マイクロサービスの設計原則7選:疎結合・高凝集を実現する
最初に
※自分で調べてみたものなどを参考にして書いたりしています。
間違ったことを書いていましたら、大変申し訳ございません。
マイクロサービスアーキテクチャは、大規模なシステムを複数の小さなサービスに分割し、独立して開発・運用するための設計思想です。
しかし、単にサービスを分けるだけでは、すぐに「複雑でメンテナンス困難な分散モノリス」になってしまいます。
本記事では、マイクロサービスを“本来の形”で運用するための 設計原則7つ を紹介します。
特に「疎結合」と「高凝集」をキーワードに、アーキテクト視点で整理しました。
単一責任原則(Single Responsibility Principle)
各マイクロサービスは 「1つの明確な業務責任」 に集中する必要があります。
例えば、ユーザー管理、支払い処理、通知管理などを1つのサービスにまとめてはいけません。
❌ 悪い例:UserServiceが認証・通知・課金も担当している
✅ 良い例:AuthService / NotificationService / PaymentService に分割
判断基準
- 「サービス名に“and”が入る」なら分けた方がいい
- 「別チームでも独立開発できるか?」を基準にする
疎結合を保つ(Loose Coupling)
マイクロサービス間の依存関係を最小限にすることは、可用性とスケーラビリティの鍵です。
💡 ポイント
- 直接的なデータベース共有は避ける(サービスごとに独自のDBを持つ)
- APIやメッセージキューを介してのみ通信する
- 他サービスの内部構造を知る必要がない設計にする
🔄 通信方式の選び方
- 同期通信(HTTP/gRPC):即時応答が必要な処理(例:ログイン)
- 非同期通信(メッセージキュー):遅延してもよい通知・集計系(例:メール送信、イベント処理)
高凝集なサービス設計(High Cohesion)
疎結合だけではなく、サービス内部は凝集度を高く保つことが重要です。
つまり、「関連するロジックやデータ」を1つのサービス内に閉じ込めること。
💬 例:UserServiceは、ユーザー登録・更新・削除を全て自分で完結できるべき
凝集度が高いほど、他のサービスに依存せず、機能変更がローカルで完結します。
これにより、リリース速度と保守性が向上します。
独立したデプロイとスケール(Independent Deployability)
マイクロサービスの強みは「個別デプロイと個別スケーリング」にあります。
- トラフィックが多いサービス(例:検索API)は水平スケール
- 変更頻度の高いサービスは独自のCI/CDを設定
- 小さな修正をロールアウトする際も全体停止を避けられる
これを実現するためには、コンテナ化(Docker) と オーケストレーション(Kubernetes) が事実上の標準です。
明確な契約(API契約の明示化)
マイクロサービス間は「API契約(Interface Contract)」によって結ばれます。
この契約を明示的に管理しないと、変更のたびに通信エラーや仕様ずれが発生します。
💡 ベストプラクティス
- OpenAPI (Swagger) や gRPC の .proto ファイルで仕様を明示
- バージョニング(例:/api/v1/users)を明確に
- 破壊的変更は慎重に行う
API契約 = サービス間の「約束書」
仕様が曖昧なまま進めると、分散モノリスへの第一歩になります。
データの独立性(Database per Service)
マイクロサービス間で同じデータベースを共有するのはアンチパターンです。
各サービスが自分専用のデータストアを持つことで、
- スキーマ変更が他サービスに影響しない
- サービス単位で最適なDBを選べる(例:全文検索ならElasticsearch)
必要に応じて、「イベント駆動でデータ同期」や「CQRSパターン」を組み合わせると良いです。
観測性とフェイルセーフ設計(Observability & Resilience)
分散したシステムでは、障害は“想定内”です。
したがって、可視化と自己防衛の仕組みが欠かせません。
✅ 推奨プラクティス
- ログ集約:Elasticsearch + Kibana(もしくはCloudWatch)
- トレース管理:OpenTelemetryやJaegerでリクエスト経路を可視化
- フォールバック:Circuit Breaker パターン(例:Resilience4j)で連鎖障害を防ぐ
「どこで遅延しているか」「どのサービスが落ちたか」を即座に特定できる構成が理想。
まとめ
原則 | 目的 |
---|---|
1. 単一責任 | 役割を明確にする |
2. 疎結合 | 他サービスへの依存を減らす |
3. 高凝集 | 内部完結で保守性を上げる |
4. 独立デプロイ | 柔軟なスケールと更新 |
5. API契約 | 明確な通信ルール |
6. データ独立性 | スキーマ衝突を防ぐ |
7. 観測性 | 障害時にすぐ対応できる |
おわりに
マイクロサービスは「万能」ではありません。
むしろ、適切な設計原則とチーム体制がなければ、分散した混沌を生み出します。
まずは、
- 3〜5個の小さなサービスで構成
- 明確なAPI契約と責任範囲
- ログと監視の仕組み
を意識して設計するだけで、システムは格段に安定します。
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