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LLMの運用におけるバッドプラクティス
LLMの使用領域におけるバッドプラクティスと対応策
共通の根本原理
LLMは確率的なモデルであり、同じ入力でも出力が揺れることがあるため、決定論的に処理できる領域では使うべきではない。
この原理を無視すると、さまざまな場面で「LLMを使う必要がないのに使ってしまう」失敗が起きる。
失敗の種類と事例
技術的ミスマッチ:決定論的処理にLLMを使う
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事例
- JSON構造の正当性をLLMで判定 → 誤って「OK」と返す。
- 数値計算をLLMに任せる → 桁ズレや誤差。
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なぜ問題か
- LLMは揺れるので「常に正しい」が求められる処理に不適。
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代替案
- JSON Schemaや正規表現で検証。
- 計算は組み込み演算やライブラリを利用。
リスク耐性:ゼロエラー要求の領域に使う
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事例
- 金融システムで送金額をLLMが解釈 → 1円の誤りでも致命的。
- 医療システムで薬剤量をLLMに算出させる。
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なぜ問題か
- 一度の誤りが重大事故につながる領域では誤答許容できない。
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代替案
- LLMは入力補助や説明生成に限定。
- 最終判断はルールベースか人間。
説明可能性:監査が必要な領域に使う
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事例
- 契約書のリスクを「OK/NG」で返すだけ → 根拠不明で監査不可。
- 個人情報保護チェックをLLMに丸投げ。
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なぜ問題か
- 出力に根拠がなく、後から説明・検証できない。
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代替案
- 条文や規約ベースで一次判定。
- LLMは要注意箇所のハイライトと補足説明。
効率性:ルールで十分な領域をLLMに丸投げ
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事例
- スペルチェックをLLMに依頼 → 高コスト+誤検知。
- コードフォーマットをLLMで処理 → 本来はリンタやフォーマッタで済む。
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なぜ問題か
- コストが高く、再現性や効率性も低下する。
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代替案
- 専用ツール(リンタ、辞書、スタイルガイド)を利用。
- LLMは「改善提案」や「読みやすさ評価」に限定。
運用設計:LLMを必須チェックに組み込む
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事例
- CI/CDで「LLMレビューに合格しないとPRをマージできない」。
- QAで「LLMスコアが一定値未満ならリリース不可」。
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なぜ問題か
- LLMの揺れや誤検知で開発・リリースが止まってしまう。
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代替案
- LLMはアドバイザリー(提案)扱い。
- 必須チェックは決定論的処理で担保。
- フォールバックを用意(LLMが失敗してもパイプラインは止めない)。
まとめ
- すべての失敗事例は「決定論で解ける領域にLLMを当ててしまう」という根本原理から生じる。
- ただし、現れ方は「技術的ミスマッチ」「リスク耐性」「説明可能性」「効率性」「運用設計」といった複数の観点に分けられる。
- ベストプラクティスは、ルールベース・人間判断・LLM補助を適材適所で組み合わせること。