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液状化判定法の比較

2024/08/29に公開

液状化判定法の比較

こちらのサイトで挙げられているように、液状化判定法には、様々な方法が提案されています。ここでは、代表的な液状化判定法をいくつか取り上げ、それぞれの特徴を比較してみたいと思います。今回比較するのは次の3種類です。

  1. 日本道路協会, 道路橋示方書・同解説Ⅴ 耐震設計編, 2017
  2. 日本建築学会, 建築基礎構造設計指針, 2019
  3. Idriss and Boulanger, SPT-Based Liquefaction Triggering Procedures, 2010

道路橋示方書

(執筆中)

建築基礎構造設計指針

(執筆中)

SPT-Based Liquefaction Triggering Procedures

本編はこちらからダウンロードできます。

地震外力の評価

この手法では、地震外力をCSR(Cylic Stress Ratio, せん断応力比)として評価します。せん断応力は次の式で求められます。

CSR_{M, \ \sigma'_{\mathrm{v}}} = 0.65\frac{\tau_{\mathrm{max}}}{\sigma'_{\mathrm{v}}}

ここで、CSR_{M, \ \sigma'_{\mathrm{v}}}は、あるマグニチュードMの地震において、鉛直有効応力\sigma'_{\mathrm{v}}に対するCSRを表します。\tau_{\mathrm{max}}は、最大せん断応力を表します。0.65という係数は、元文献ではReference Stress Level(参照応力レベル)と呼ばれており、Seed and Idriss (1967)によって提案された値が今なお使用されています。

この参照応力レベルを変更することは計算結果に影響を与える可能性がありますが、同じ値を用いてForwardの計算を行う限りは、最終的な結果には影響しないと文献には書かれています[1]

またここでの最大せん断応力\tau_{\mathrm{max}}は、通常の動的な地盤の応答解析を用いて計算される必要がありますが、十分な加速度記録がない場合や、サイト特性を評価する方法が不足している場合があり、上の式に変わって、下の式を用いることも可能です。

CSR_{M, \ \sigma'_{\mathrm{v}}} = 0.65\frac{\sigma_\mathrm{v}}{\sigma'_{\mathrm{v}}}\frac{a_{\mathrm{max}}}{g}r_\mathrm{d}

ここで、\sigma_\mathrm{v}は、鉛直全応力、a_{max}は、最大地表面加速度、gは重力加速度、r_\mathrm{d}は、地盤の深度方向への応答変化を考慮したせん断応力比の低減係数です。

$ r_d $と係数0.65について

現時点ではこの文献に直接あたることができていません。しかしSeed et al., 2001では、以下のように説明されています。

まずSeed et al., 2001以前の論文では、いわゆる「簡易」法の中で地震外力は、CSR_{peak}として表現されていました。CSR_{peak}は以下のような式で表されます。

CSR_{\mathrm{peak}} = \frac{\sigma_\mathrm{v}}{\sigma'_{\mathrm{v}}}\frac{a_{\mathrm{max}}}{g}r_\mathrm{d}

ちょうど一つ前の式での、0.65がなくなった形です。またここでのr_\mathrm{d}はnonlinear shear mass participation factorと呼ばれています。Cetin and Seed, 2000では2153ケースの動的応答解析を行って、サイト特性と地震動特性の両方を考慮した、r_\mathrm{d}の新しい式を提案しています。その中で、Seed and Idriss, 1971で使用されていたr_\mathrm{d}の値は、分散を控えめに評価しており、10~50フィート(3~15m)の深さで、Cetin and Seed, 2000のケースと比べて高めであったことが示されています。

この深度は、液状化あるいは非液状化が最も議論されやすい深度であったため、Cetin and Seed (2000, 2001)は、r_\mathrm{d}の値を次の4つのパラメータを使って定義し直しています。

  • 深さ:r_\mathrm{d}
  • 地震のマグニチュード:M_\mathrm{w}
  • 地表面加速度:a_{\mathrm{max}}
  • 表層地盤の剛性:V*_{\mathrm{s, 40'}}

この式はなかなか複雑であるため、ここでは割愛しますが、本来はこの式からr_\mathrm{d}を用いて、CSR_{\mathrm{peak}}を求め、このCSR_{\mathrm{peak}}を次の式で、CSR_{M, \ \sigma'_{\mathrm{v}}}に変換します。

