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最新LLM時代のプロンプトエンジニアリング完全ガイド【GPT-5 / Claude Sonnet4 / Gemini2.5 / Llama4

に公開

はじめに

2025年現在、最新の大規模言語モデル(LLM)として Gemini2.5, GPT-5, Claude Sonnet4, Meta Llama4 が登場しました。
これらのモデルのポテンシャルを最大限に引き出すには、単に質問するだけでなく「プロンプトエンジニアリング」が不可欠です。

本記事では、各AIの公式ドキュメントに記載されたベストプラクティスをもとに、共通原則各モデルに特化した設計方法を具体例付きで徹底解説します。
(参考: OpenAI, Claude, Google Gemini, Llama

全モデルに共通したプロンプト設計【7つの原理原則】

1. 役割の付与 (Assign a Role / Persona)

AIに「役割」を与えると、トーンやスタイル、専門性が安定します。

- 悪い例
中小企業のセキュリティ対策を教えて。
+ 良い例
あなたは20年以上の経験を持つサイバーセキュリティの専門家です。
中小企業が導入すべき、コスト効率の高いランサムウェア対策を、優先順位をつけてトップ5まで提案してください。
それぞれの対策について、導入の難易度と期待される効果も簡潔に説明してください。

2. 明確かつ具体的な指示 (Clear and Specific Instructions)

出力形式や条件を具体的に指定する。

- 悪い例
この文章を要約して。
+ 良い例
以下の会議議事録を、次の3つのポイントに絞って300字以内の箇条書きで要約してください。
・決定事項
・次のアクションアイテムと担当者
・ペンディング事項

3. 文脈(コンテキスト)の提供 (Provide Context)

背景を与えると精度が飛躍的に向上します。

私はデータ分析の初心者です。
以下の形式の気象データがあります。

| date       | temperature | humidity |
|------------|-------------|----------|
| 2025-08-01 | 32.5        | 75       |
| 2025-08-02 | 33.1        | 72       |

このデータを使って、横軸を`date`、縦軸を`temperature`とした折れ線グラフをmatplotlibで作成するPythonコードを生成してください。

4. 少数ショット学習 (Few-Shot Learning)

例を与えて意図を伝える。

以下は、顧客からのフィードバックを「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」に分類するタスクです。
例を参考に、最後のフィードバックを分類してください。

例1: フィードバック:「アプリの新しいデザイン、とても使いやすいです!」 → 分類: ポジティブ
例2: フィードバック:「アップデート後、頻繁にクラッシュするようになりました。」 → 分類: ネガティブ
例3: フィードバック:「今回の変更点は特にありませんでした。」 → 分類: ニュートラル

分類対象: 「読み込みに少し時間がかかるようになった気がします。」
分類:

5. 思考の連鎖 (Chain-of-Thought)

ステップごとの思考を促す。

Aさんはリンゴを5個持っています。Bさんから3個もらい、その後2個食べました。残りは何個ですか?
ステップバイステップで考えて、計算過程も示してください。

6. 出力形式の指定 (Specify Output Format)

JSONやMarkdownを指定する。

{
  "energy_sources": [
    {
      "name": "太陽光",
      "description": "太陽光パネルで発電する方法",
      "pros": ["再生可能", "設置コストが低下中"],
      "cons": ["天候依存", "夜間は発電できない"]
    }
  ]
}

7. 肯定的な指示と制約 (Affirmative Directives)

- 悪い例
専門用語を使わないで説明して。
+ 良い例
小学5年生にも理解できるように、平易な言葉で説明してください。

Gemini2.5向けプロンプト設計

特徴

  • マルチモーダルプロンプティング
    • テキストの指示と合わせて画像や動画をインプットし、それらに関する質問やタスクを指示することが非常に有効です
  • Function Callingの活用
    • 外部のAPIやツールを呼び出す機能を前提としたプロンプト設計が重要になります。必要なパラメータを正確に抽出させる指示を心がけましょう。
  • 自然な対話形式
    • キーワードの羅列ではなく、人間と話すように自然な文章で指示を与えることが推奨されています。

