👌

エンターテイメントの世界からエンジニアについて考える

2022/07/06に公開

僕はもともとプロマジシャンだったんですが、縁があってエンジニアの世界にお邪魔しています。
なので本棚には手品の書籍がぎっしり詰まっています。
そんな中で以前、マジシャンとエンジニアって意外と似てるよなぁと思ってふと本を手に取りました。
マキシマム・エンターテイメントという本で、マジシャンが一流のエンターテイメントを提供するための方法論が書かれた書籍です。
この中から引用しつつエンジニアとして成長する方法を考えてみようと思います。

素晴らしいマジックが多すぎる

マジックの話

世の中には多くのマジックが溢れています。
おそらく皆さんの想像を超えるペースで素晴らしい手品は考案され続けています。
素晴らしい手品が多く生まれているのに、専業や兼業のプロマジシャンの数はいつの時代もそう多くはありません。
なぜなんでしょうか。
これはピラミッドの上位のパフォーマーはより多くの経験を積んでいるし、積む機会に恵まれているからです。
何事も経験です。
ちなみにこんな言葉があります。

アマチュアは色々なネタを同じ観客に見せる、プロは同じネタを色々な観客に見せる。

プロは同じネタを演じ続けてブラッシュアップしていきます。
同じネタを何度も見せることで、そのネタの経験を積んでいくわけですね。

エンジニアの話

エンジニアも同様に経験が重要です。
僕も色々な技術に手を出したくなります。手を出したくなったら少し我慢です。
ゆっくり考えて、その技術が自分の伸ばしたい方向とあっているのか見定めましょう。
重要なのはブラッシュアップしていく対象をちゃんと絞るということです。
様々な分野に手を出しても、そこで得る経験をちゃんと自分の育てたいネタに還元するのが重要なんだと思います。
扱える言語の数は重要ではありません。
自身が見定めた方向に対してちゃんと経験が積み重なっているかを常に考えたいものです。

ビデオを撮ってみることの重要性

マジックの話

どんどん経験を積むことが大事なのはわかりました。
じゃあ経験を積む前にはどんな練習をしたらいいの?という話です。
マジシャンは自身の見ている世界と観客の見ている世界が完全に異なります。
なので「観客が目にするものを見る」ということが重要なのです。

ビデオを撮って、自分自身の演技を批判的に分析していかなければ、決して自分の潜在能力を最大限に引き出すことはできません。

マジシャンは自分自身の演技を批判的に、細かく分析する必要があります。
そして分析した結果に対して自身の演技をチューニングしていきます。
そうでなければ世の批評家からの見る目に耐えない演技となってしまうでしょう。

自分自身の演技をビデオに取る際の最も重要な点は、「同じビデオを繰り返し繰り返し見る」ということです。
1回見て、2回見て、5回見てとやっているうちはそれはまだ自分自身を見ているに過ぎません。
そういう段階を通り過ぎて初めて、そこで実際に起こっていることを...冷静...に見ることができるのです。

自分自身を客観視するためには繰り返し見る必要があります。文章の推敲に1日寝かすように、繰り返し時間をおきながら見るのです。
そうしていくことで主観を排除し見られるようになるのです。

エンジニアの話

自分自身の開発しているコードやサービスをセルフチェックしましょう。
1回ポッキリのセルフチェックに意味はそんなにありません。
全く信用できない赤の他人の書いたコードを注意深くレビューするように、自身の開発しているものの品質を客観視しましょう。

  • 昔犯した失敗を繰り返してませんか?
  • タイポは無いですか?
  • 作っている機能は本当に使いやすいですか?
  • 本当に届けたい価値を届けれていますか?

マジシャンほど繰り返しみる必要性があるかどうかわかりませんが、自身を批判的に分析するためには、飽きるほど繰り返し見るというのは意外と効果的です。

そんなのどうでもいい

手品の話

みなさんが歌を歌おうと、手先の技でコインを扱おうと、ジョークを言おうと、鳩を出現させようと、相手の心を読み取とろうと、ザディコ音楽を演奏しようと、観客にとってはどうでもいいのです。
(中略)
観客が見ているのは手品のネタではありません。
観客はみな、自分自身のことにしか興味が無いのです。楽しめればよいと思っているのです。その場で素敵な経験がしたいのです。

いかにすごい種の手品をしようと、人生をかけて練習した技法を使おうとそんなことはどうでもよいのです。
重要なのは観客を楽しまてくれる世界を作り出してくれるということを理解し、リラックスしたあとで初めて興味を持ってもらえるということです。
その「世界」を作るのはそのマジシャン本人にかできなないことで、それこそがエンターテイメントなのです。

エンジニアの話

手品の技法と同じく僕たちが扱っているソースコードや設計なんかの中身はユーザーから見えることはありません。
いかに美しい設計をしようとそんなことユーザーは一切興味がないのです。
重要なのは僕たちの作っているものが、意図した価値を届けれているかです。
それを使ったユーザーがその価値を実感できるか否かにかかっています。
もちろん美しい設計も、高度なアルゴリズムも重要です。
なぜなら価値を提供するベースになるものですから。
しかしながら僕たちは何のためにものづくりをしているのかを忘れてはいけません。
価値を提供できなければ、どんなに保守がしやすくても、どんなに高度な実装をしていてもだれも興味をもってくれません。
重要なのは自分が今届けたい価値がなんなのかを常に考えることなのでしょう。

まとめ

マキシマムエンターテイメントのほんの一部分だけ、ピックアップして書いてみました。
このあたりの話はたった5ページ程度で書かれているんですが、この本は全部で約300ページあるので内容がとても濃いんですね。
無理やり感のある部分もあったと思いますし、極端な部分もあると思います。
しかしながら別業種からでも成長できる手がかりのようなものはあるものだなと感じています。
他の節も引用したい部分が山ほどあるので、少しづつ小出しにしていきたいと思います。
(ちなみにこの記事は全く繰り返して見ていないのでクオリティは察してください)

GitHubで編集を提案

Discussion