アクセシビリティオーバーレイにいついて考える
初めに
「実務でアクセシビリティを担保したい。でも時間もリソースも足りない。」
そんなジレンマに直面したことはありませんか?
私自身、日々の業務の中でアクセシビリティに十分な工数を割くのが難しいと感じていました。
そこで注目したのが「アクセシビリティオーバーレイ」です。
果たしてアクセシビリティオーバーレイは本当に効果的なのでしょうか?
導入することで、ユーザー体験は本当に向上するのでしょうか?
今回は、この「アクセシビリティオーバーレイ」の有用性について掘り下げていきたいと思います。
サービス例
実際にアクセシビリティオーバーレイを提供しているサービスには以下のようなものがありました。
アクセシビリティオーバーレイで提供されている機能
実際にアクセシビリティオーバーレイで提供されている機能とその目的についてW3Cのガイドラインを参考に記載します。
コントラスト調整
知覚障害/色覚障害のある方が、テキストを読みやすくするために、コントラストを調整できるようにしています。
中程度の視力低下やコントラスト知覚障害のある人がテキストを読めるように、テキストと背景の間に十分なコントラストを提供する。
フォントサイズ変更
弱視の方などがテキストを読みやすくするために、フォントサイズを変更できるようにしています。
キャプションとテキスト画像を除き、テキストはコンテンツや機能を失うことなく、 支援技術なしで最大 200 パーセントまでサイズ変更
スクリーンリーダーのサポート
盲目の方などが、スクリーンリーダーを使用してコンテンツを読み上げることができるようにしています。
テキストの間隔調整
視覚障害のある方が、テキストを読みやすくするために、テキストの間隔を調整できるようにしています。
カーソルの拡大
カーソルを拡大することで、視覚障害のある方がカーソルを見つけやすくするための機能です。
メディアの非表示
画像や動画を非表示にする機能
失読症の方などの負荷を減らす目的がありそうです。
アクセシビリティオーバーレイに関する調査結果/見解
デジタル庁 ウェブアクセシビリティのガイドライン
その機能を必要とする人は、あらかじめ自分の環境として用意されている可能性が高いです。アクセシビリティ・オーバーレイの導入は、一般に使われている支援技術等でのウェブサイト利用を意識した、基本的なアクセシビリティの確保を行った上で、付加的なものとして検討されるのがよいでしょう
WebIAM アクセシビリティオーバーレイに関する調査結果
A strong majority (67%) of respondents rate these tools as not at all or not very effective. Respondents with disabilities were even less favorable with 72% rating them not at all or not very effective, and only 2.4% rating them as very effective.
以下翻訳
回答者の大多数(67%)が、これらのツールはまったく効果がないか、あまり効果がないと評価している。障がいのある回答者は、72%が「まったく効果がない」または「あまり効果がない」と評価し、「非常に効果がある」と評価したのはわずか2.4%で、さらに好意的ではなかった。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会の見解
これらのプラグインやソフトウェアで実現できると謳われている機能は、OSの支援技術、アプリの支援技術、ブラウザの機能拡張で実現可能な機能が多いため、必要な機能に限定して使いましょう。
まとめるとアクセシビリティオーバーレイはあまり効果的ではないという意見が多いようです。
前述したようなオーバーレイで提供されている機能はOSやブラウザなどであらかじめ設定できるものが多く、これらを必要としている人はすでに設定している可能性が高いとのことでした。
また、オーバーレイはjavascriptでのdom操作によって実現されているため、HTMLの構造に起因するスクリンリーダーの読み上げ順序やメディアの代替テキストなどはオーバーレイでは解決できません。
まとめ
アクセシビリティオーバーレイは、あくまで補助的なものであり、基本的にはOSやブラウザの機能を活用することが推奨されています。
よく考えれば当然のことですが、普段OSやブラウザを活用して対応しているのに特定のサイトでだけオーバーレイを使用すると言うのも違和感がありますね..
アクセシビリティの確保をすることで誰のために、どういった場面で役に立っていくのか、しっかりと考慮していく必要があると思います。
どこまで対応するかをしっかりと定めて各々が支援技術を適切に活用できるよう心がけていきましょう
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