CSR_{M, \ \sigma'_{\mathrm{v}}} = CSR_{\mathrm{eq}} = 0.65CSR_{\mathrm{peak}}

この式では、原位置CSRが、等価かつ一様なCSR(単一なsin波のような波形の振幅を意味する)で表現され、これが、CSR_{\mathrm{peak}}の65%で表現されることを表しています。ここで等価かつ一様なCSRに無理やり変換する必要があるのは、ある地盤中の液状化強度を不規則な波形で評価することが難しい点、要素試験で不規則波を載荷することが難しい点が理由として挙げられます。

液状化抵抗の評価

この手法では液状化抵抗をCRR(Cyclic Resistance Ratio, 繰返し抵抗比)として評価します。このCRRはCPTや標準貫入試験(SPT)、PS検層によるせん断波速度などの原位置力学試験から経験的な式を用いて求められます。今回は上の国内2手法との比較を目的としているため、SPTによる式を深堀りしていきます。

まず標準貫入試験のN値の補正から入ります。標準貫入試験のN値N_\mathrm{m}は、ロッド長、打撃エネルギー、サンプラーの種類・有無、ボーリング孔径、現深度の有効土被り圧によって修正される必要があります。これは以下の式で表されます。

\left(N_1\right)_{60} = C_\mathrm{N}C_\mathrm{E}C_\mathrm{R}C_\mathrm{B}C_\mathrm{S}N_\mathrm{m}

それぞれ各係数を説明していきます。

  • C_\mathrm{N}: 有効土被り圧による補正係数です
  • C_\mathrm{E}: 打撃エネルギーによる補正係数です。自由落下させたときの理論的なエネルギー効率(60%)に対して、使用したハンマーによる打撃エネルギー効率の比で表現します。
  • C_\mathrm{R}: ロッド長による補正係数です。ロッド長が短いほど、ロッドのエネルギー効率が低下するため、この係数で補正します。
  • C_\mathrm{B}: 非正規のボーリング孔径による補正係数です。
  • C_\mathrm{S}: サンプラーの種類による補正係数です。サンプラーにライナーを挿入するスペースが有るにも関わらず、挿入しなかった場合に補正します。

ここで求めた、補正された標準貫入試験のN値\left(N_1\right)_{60}を用いて、細粒分を考慮したCRRを求めます。関数形としては、次のような式になるはずです。

CRR_{M=7.5, \ \sigma'_{\mathrm{v}}=1} = f\left(\left(N_1\right)_{60}, F_C\right)

しかし、実際にはより簡便な式として、細粒分による\left(N_1\right)_{60}への寄与分を\Delta\left(N_1\right)_{60}としてその寄与分を考慮したN値を\left(N_1\right)_{60\mathrm{cs}}として、CRRを求めることが一般的です[2]。なおここでの添字の\mathrm{cs}はclean sandの略です。

\begin{aligned} CRR_{M=7.5, \ \sigma'_{\mathrm{v}}=1} &= f\left(\left(N_1\right)_{60\mathrm{cs}}\right) \\ \left(N_1\right)_{60\mathrm{cs}} &= \left(N_1\right)_{60} + \Delta\left(N_1\right)_{60} \\ \Delta\left(N_1\right)_{60} &= f\left(F_C\right) \end{aligned}

ここで求めた液状化強度に更に、地震動の継続時間と有効度被り厚の影響を考慮した係数をかけて最終的なCRRを求めます。

CRR_{M, \ \sigma'_{\mathrm{v}}} = CRR_{M=7.5, \ \sigma'_{\mathrm{v}}=1} \times MSF \times K_{\mathrm{\sigma}}

ここで、MSFは地震動の継続時間による補正係数、K_{\mathrm{\sigma}}は有効度被り厚による補正係数です。

ここまでが基本的な流れです。ここから個別の関数や係数がどのように求められるかを見ていきます。

個別の関数や係数について

r_\mathrm{d}について

上記でも説明したように、r_\mathrm{d}は地盤の深度方向への応答変化を考慮したせん断応力比の低減係数です。Idriss, 1999では数百個の動的応答解析を実施して、r_\mathrm{d}を以下のように定式化することを提案しました。

\begin{aligned} r_\mathrm{d} &= e^{\left(\alpha(z)+M\cdot\beta(z)\right)} \\ \alpha(z) &= -1.012 - 1.126\sin\left(\frac{z}{11.73}+5.133\right) \\ \beta(z) &= 0.106 + 0.118\sin\left(\frac{z}{11.28}+5.142\right) \end{aligned}

