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YANS2025 in 浜松 参加報告

に公開

はじめに

東京電機大学 M2 の石垣龍馬です。
2025年に開催された YANS 2025 に参加してきました。
この3日間は、自分の研究を見つめ直す時間であり、他人の視点を取り込む時間であり、そして新しい刺激に満ちた時間でした。
この記事では、ハッカソン・発表・交流・食事など、私が印象に残したことを交えて振り返ります。


YANSとは?

YANS(言語処理若手の会)は、自然言語処理・計算言語学・関連分野の研究と技術開発を促進することを目的としたシンポジウムです。
特に若手の研究者の交流を主軸に置いたシンポジウムになります。

  • 学術と産業をつなぐ架け橋になる
  • 研究成果の社会実装を奨励
  • 若手研究者・技術者の交流と成長を支援

といった特徴があります。

2025年版ではテーマが 「研究と実装をつなぐ自然言語処理」 とされ、
理論的要素だけでなく、実世界で動かせる技術・応用・システム設計を重視した発表やチュートリアルが多く組まれていました。
多くの発表で「どうやって実装制約(計算資源・効率・データ量)を乗り越えるか」が鍵になっていた印象があります。
音声や画像処理、人文・社会学など、NLP以外の分野からの参加も歓迎されていました。

また、YANS2025 のハッカソンは “LLM チューニング” をテーマに据えており、
算数タスクを題材とした学習データの作成や推論アルゴリズムの工夫などで競う内容でした。
SFT(教師あり学習)トラックと DPO(Direct Preference Optimization)トラックの二本立てで、参加者は事前にチーム割りされたうえで、短時間でモデル設計・開発・発表スライドの作成までこなす形式でした。
この「限られた時間」でどう戦略を立てるか、役割分担をどうするか、という組織・運用面でも学びがあります。
参加者は、16チーム(SFTトラック8チーム+DPOトラック8チーム)でした。

全体としては、発表件数や参加者が去年と比較し大幅に拡大しており、学生・企業・研究者それぞれの交流の場になっていました。


開催概要

  • 📍 場所: アクトシティ浜松
  • 👥 参加者数: 570人
    • 学生: 286人
    • 一般: 189人
    • スポンサー: 95人
  • 📝 発表件数: 257件
    • 学生: 202件
    • 一般: 55件

年々規模が拡大していて、今回も非常に盛況でした。


ハッカソン

タスクは「小学生レベルの算術(四則演算)問題を解けるモデル、答えは 0–1000 の整数」というもの。

  • 四則演算のみで解ける問題
  • 答えは 0〜1000の整数
  • アプローチは SFT(教師あり学習)か DPO(Direct Preference Optimization)

というシンプルながら奥深い設定で、かなり盛り上がりました。
制約の中で、どうデータを設計するか、どうチューニングパラメータを選ぶか、モデルを過学習させずに性能を引き上げるか…こういう判断の連続が続きました。
時間終了後、各チームは 3分発表 を行い、表彰に移るといったフォーマットでした。

私のチームでは、その発表を私が担当しました。
制限時間の中で、モデルの構成・工夫点・精度向上のプロセスを紹介しようとしたものの、緊張のあまり「えっと」「そのー」などのフィラーが多くなってしまいました。
別チームで参加していた同じ研究室のメンバーから、「内容はいいけど、発表中にフィラーが多いのがもったいない」と素直なフィードバックをもらいました。
その後、ありがたいことに私たちのチームは 「DPO部門 リーダーボード賞」 に選出され、本会議中の表彰チームによる再発表の機会をいただきました。
このときは、前回の指摘を意識して、話すテンポ・間の取り方・説明の順序を見直し、より落ち着いた発表を意識して臨みました。
結果的に「伝え方ひとつで印象が大きく変わる」ことを実感し、研究発表のスキル面でも大きな学びとなりました。
ハッカソンが単なる技術競技ではなく、研究者としての表現力やプレゼンテーション力を鍛える場でもあると感じました。

チームメンバーは他大学出身や研究室が異なる人たちで、最初はやや緊張感がありましたが、すぐにアイスブレイクとして お菓子・飲み物 が振る舞われ、場が和みました(バームクーヘン、飲料、軽食など)。
こうした「気軽な雰囲気作り」がハッカソンの時間を密度の濃いものにしてくれたと感じます。


