オンラインカンファレンスの司会で気をつけたこと
はじめに
初めてオンラインのカンファレンスで司会をしたので、そのメモ書きです。
この記事では発話方法やアクセント等、アナウンサーや声優のような技法については扱いません。
オンライン開催の時に、自宅から配信するか、配信会場から配信するかで状況が異なると思いますが、この記事では配信会場に行って司会を行った場合について書いています。
オフラインカンファレンスの司会は今も未経験です。
司会したカンファレンス
JaSST'21 Tokyo のTrack04の司会と、Track01招待講演の質疑応答の司会をしました。
司会をすることになった経緯
- 今年度からJaSST実行委員に入る
- 実行委員の中のプログラムチーム(主にセッション内容等を企画するチーム)に入る
- 本番日に配信会場に行ける人が少なかったこともあり、トラック04の司会になる
- イベント終盤+クロージング直前ということで司会を引き受けられる人がさらに少なくなり、招待講演の司会になる
強そうな環境に身を投じて右往左往していたら、いつの間にか強そうな機会が振られるパターンです。心理的負荷は相当高いですが、引き受けたからには頑張りましょう。
オンラインの司会で気をつけたこと
司会以外
いきなり司会以外の部分を挙げるのも変ですが、まず司会の周りがかなり重要です。
映像の切り替えスイッチなどの配信基盤を司るディレクター、トラック全体の管理を行うトラックオーナーと事前に打ち合わせをしておき、各関係者と素早く連絡を取れるSlack等を用意してもらいます。とにかく司会者の漠然とした不安や疑問点などを即時解決できる環境を周りに作ってもらってください。
準備時
司会は何もせず後から来て原稿読んでいれば良いかと言うと、そうではありません。下記の準備が必要です。
準備するもの
- 必須
- PC(電源アダプタ含む)
- ヘッドセット(またはイヤホン)
- 任意
- PCの高さ調節用スタンド
- 外部ディスプレイ
- タブレット、スマホなど
- デジタル式の電波時計(腕時計、Webアプリでも可)
必須のPC、ヘッドセットは言わずもがなですが、PC調整用スタンド、外部ディスプレイ、等もあると便利です。司会が初めての人はとりあえず準備しておくと良いかと思います。
準備すること
- PC上でも机上でも良いので、下記が見えるようにしておく
- オンライン会議アプリ(Zoomなど)
- 質疑応答リスト(sli.doなど)
- 司会台本
- タイムライン(開始時刻、動画切り替えタイミング、終了時刻等が書かれたもの)
- 時計(1秒単位で分かるもの)
オンライン会議アプリ、質疑応答リストはPC上にあると思いますが、他のものはアナログでも良いと思います。ただし、紙を使う場合はあまり音を立てない様に静かに取り扱ってください。マイクにノイズとして拾われます。
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タイムラインを正確に把握しておく
オンラインでは映像の切り替えタイミングを掴むことが難しいです。配信中の動画を横目に見ることもできますが、ラグがあるので役に立ちません。基本的にチャットなどで切り替えタイミングを教えてもらうことになると思います。この時に、急に映像を自分に切り替えられるのと、十数秒前から自分のタイミングで準備して切り替わるのでは精神的に大違いです。そのため、目の前の時計で何時何分何秒に司会に映像が切り替わり、初めに何を言えば良いのかをしっかりと把握しておくことが大切です。 -
ディレクター、登壇者と打ち合わせしておく
登壇者もおそらくオンラインが初めての人が多いと思います。司会者とディレクター間で以下を合意しておき、登壇者にも事前に伝えましょう。- セッション全体の流れ
- 登壇者がWeb会議に入るタイミング
- セッション開始時刻、終了時刻
- 映像切り替え時の合図
- 登壇者が話し始めるタイミング
- 質疑応答の進め方(sli.doなどがあれば登壇者にも見えるようにしてもらう)
- 登壇途中に連絡する内容(「終了5分前です。」等)
- 登壇者がWeb会議から退室するタイミング
- セッション全体の流れ
LIVE配信時
LIVE配信時に、司会がやらなくてはいけないことは基本的に以下の3つです。
この3つさえ大きなミスをしなければ良い司会になると思います。
- 台本の読み上げ
- タイムキープ
- 質疑応答
台本の読み上げ
