リアルタイム処理を支える3つのアーキテクチャパターン
ストリーミング分析とは何か?
最も簡潔に言えば、新しいデータが到着するたびに分析ビューをリアルタイムで更新することです。
たとえば、あなたの Web サイトで 3 件の新しいセッションが始まったとします。
そのセッションイベントを収集し、セッション数を +3 更新する――これがストリーミング分析です。
ただし、これは単なる「トランザクション処理」ではありません。
単にイベントをテーブルへ挿入するだけなら、分析とは呼べません。
また、イベントを Kafka トピックへ送り、他のシステムにシンクさせるだけでも「分析」とは言えません。
分析ビューを更新しない限り、それはストリーミング分析ではないのです。
🚀 ストリーミング分析の 3 つの代表的パターン
ここでは、ストリーミング分析における代表的なアーキテクチャを 3 つ紹介します。
名称は筆者の独自定義ですが、各アプローチの特徴を明確に区別する助けになります。

🧩 1. マテリアライズドビュー・パターン
このパターンでは、マテリアライズドビューをサポートするクラウドデータウェアハウスを利用します。
代表的な例として、
が挙げられます。
イベントストリームはまず「Raw テーブル」に保存され、その上にマテリアライズドビューを構築します。
この方法は、次に紹介する 2 つのパターンよりレイテンシが高いと一般に言われますが、明確なベンチマーク結果はまだ多くありません。
とはいえ、構成の単純さ・クラウドネイティブ性が強みです。
⚙️ 2. ストリーミングエンジン・パターン
こちらはより従来型の ETL(Extract, Transform, Load)方式を採用します。
ストリーミングエンジンがソースからメッセージを消費し、リアルタイムでクエリを実行、結果を永続化テーブルに保存します。
代表的なエンジンには:
などがあります。
ただし、この方式には典型的な複雑さが伴います:
- ウォーターマーク(watermark)の管理
- 状態管理(state management)の難易度
- 無限クエリによるメモリ負荷
それでも、柔軟な制御性を求める場合には今でも選ばれるパターンです。
🪶 3. ストリーミングデータベース・パターン
このパターンは、レイテンシの点ではストリーミングエンジンと近接しつつ、開発体験を大幅に簡素化します。
代表的なストリーミングデータベースとしては、
これらの製品はストリームソースから直接データを読み込み、マテリアライズドビューをリアルタイムで更新できます。
さらに、クライアントは PostgreSQL と同じプロトコルでアクセスできるため、既存の SQL ツールとの互換性も高いです。
以下に、RisingWave に特化して少し補足します:
🧩 追加紹介:RisingWave の設計と強み
RisingWave は、クラウドネイティブな分散 SQL ストリーミングデータベースとして設計されており、リアルタイム処理と分析を統合的に扱うことを目指しています。
主な特長をいくつか挙げると:
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PostgreSQL プロトコル互換:既存の
psqlや PostgreSQL ドライバ、SQL ツールとそのまま連携可能。 -
分離されたコンピュート/ストレージ構成:計算層とデータ層を分離することで、スケーラビリティとコスト効率を両立。
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ACID 一貫性と Exactly-Once 処理:ストリーム処理でもデータ重複・欠落を回避し、整合性を保証。
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クラスタ構造:主要ノード構成は Serving Node(クエリ処理)、Streaming Node(ストリーム処理)、Meta Node(メタデータ管理)、Compactor Node(データ圧縮)。
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Ultra モード:金融取引やゲームなど超低遅延が求められる用途向けに、10〜100 ミリ秒レベルの遅延で稼働するモードを提供。
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柔軟な統合性:CDC 取り込み、スキーマ進化、バックフィリング(過去データの補填)、Iceberg 連携などをネイティブにサポート。
これらの機能により、RisingWave は従来型ストリーミング処理の複雑性を隠蔽しつつ、SQL ベースの開発体験を提供しています。
ETL や複雑なワークフローを最小限にしつつ、開発者が「分析ロジック」に集中できる環境を実現します。
🧠 まとめ:どのパターンを選ぶべきか?
| パターン | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| マテリアライズドビュー | シンプル・高レイテンシ | 集計頻度が低い分析 |
| ストリーミングエンジン | 柔軟だが管理負担大 | カスタム ETL が必要な場合 |
| ストリーミング DB | 一貫性とリアルタイム性 | 即時分析・ダッシュボード更新 |
リアルタイム分析を求めるなら、Streaming Database Pattern が最もモダンな選択肢です。
特に RisingWave のようなシステムは、複雑なストリーム処理を SQL レベルで完結させ、設計・実装・運用のすべてを可能な限りシンプルにしてくれます。
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