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【勉強会参加レポート】Cursor AgentによるパーソナルAIアシスタント育成入門

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はじめに

こんにちは或いはこんばんは。Ryuzakiです。

「パーソナルAIアシスタント」というパワーワードと大島勇樹さんがメインの発表者だという点に惹かれ、StudyCoが主催するオンラインウェビナー「Cursor AgentによるパーソナルAIアシスタント育成入門 ー業務のプロンプト化・MCPの活用ー」に先日参加しました。
https://studyco.connpass.com/event/350447/

内容がとても良かったため、ウェビナーで話された内容の概要と自身の感想を共有したいと思います。

イベント概要

Connpassページに記載されていたイベント概要は以下の通りです。

Cursor・Clineなどのソフトウェア開発支援のAIツールの進化は目覚ましく、開発者の生産性に大きく影響を与えています。

実はこれらのツールの使い道はコーディングに限ったものではありません。 個人のタスク管理や業務の自動化など、さまざまな用途で活用できる「パーソナルAIアシスタント」として育てることもできます。

この勉強会では、Cursor AgentのパーソナルAIアシスタントとしての活用について紹介します。

マニュアル業務をプロンプト化してエージェント駆動で実施できるようにしたり、さらにはMCPを活用する例まで扱います。

※例としてCursorを使用しますが、他のツールでも参考にできる内容となる予定です。

講演資料

講演資料はSpeakerDeckにて公開されています。

https://speakerdeck.com/os1ma/cursor-agentniyorupasonaruaiasisutantoyu-cheng-ru-men-ye-wu-nopuronputohua-mcpnohuo-yong

イベントメモ

今回のウェビナーでは、Cursor AgentをパーソナルAIアシスタントとして活用するための様々な方法や考え方について共有されました。以下に、ウェビナー内で特に印象的だった内容をまとめます。

CursorとCursor Agentの概要

最初に、CursorとCursor Agentの基本的な概念について説明がありました。

Cursorは、Visual Studio Codeをベースとして開発された、AIとシームレスに統合されたエディタとのこと。単なるコード補完機能を提供するだけでなく、ファイルの内容を踏まえたチャット機能など、AIとの連携が大幅に強化されているのが特徴だそうです。

Cursorのチャット機能には「Agent Mode」「Ask Mode」「Manual Mode」という3つのモードが存在し、このウェビナーでは「Agent Mode」を「Cursor Agent」と呼んでいました。Agent Modeの特徴は、既存のファイルの検索やコマンドの実行をしながら、自律的にコードの実装を進めることができる点だとのこと。これにより、単にコードの提案を受けるだけでなく、Agentが実際にファイルを作成・編集したり、必要なコマンドを実行したりして作業を進めることができるようです。

Cursor AgentのパーソナルAIアシスタントとしての活用

Cursor Agentの可能性

Cursor Agentはコーディング支援ツールとして語られることが多いですが、このセクションではコーディング以外の様々な用途に活用できることが説明されました。

例えば、以下のようなタスクを依頼できるとのこと:

  • 「○○に必要なタスクを洗い出してtodo.mdにまとめて」
  • 「イベントの書き起こしからブログ記事の下書きを作って」
  • 「YouTube Liveの配信準備して」

大島さんはCursorを「エージェント付きエディタ」ではなく「エディタ付きエージェント」と捉えているそうです。この視点の転換が、Cursorを単なるコーディングツールから多目的なパーソナルAIアシスタントへと昇華させる鍵となるようです。

プロンプトの育成と活用

CursorをパーソナルAIアシスタントとして効果的に活用するためには、「プロンプトを育てる」という視点が非常に重要だと強調されていました。プロンプト育成の流れとして、以下のようなサイクルを回すことが推奨されていました。

  1. 最初のプロンプトを書かせる
  2. プロンプトを別セッションで実行する
  3. フィードバックしてプロンプトを改善する
  4. 改善したプロンプトを再度別セッションで実行する
  5. 必要に応じて3〜4を繰り返す

ウェビナーでは「StudyCoの勉強会アーカイブ動画の字幕からQ&Aを一覧化する」というタスクを題材に、このプロンプト育成プロセスがデモンストレーションされていました。プロンプトがうまく機能しなかった時に、プロンプト自体の更新を指示できることがCursor Agentの大きな特徴だということです。

プロンプトを管理する際のディレクトリ構造として、以下のような構成が紹介されていました。

.
├── .cursor  // Cursorの設定ファイル
├── memory    // エージェントに覚えておいてほしい記憶
├── prompts   // プロンプト集
│   ├── example_task1.md
│   └── example_task2.md
└── src       // 自作のMCPサーバーや各種スクリプト

なお、Cursor Agentが想定外のファイル編集を行うこともあるため、各種ファイルをGitで管理することが強く推奨されていました。これにより、エージェントが意図しない変更を加えてしまった場合でも元に戻すことができるとのことです。

MCPの活用

ウェビナーの後半では、MCP(Model Context Protocol)の活用方法について詳しく解説されました。

MCPは、Anthropicが提案したLLMにコンテキストを提供する方法を標準化したプロトコルで、「AIアプリケーション用のUSB-Cポート」と例えられるほど、異なるAIアプリケーションと外部サービス・データを統一的に接続するための規格として機能しています。

