Web技術の互換性を把握するためのBaselineとWeb Platform Status Dashboard
Webブラウザの進化に伴い、新しい機能や技術が次々と登場しています。しかし、各ブラウザの実装状況や互換性を把握することは、開発者にとって大きな課題でした。この課題を解決するため、2024年に整備が進み、2025年から本格的に活用できる指標が「Baseline」です。本記事では、2024年に大きく進展したBaselineとWeb Platform Status Dashboardについて紹介します。
Baselineのおさらい
Safari、Chrome、Edge、Firefoxといった主要なWebブラウザ間での機能の互換性レベルを体系的に定義し、開発者に明確な指標を提供するものです。これにより、クロスブラウザ開発における予測可能性と信頼性が向上します。
開発者向けの主要なリファレンスプラットフォームであるMDNやCan I Useにおいて、各機能のBaselineステータスがラベルとして明確に表示され、簡単に確認することができます。
Baselineの管理と参照データ
W3C WebDX Community Groupによって管理されており、Baselineの根拠となるデータはweb-platform-dx/web-featuresリポジトリでOSSとして管理されています。
Baselineの3つの意味
Baselineには、Webプラットフォームの機能の採用状況を示す3つのステータスが定義されています。これらのステータスは、機能の成熟度と互換性を理解する上での判断材料となります。
- Limited available
- 対象となる主要ブラウザの一部でのみ利用可能な機能を示します。これは、まだ広く採用されていない実験的または新しい機能である可能性を示唆しています。
- Newly available
- すべての対象ブラウザの最新の安定版でサポートが開始された機能を指します。これは、クロスブラウザ対応が確立され始めた重要な転換点を示しています。
- Widely available
- Newly availableのステータスを獲得してから2.5年(30ヶ月)以上が経過し、十分な実績と安定性が確認された機能を指します。これは、本番環境での使用に最も適した信頼性の高い機能であることを示しています。
これらの内容は2023年に発表されたものです。
2024年にはBaselineの整備が大きく進展しました。その結果、2025年からはWebプラットフォームにおけるHTML、CSS、JavaScript、Web APIの新機能に関する判断や情報収集を、Baselineを基準に効率的に行えるようになりました。ここからは、2024年に起きた具体的な変化を紹介します。
2024年のBaselineの追加内容
2024年の変更点は下記の記事で紹介されています。
記事によると以下の変更があったようです。
- web-platform-dx/web-featuresリポジトリにBaselineに必要なデータが81%揃った
-
Web Platform Status Dashboardの追加
- 機能とBaselineの一覧が見れる
- 公式サイトの作成
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Youtubeショートによる技術の紹介
- Baselineに追加された機能をわかりやすく動画で紹介
特にWeb Platform Status Dashboardはブラウザに追加された技術が一目でわかるので、最新情報を追う上でもとても便利です。
Web Platform Status Dashboardで最新情報を追う
Web Platform Status Dashboardでは、各ブラウザの最新バージョンにおける機能のサポート状況が一覧表示されています。特に便利なのは、Baselineステータスによるフィルタリング機能で、「Widely available」な機能のみを表示したり、「Newly available」の機能をチェックしたりすることができます。
また、各年ごとにBaselineに追加された機能を確認できるため、最新の技術動向を追うのにも適しています。Web Platform Status Dashboard左サイドナビのFeatures > Baseline 2024に移動すると、2024年は53個の機能が追加されたことがわかります。
2025年1月にBaselineではNewly availableになったPopoverをみてみると、各ブラウザ上でテストがどの程度クリアしたのかも知ることができます。
Web Platform Status DashboardとBaselineを活用する際は、以下の点に注意すると良いでしょう。
- 常に最新情報を確認する: 各機能のステータスは、ブラウザのアップデートによって変化する可能性があります。そのため、定期的にWeb Platform Status Dashboardで最新情報を確認するようにしましょう。
- Baselineはあくまで指標の一つ: Baselineは、あくまでWebプラットフォームの機能の互換性を示す指標の一つです。実際の利用状況やユーザー環境も考慮して、技術採用を判断する必要があります。
- MDNやCan I Useも併用する: Baselineに加えて、MDNやCan I Useなどの情報も参考にすることで、より網羅的な情報を得ることができます。
まとめ
2024年のBaselineの整備により、Webプラットフォームの機能の互換性と採用状況を効率的に把握できるようになりました。Web Platform Status Dashboardの登場で、最新ブラウザの動向をすべて追わなくても、開発者が最新の技術動向を追ったり、技術採用の判断をつける材料となるでししょう。
この記事は先日の登壇資料からBaselineの部分を抜粋したものです。
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