告知や注意事項の案内の台本があると思いますが、台本の読み上げはそこまで難しく無いです。完全に暗唱して目線をカメラに向けたまま喋るとなると難しいと思いますが、アナウンサーではないので原稿を丁寧に読み上げれば大丈夫だと思います。噛んだら文の始まりから読み直せば良いです。
タイムキープ
これはやや難しいですが、自分一人でやる必要はありません。別にタイムキーパーを立てておき、その人からの連絡が見える様にしておくと良いと思います。タイムキーパーからスピードの調整、質疑応答の残り質問数をリアルタイムに連絡してもらい、司会者はそれに従うだけという状態を作れたら理想的です。
質疑応答
おそらくこれがオンラインカンファレンスで最も司会の技量を問われるものだと思います。具体的に以下の流れで攻略する必要がありました。
登壇者の講演中
登壇者の講演中は内容をよく聞きましょう。理解が追いつけなかったスライド、疑問に思った点があればメモしておきます。余裕があればtwitterも確認し、視聴者のリアルな感想や温度感もつかんでおきましょう。
- 講演が録画の場合
講演が録画配信で、質疑応答のみLIVEの場合、録画配信中に登壇者とコミュニケーションを取ることができると思います。その場合、来ている質問を確認することができるので、登壇者と質問の順番を確認したり、質問の量と質によって、回答を数重視でいくか質重視でいくか決めておくことができます。
質疑応答中
オンラインの場合は、質疑応答に入る時には何らかの形の質問リストが出来上がっていると思います。これに対して登壇者と打ち合わせした通りの順番で読み上げます。とくに私が気をつけたのは以下です。
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自分の解釈を挟まない
質問内容によっては「いくつかの意味に解釈できるが、おそらくこういう意図だろうな」と思える質問があります。しかし、私の解釈を入れると質問の意図をねじ曲げる恐れがあるので、とりあえず最初は登壇者にそのままの文面で質問しました。登壇者でも意図の解釈に困った場合のみ、自分の解釈を述べるようにしました。 -
質問者の意図とずれがあると感じた場合のみ、追加質問を行う
たまに質問者の意図と、登壇者の回答内容がずれていると感じることがあります。そういった場合は、質問者の意図を汲み取って適切な追加質問を行う必要があります。ずれていると判断するための材料は講演中の自分のメモと、Twitterに投稿される内容です。回答に違和感を感じた場合、自分のメモとtwitterの温度感を振り返り、やっぱり質問した方が良いと思った場合、自分の考える質問者の意図を込めた追加の質問を行いました。ただし、時間も限られているので追加質問は1回か2回までにした方が良いと思います。 -
自分の知見を発表しない
質問の1つに「ハードウェアのアジャイルはどうなのか」のような質問がありましたが、司会の私が製造業系のITをやっていたため、一応ある程度の知見を持っている分野でしたが、それでも自分の意見を言わないようにしました。おそらく視聴者100人の内100人が登壇者の話を聞きに来ています。司会者の話を聞こうと思っている人は1人もいません。どれだけ言いたくても黙っておくことが大事です。 -
適度に話をまとめる
おそらく登壇慣れしている人ならば、回答するときに、最初に回答となる結論を話し、続いて詳細な内容や元になった事例を話すと思います。ただし、質問にも難しいものがあり、登壇者も考えながら話すので、常にこの順番で話せるわけではありません。そういった時には、司会者の方で質問に対する回答となる結論部分をまとめて登壇者に確認を取りましょう。おそらく視聴者にも分かりやすく伝わるはずです。 -
時間を守る
質疑応答はどこかのタイミングで終わらせなくてはいけませんが、質疑応答に熱中して時間オーバーしてはいけません。各質問ごとに、「質問を読み上げる」→「回答中にメモを取る」→「時計を確認する」→「次の質問を用意する or クロージングに持っていく」のような自分なりのルーティンを組み上げましょう。
さいごに
オンラインの司会とはいえ、オフラインの司会とほぼノウハウ的には変わらないと思います。変わるのは映像切り替えタイミングの取り方と、遠隔にいる登壇者との間の取り方だと思います。私はオフライン司会もやったことがなかったため全て書きましたが、オフライン司会に慣れている人からするとそこまで難しいものでは無いと思います。この記事がだれかの役に立てば幸いです。
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