MCPを利用することで、Claude DesktopやCursorなどのMCPホスト(MCPクライアント)から、MCPサーバーを介して外部サービスやデータを生成AIに提供することができるとのこと。これにより、単なるテキスト生成だけでなく、外部システムとの連携が可能になります。

MCPについて生成AIに教えるための文書「llms-full.txt」が公開されているため、この文書を活用することで、比較的容易に自作のMCPサーバーを開発することも可能だそうです。
https://modelcontextprotocol.io/llms-full.txt

デモンストレーションでは、具体的な活用例として以下が紹介されていました。

  1. Playwright MCPによるリバーシゲームのテスト
    Playwrightのブラウザ自動化機能を利用して、HTMLで作成したリバーシゲームを自動テスト

  2. PDF変換サービス
    自作MCPサーバーを使って、マークダウン形式のQ&AをPDFに変換

  3. YouTube配信準備の自動化
    テーマ決定、Googleドライブでのフォルダやファイルの作成、イベント告知ページの作成、YouTube配信設定など一連の作業をCursor AgentとMCPを組み合わせて自動化

MCPを活用することで、Cursor Agentの能力を大幅に拡張し、より複雑なワークフローを自動化できることが示されていました。

パーソナルAIアシスタントの育成課題

Cursor AgentをパーソナルAIアシスタントとして活用する上での課題についても言及がありました。

まず、プロンプトが完成すれば非常に便利ですが、プロンプト作成自体にかなりの時間を要するという課題があるとのこと。そのため、急ぎの仕事は一旦人手でやった方が結果的に早く終わるケースも多いそうです。

また、個人で使うプロンプトと社内で共有するプロンプトの間にはある程度の壁があるという指摘もありました。プロンプトに反映しきれていない暗黙知を言語化するのは非常に困難であり、特にプロンプトの作成者しか知らない細かな使い方が多く存在するとのことです。

さらに、最近では人間がボトルネックになり始めているという興味深い指摘もありました。AIの処理速度が非常に速くなってきているため、AIの出力をチェックする人間の認知処理が追いつかなくなる場面も発生しているそうです。

AIを上手く活用するためのマインド

最後に、AIを効果的に活用するためのマインドセットについて共有がありました。

まず重要なのは、AIの可能性を信じる姿勢だとのこと。大島さん自身も「多くの分野でAIは自分よりも賢い」と考えるようになってから、AIの使い方が大きく変わったそうです。

また「なんでも一旦AIにやらせてみる」という試行錯誤の姿勢も推奨されていました。どうすればAIにタスクをやらせることができるかを日々考えることで、AIの活用範囲が広がるとのことです。

さらに、完璧主義を捨てる重要性も強調されていました。完璧ではなくても、人間が行うよりも早く終わるだけでも十分価値があるタスクが多く存在します。そのため、完璧な成果物を求めるよりも、AIで素早く仕事を終わらせる方が全体としての効率が上がる場面も多いとのことでした。

印象に残った点と感想

Cursorが直接参照可能な場所にプロンプト集を配置することで、「これやって」というシンプルなプロンプトだけで各種タスクを実行することが可能だと知れた点が非常に参考になりました。自分もタスクごとに利用するプロンプトをまとめたプロンプト集を作成しているのですが、毎回プロンプト集からコピペするという手間が発生していたため、この方法を知れたのは大きな収穫でした。

また、プロンプトを育てることの最終結果の1つとして、定期的な勉強会のテーマ策定から諸準備の実施までを行うプロンプトの例を見せて頂けたのも印象的でした。以前から自分が利用するプロンプトの改善自体は行っていたのですが、MCPを組み込んだエージェンティックなプロンプトにまでは昇華されていませんでした。その可能性を目の当たりにできたのは自分にとってかなりプラスだったと感じています。

社内でのプロンプトの共有の難しさに関して言及されていた点にも強く共感しました。自分も「なんか上手く共有できないな」とモヤモヤしていたのですが、「どのプロンプトをどのような順序でどう使うかという知見が個人レベルで暗黙知化されてしまうため、プロンプトの作成者が得られる結果と他者が得られる結果のレベル(精度)が異なってしまう」と明文化して頂けたことで、かなりスッキリできました。

おわりに

今回のウェビナーを通じて、Cursor Agentを単なるコーディング支援ツールではなく、より広範なタスクをこなせるパーソナルAIアシスタントとして活用する視点を得ることができました。特に「プロンプトは資産」という考え方や、MCPを活用してエージェントの能力を拡張する方法は、これからの業務効率化に大いに役立ちそうです。

AIの活用が進むにつれて、「人間がソフトウェアを使う」世界から「AIがソフトウェアを扱う」世界へのパラダイムシフトが起きつつあることを実感させられる内容でした。これからの業務効率化やDXを考える上で、非常に参考になる視点だと思います。

ウェビナーの内容をより深く知りたい方は、ぜひYouTubeのアーカイブ動画をご覧いただきたいです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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