特徴を踏まえたプロンプト例

あなたは旅行プランナーです。  
以下の条件で旅行プランを作成してください。  

条件:  
- 家族4人(子供2人)  
- 予算は20万円以内  
- 行き先は沖縄  
- 3泊4日  

出力形式:  
- 日ごとの行程表  
- 各日の予算目安(交通費・宿泊費・食費を含む)  
- 子供向けアクティビティを必ず含める

GPT-5向けプロンプト設計

特徴

  • System Promptの徹底活用
    • systemメッセージでAIの役割、性格、守るべきルールを厳密に定義することで、一貫性のある応答を引き出せます。これはAPI利用時に特に重要です。
  • 指示(Instruction)ベース
    • プロンプトは「(動詞)してください」という明確な命令形で始めることが効果的です。
  • 思考プロセスの誘導
    • Chain-of-Thoughtを応用し、複雑なタスクを複数のステップに分解させ、それぞれのステップを実行させることで、より高度な推論が可能になります。

特徴を踏まえたプロンプト例

あなたはプロのカスタマーサポート担当者です。  
顧客からのクレームメールに対して返信を作成してください。  
条件:  
- 常に共感を示す  
- 解決策を必ず1つ以上提示する  
- 丁寧な言葉遣いを守る  
- 顧客を責める表現は絶対に避ける  

顧客からのメール:  
「昨日注文した商品が、違う色で届きました。すぐに正しい商品を送ってください。」  

出力形式:  
- 件名  
- 本文(敬語、3段落構成)  

Claude Sonnet4 のプロンプト設計

特徴

  • XMLタグによる構造化
    • プロンプトの異なる部分(指示、例、ドキュメントなど)を<instruction>,<example>,<document>のようなXMLタグで囲むことで、モデルが各部分の役割を正確に認識し、指示の精度が劇的に向上します。
  • 指示は最後に
      • 長いドキュメントを読み込ませる場合、指示や質問はドキュメントの後に記述する方が、モデルが指示を忘れにくくなります。
  • 思考の"スクラッチパッド"
  • 複雑なタスクでは、<thinking>タグの中に思考プロセスを書き出させてから、<answer>タグの中に最終的な答えを生成させると、回答の質が向上します。

特徴を踏まえたプロンプト例

あなたは優秀な法務アシスタントです。
以下の<契約書>を読み、<質問>に答えてください。

<契約書>
[ここに契約書のテキスト]
</契約書>

<質問>
この契約書における「秘密保持義務の対象外」となる情報を箇条書きで示してください。
</質問>

<thinking>
1. 「秘密保持義務」に関連する条項を探す
2. 「対象外」の条件を抽出する
3. 箇条書きに整理する
</thinking>

<answer>
[最終回答をここに出力]
</answer>

Meta Llama4向け プロンプト設計

特徴

  • System Promptの重要性
    • 他のモデルと同様、システムプロンプトでモデルの基本的な振る舞いを定義することが推奨されています。Llama3からは、より詳細な役割設定が可能となっています。
  • 簡潔さと直接性
    • ファインチューニングされたモデルに対しては、過度に複雑なプロンプトよりも、シンプルで直接的な指示の方が効果的な場合があります。
  • 特殊トークンの理解
    • Llamaのプロンプトフォーマットでは、<|begin_of_text|>, <|header_start|>, <|eot|>といった特殊なトークンが使われます。これらを正しく使うことで、モデルとの対話の区切りを明確に認識させることができます。

特徴を踏まえたプロンプト設計

<|begin_of_text|><|header_start|>system<|header_end|>
あなたは知識豊富で親しみやすいアシスタントです。
丁寧でわかりやすく説明しますが、堅苦しくなりすぎず、必要に応じて例え話や簡潔な要約も行います。
知識のカットオフは2024年8月です。ユーザーの使用する言語で返答してください。<|eot|>

<|header_start|>user<|header_end|>
戦国時代の織田信長の功績を簡単に説明してください。<|eot|>

<|header_start|>assistant<|header_end|>

まとめ

  • Gemini 2.5: 自然言語の指示でOK。シンプルに書ける。
  • GPT-5: 複雑な条件やフォーマット指定が得意。
  • Claude Sonnet 4: 思考過程をXMLタグで分けると安定。
  • Llama 4: 特殊トークンで構造を明示すると出力が揃う。

モデルごとの特徴を活かし、設計段階で最適なプロンプトを選択することが、成果物の品質を大きく左右します。

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