
- 週に1回、メッセージが配信できる
- いつでも、サクサクと安定して使えること
- 毎月、売上が上がること
などなど・・・
終わりに
「ユーザーがもっとも喜ぶ瞬間はいつか」を考えること自体サービスのことをより深く知れるきっかけになりますね!
というわけで、次は設定・実運用に向けて動いていかないと〜
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「成功のためのプロダクトマネージャーのデータ分析方法を実践〜シリコンバレーで使われる効果的なKPIの設定と分析方法を学ぶ〜」というセミナーです。 ↩︎
Discussion