ここで、zは地盤の深度、Mは地震のマグニチュードです。これ以外にもCetin et al., 2004やKishida et al., 2009などで同様の検討が行われており、それぞれ別の式が提案されています。

Cetin et al., 2004では、r_\mathrm{d}を以下のように定式化しています。

  • d<20 \mathrm{m} (65\mathrm{ft})の場合
r_\mathrm{d}(d, M_\mathrm{w}, a_{\text{max}}, V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}}) = \frac{ \left( 1 + \frac{-23.013 - 2.949a_{\text{max}} + 0.999M_\mathrm{w} + 0.0525V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}}}{16.258 + 0.201 \cdot e^{0.341\left(0.0785V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}} + 7.586\right)}} \right) }{ \left( 1 + \frac{-23.013 - 2.949a_{\text{max}} + 0.999M_\mathrm{w} + 0.0525V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}}}{16.258 + 0.201 \cdot e^{0.341\left(0.0785V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}} + 7.586\right)}} \right) } \pm \sigma_{\varepsilon_{r_\mathrm{d}}}
  • d\geq20 \mathrm{m} (65\mathrm{ft})の場合
r_\mathrm{d}(d, M_\mathrm{w}, a_{\text{max}}, V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}}) = \frac{ \left( 1 + \frac{-23.013 - 2.949a_{\text{max}} + 0.999M_\mathrm{w} + 0.0525V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}}}{16.258 + 0.201 \cdot e^{0.341\left(0.0785V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}} + 7.586\right)}} \right) }{ \left( 1 + \frac{-23.013 - 2.949a_{\text{max}} + 0.999M_\mathrm{w} + 0.0525V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}}}{16.258 + 0.201 \cdot e^{0.341\left(0.0785V^*_{\mathrm{s}, 12\mathrm{m}} + 7.586\right)}} \right) } - 0.0046(d - 20) \pm \sigma_{\varepsilon_{r_\mathrm{d}}}

また標準偏差項\sigma_{\varepsilon_{r_\mathrm{d}}}は、以下のように定式化されています。

  • d<12 \mathrm{m} (40\mathrm{ft})の場合
\sigma_{\varepsilon_{r_\mathrm{d}}} = 0.0198 \times d^{0.850}
  • d\geq12 \mathrm{m} (40\mathrm{ft})の場合
\sigma_{\varepsilon_{r_\mathrm{d}}} = 0.0198 \times 12^{0.850}

Kishida et al., 2009では、r_\mathrm{d}を以下のように定式化しています。

r_d = \left[\frac{1}{2} \left(\frac{\sin \left(\frac{\pi T'_s}{2 \cdot 0.2}\right)}{\frac{\pi T'_s}{2 \cdot 0.2}} + \frac{\sin \left(\frac{\pi T'_s}{2 \cdot 1.0}\right)}{\frac{\pi T'_s}{2 \cdot 1.0}}\right)^a + \frac{0.833}{2} \left(\frac{1 - S_1}{1 + S_1}\right) \left(\frac{\sin \left(\frac{\pi T'_s}{2 \cdot 0.2}\right)}{\frac{\pi T'_s}{2 \cdot 0.2}} - \frac{\sin \left(\frac{\pi T'_s}{2 \cdot 1.0}\right)}{\frac{\pi T'_s}{2 \cdot 1.0}}\right) \right]

ここで、T'_saS_1はそれぞれ以下のように立式されています。

\begin{aligned} T'_s &= \min \left(\frac{4z}{V_s}, 0.6s\right) \\ a &= 0.651 \cdot \text{PGA}^{0.0473} \\ S_1 &= \frac{S_a(1.0s)}{S_a(0.2s)} \end{aligned}

また、S_1は、マグニチュードに強く依存するため、次のような表現で推定できるとしています。

S_1 = \frac{M^{2.36}}{155}

脚注
  1. 何と比較した場合の結果が影響がないのかが少し不明確で、理解が及んでません。 ↩︎

  2. この部分は数式中の添字の意味と演算子の意味が理解できていません。寄与分であれば右辺はマイナスであるべきではないかと思うのですが... ↩︎

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