発表と交流

本会議では、ポスター発表・スポンサーセッション・チュートリアル・招待講演・ラウンドテーブルなど多彩な企画がありました。
私自身もポスター発表を行いました。
ありがたいことに、過去の学会で顔を合わせた方などが聞きに来てくださり、
「単なる成果報告」ではなく、「この部分をこう改善したらどうか」「この仮説をこう検証してみたらどうか」という意見交換ができたのが非常に有意義でした。

発表を聞きに回る側としても、さまざまな研究テーマ・手法・応用の切り口を見ることができ、「NLP + 他分野」の掛け算のアイディアが生まれるきっかけになりました。
特にスポンサーブースでは、企業の視点から技術の応用例や制約(コスト、実用性、スケール制限など)を聞けたのが刺激的でした。

また、ラウンドテーブル(少人数グループでの対話形式セッション)では、「解釈可能性」や「企業研究者のキャリア」というテーマで議論しました。
まずは、分野ごとのラウンドテーブルが組まれ、同じような分野に興味がある人たちで話す議論はとても楽しかったことを覚えています。
次のラウンドテーブルでは、企業研究者としての働き方など、普段あまり話さないテーマも交えられたのがよかったです。

ナイトセッションという交流会もあり、立食形式で飲食を取りながら自由に席を移動して話す時間が設けられていました。
この時間こそ、本音で話せる場で、研究室や大学の枠を超えたつながりを生む機会になったと思います。


食事

学会といえば、地元グルメも楽しみの一つ。
私たちは、ハッカソン後、さわやかのハンバーグをメンバーとともに食べに行きました。
普段は研究室メンバーとしか話さないテーマも、この機会にゆるやかに語り合えたのがいい思い出です。
食事の場では自然と「研究」「理論」「未来のアイディア」の話題に飛び、議論がふくらみました。

また、夜のナイトセッションでも軽食(浜松餃子など)や飲み物が提供され、ポスターセッションで盛り上がった議論により少し疲れていた頭を休憩させるいい気分転換になりました。
こうした“食べ物を媒介としたゆるやかな交流”が、参加者同士の心理的距離を縮め、会話の壁を下げてくれたと思います。


豪華なスポンサー賞・景品

YANS2025では、スポンサー企業が用意した賞・景品がかなり立派で、見ていて驚きました。
企業とのつながり・産学交流の一端を感じさせる部分です。
たとえば、スポンサー賞の副賞として実用的なガジェットや技術書が用意されていた例もありました。

こうした景品は、単なる「おまけ」ではなく、受賞者にとってモチベーションを高める要因になると感じました。
景品の豪華さは、スポンサー側がこのシンポジウムに対して本気で支援している証左でもあると思います。


新しい視点・つながりを得た経験

私が特に嬉しかった点は、普段接点のない研究室・年代・領域の人たちと交流できたことです。
日常は同じ研究室・学年メンバーと議論することが多いですが、それとは異なる環境の方と話すと、思いもよらぬ発見が出てきます。

ご飯やナイトセッション、ハッカソン作業中など、リラックスした場面での雑談から、「あ、この発想いいな」と思えるアイディアが出たり、
自分の研究に対するフィードバックをもらったり、視野を拡げるきっかけを得られたのが大きな価値でした。

また、今回の発表・議論の中で、「自分の研究をこういう応用分野にも持っていけるかも」というアイディアが浮かび、今後の研究課題やフィードバックの方向性が具体的になったように感じています。


全体を振り返って・学びと今後

YANS2025は、単なる “発表会” 以上の意味を持つ場でした。
技術的な学び、発表のトレーニング、人とのつながり、刺激を受ける会話、そして自分の研究の再定義。
こうした要素が三位一体になって、「研究者として育つ時間」になったと思います。

もし次回参加するなら、積極的に話しかける勇気(発表会場だけでなく、ナイトセッション・ハッカソン・食事時間を有効活用),フィードバックを無視しない(もらったアドバイスをその場でメモする・後で振り返る),交流記録を残す(SNSで出会った人とつながっておく)といったことを意識したいと思います。

最後に、YANS2025 を通じて得たネットワークやアイデアを大切に、これからの研究や共同プロジェクトに活かしていきたいと思います。

交流をしてくださった皆さま、ならびに運営委員の皆さま、ありがとうございました。


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