Model Context Protocol × 音楽制作:AbletonMCPを試してみた
ここ最近、さまざまな Model Context Protocol(MCP)を試していたのですが、その中でもとりわけ興味深かったのが AbletonMCP です。これは、DTMソフトである Ableton Live を自然言語で操作できるようにするMCPで、音楽制作のワークフローや表現に革命を起こしうる可能性を感じました。
本記事では、AbletonMCPの概要、セットアップ方法、実際に使ってみた感想を紹介します。
🎛️ そもそもMCPとは?
Model Context Protocol(MCP) とは、AIアシスタントがさまざまな外部ツールやデータソースとやり取りするための共通プロトコルです。従来、AIに対して「何かをさせる」ためには、その都度専用のプログラムやAPI実装が必要でしたが、MCPを使えば、自然言語から共通的な命令形式に変換し、ツール側に伝えることが可能になります。
音楽制作だけでなく、Notion、Google Sheets、Slack など、さまざまなツールとの連携が可能なMCPが登場しており、開発が活発に進められています。
🎹 Ableton Liveとは?
Ableton Live は、エレクトロニックミュージックを中心にプロからアマチュアまで幅広く使用されているDAW(Digital Audio Workstation)です。直感的な操作性とライブパフォーマンス機能の両立が特徴で、特にシーケンスやループを活かした音楽制作に強みがあります。
🧠 AbletonMCPとは?
AbletonMCP は、Ableton LiveをMCPを通じて自然言語で操作できるようにする拡張です。以下のツイートでも、その可能性が簡潔に紹介されています:
AbletonMCPを使うと、以下のようなことが自然言語で指示できます:
- 「4小節のドラムループを追加して」
- 「ベースにサイドチェインをかけて」
- 「BPMを120にしてください」
- 「コードを支えるために、柔らかいパッドを追加して」
🚀 設定方法
基本的なセットアップは以下のYouTube動画が参考になります:
ただし、動画の手順後に行う必要がある以下の手順が抜けているため、以下の設定を追加で行ってください:
- Ableton Liveを起動
-
Settings/Preferences
→Link, Tempo & MIDI
を開く - ドロップダウンから
AbletonMCP
を選択 -
Input
およびOutput
を「None」に設定
これで準備完了です。
🎼 実際に自然言語だけで曲を作ってみた
せっかくなので、AbletonMCPを使って、自然言語指示だけでリズム、ベースライン、コード進行(パッド)、メロディ、エフェクトなどを組み立ててみました。
実際に行った指示の例
- "パンチの効いたキック、スネア、クラップ、ハイハットが入ったレトロなドラムラックを読み込んで、4小節のドラムパターンを作成してください"
- "ビンテージ感のあるシンセベースのMIDIトラックを作成してください"
- "ファンキーなエレキギターのサンプルを使ったMIDIトラックを追加してください"
- "ボコーダー風のリードシンセを使ったMIDIトラックを追加してください"
- "ハイハットを8分音符で打ち込み、軽くスウィングをかけてください"
備考
なぜかClaude Desktopからの指示は途中で止まってしまうことが多かったため、私は Cline から実施しました。
所感
- 柔軟性はかなり高いです。たとえば「コード進行にジャジーな雰囲気を加えて」といった曖昧な指示にもある程度応答してくれます。
- ただし、あくまで単一の指示に閉じるため,Abletonの複数トラックに渡った「曲全体としての一貫性」や「セクション構造の整合性」までは評価・調整されません。
- 一方で、SunoなどのAI音楽生成サービスと異なり、トラック単位で細かく指示ができ、楽曲構成を自分でコントロールできる点がDTMユーザーにとっては非常に魅力的です。(作業効率化や制作における意図しないランダム性を呼び込むような使い方ができそう)
⚠️ 何ができて、何ができないのか
✅ 実装されている関数(2025年4月18日時点)
以下はAbletonMCPで使用されている主な関数です。自然言語の指示は最終的にこれらに変換されて実行されるようです:
-
get_session_info
: 現在のAbletonセッションに関する詳細情報を取得 -
get_track_info
: 特定のトラックに関する詳細情報を取得 -
create_midi_track
: 新しいMIDIトラックを作成 -
set_track_name
: トラック名を設定 -
create_clip
: 新しいMIDIクリップを作成 -
add_notes_to_clip
: クリップにMIDIノートを追加 -
set_clip_name
: クリップ名を設定 -
set_tempo
: テンポを設定 -
load_instrument_or_effect
: トラックに楽器やエフェクトをロード -
fire_clip
: クリップの再生を開始 -
stop_clip
: クリップの再生を停止 -
start_playback
: Abletonセッションの再生を開始 -
stop_playback
: Abletonセッションの再生を停止 -
get_browser_tree
: Abletonのブラウザカテゴリの階層ツリーを取得 -
get_browser_items_at_path
: Abletonブラウザの特定のパスにあるアイテムを取得 -
load_drum_kit
: 特定のドラムキットをロード
❌ 現時点で未対応の操作例
以下のような操作には対応できませんでした:
-
オートメーションの追加
- 例:「シンセベースのフィルターを8小節かけて開いてください」
- → MCP経由でオートメーションを描く機能は未実装
-
Audioトラックへのサンプル配置
- 例:「ホワイトノイズライザーを8小節目に配置して」
- → Audio素材の配置やトラック作成は未対応
-
時間指定でのミュート・アンミュート
- 例:「17小節目からドラムをミュートしてブレイクを作って」
- → 小節単位での時間指定制御は未対応
現在は、MIDIトラックや基本的なクリップ、エフェクトの操作に強く、タイムラインやオーディオ処理に関しては今後のアップデートに期待といった状況です。
📝 まとめ
AbletonMCPを使うことで、DTMのワークフローが大きく変わる可能性を感じました。以下のような人には特におすすめです:
- 音楽制作を始めたいがDAWの操作に不慣れな人
- 音楽のアイデア出しをAIに支援してもらいたい人
- 新しい表現や創作の方法を探している人
もちろん現時点では制限もありますが、人間の創造性を自然言語で補助してくれる新たなツールとして、今後の進化に期待が高まります。
今後は、Ableton Liveのより深い制御や、セクション構成の自動最適化などにも対応できると、さらに強力な創作ツールになるはずです。
記事内で紹介したMCPの活用例や動画が参考になった方は、ぜひ試してみてください!
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