VRでプレイヤーのUI(HUD)を実装する方法

2024/12/10に公開

以下では、VRで視界を半透明の画像で覆う際に、CanvasをWorld Space(ワールドスペース)モードでVRカメラの目の前に配置する具体的な手順を詳しく解説します。これにより、VR空間内で半透明なイメージがプレイヤーの視界を妨げるような演出が可能になります。

前提

  • VR環境はUnity公式のXRプラグイン( Unity XR Management )やOculus Integrationなど、何らかのVR SDKでセットアップ済みとします。
  • VRカメラ(XR OriginやCameraRigなどVR SDK特有のカメラセットアップ)が正常に動作している前提です。

手順

  1. Canvasの作成と設定

    • ヒエラルキーで右クリック → UICanvas を選択してCanvasを作成します。
    • Canvasを選択し、InspectorCanvasコンポーネントでRender ModeWorld Spaceに変更します。
  2. Canvasの配置

    • VRでは「画面に固定する」感覚ではなく、Canvasを3D空間上の"板"として配置します。
    • VRカメラ(通常、XR Originオブジェクト配下にMain Cameraがあるなど)の正面に、一定距離(例:1m~2m程度)でCanvasを配置します。
      • 例えば、カメラが(0,0,0)にあると仮定するなら、Canvasを(0,0,1)付近に配置。
      • CanvasのRect Transformを調整し、サイズを視界全体をカバーするよう十分大きくします(VR視界はFOVが広いので、幅・高さを大きめに設定しましょう)。
  3. Canvasのスケール調整

    • World Space CanvasはUI要素が1ユニット=1メートルの単位で表示されます。
    • 適度な大きさになるまでCanvas全体のRect TransformWidthHeightを調整します。
    • または、Canvasそのものをスケールアップ( TransformScale )して視界全体を覆えるサイズにします。
    • 推奨として、WidthHeightを2~3メートル程度にして、Alpha付きの画像がVRカメラ前方に広がるようにします。
  4. Image UIの設定

    • Canvas配下で右クリック → UIImageを選択し、Imageを追加します。
    • Rect TransformAnchor Presetsをストレッチモード(上下左右すべてストレッチ)に設定し、Canvas全体を覆うようにします。
    • ImageのColorプロパティで半透明な黒(例:R=0,G=0,B=0,A=0.5)を設定、または半透明のテクスチャをSource Imageに設定して視界を悪くします。
  5. カメラの追従(任意)

    • プレイヤーが首を振ると、Canvasはワールド空間上の固定位置に置かれているため、見ている方向によってはCanvasが視界から外れる可能性があります。
    • 常に視界を妨げたい場合は、Canvasをカメラと一緒に移動・回転させる必要があります。
    • CanvasをVRカメラオブジェクトの子要素にすると、カメラの向いている方向に常にCanvasが正面に来ます。ただし、カメラに完全固定すると、深度感が失われたりVR酔いを招くことがあるため、適度な距離を保持することが重要です。
    • もしCanvasを固定しない場合、ワールド上の固定位置にCanvasを設置し、プレイヤーが特定のエリアに入ると視界が悪くなる仕組みにすることも可能です。
  6. Alpha値の操作(任意)

    • スクリプトからImageのColorプロパティを操作することで、徐々に視界を悪くしたり、元に戻したりする演出ができます。
    • 例:
      Image image = canvasImageObject.GetComponent<Image>();
      Color c = image.color;
      c.a = Mathf.Lerp(c.a, 0.5f, Time.deltaTime);
      image.color = c;
      

ポイント

  • 距離とサイズのバランス
    World Space Canvasは3D空間上に実物サイズで表示されるため、近すぎると視差が生じてVR酔いの原因になり、遠すぎると視界が悪くなりづらくなります。
    プレイヤー体験に応じて距離(0.5m~2m程度)とCanvasのサイズを試してみてください。

  • 両眼表示確認
    VR環境は両眼レンダリングで表現されます。Canvasが両眼で正しくレンダリングされていること(片目だけ見えない現象が起こっていないか)を確認しましょう。
    基本的にUIは問題なく表示されますが、URP/HDRPや特殊なシェーダーを使っている場合、片目描画に問題が出ることがあります。その場合は、レンダーモードやシェーダー選びに注意が必要です。

  • 他のエフェクトとの組み合わせ
    単純にCanvasで視界を暗くするだけでなく、グレイン(ノイズ)やぼかし(Blur)効果を与えるシェーダー付き画像を使うと、よりリアルに視界が悪くなったような表現が可能です。
    ただし、ポストプロセスでVR対応が不完全な場合(片目が見えなくなるバグなど)、代替としてこのWorld Space Canvasを使うアプローチは有効な手段です。

まとめ

  • CanvasをWorld Spaceモードに切り替え、VRカメラ前方に配置することで、仮想現実空間で半透明なイメージを視界に重ねられます。
  • カメラの子オブジェクトにして追従させることで、プレイヤーが動いても視界を悪くし続けることができます。
  • 透過度や色を調整することで、状況に合わせた視界妨害表現が簡単に可能です。

このような手順で、VR開発においてプレイヤーの視界を戦略的にコントロールすることができます。

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