ワシントン大学Steve Brunton先生の確率・統計講座ー第1回ー講座概観
こんにちは、あるいはこんばんは。
今日は、ワシントン大学のSteve Brunton先生による確率・統計講座の概要をご紹介します。
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以下は初回のオーバービューです。
本記事では、確率と統計の基礎的な概観を行います。ここで扱う概念は、科学・工学分野はもちろん、ビジネス分析、機械学習、そしてデータサイエンスにおいても欠かせない土台となる考え方です。確率と統計が何を目的とし、どのような問題を扱うのかを把握することで、今後より高度なトピックへのスムーズな理解と応用が可能になります。
確率(Probability)と統計(Statistics)の違い
• 確率(Probability):
確率理論では、ある仮定された確率分布(モデル)が既知であると想定します。その上で、「この分布からどのようなサンプル(観測値)が得られるか」という未知性に焦点をあてます。
例:サイコロを振れば1~6の目が等確率で出現する、正規分布に従うデータサンプルが観測される、といった状況です。
• 統計(Statistics):
統計学では、手元に具体的なデータ(サンプル)は存在しますが、それらが従う確率分布(モデル)は未知です。ここでの課題は、この未知分布の特性をデータから推定したり、仮説を検定したりすることにあります。
例:観測データから母集団平均や分散を推定する、特定の仮説(母平均がある値に等しいかなど)をデータを用いて判断する、といった分析がこれに該当します。
確率論で扱う主なトピック
1. 確率の基礎概念:
サンプル空間、事象、確率測度といった基礎用語から、頻度解釈やベイズ的解釈など、確率を理解するさまざまな視点があります。
2. 確率変数と分布:
ベルヌーイ分布、二項分布、正規分布、ポアソン分布など、確率変数に対する多様な分布モデルを学ぶことで、不確実性を定量的に扱えるようになります。
3. 期待値・分散などの指標:
確率分布を特徴づける統計量(平均、分散、標準偏差、中央値など)を理解することで、データや不確実性を定量的に把握できます。
統計学で扱う主なトピック
1. データからの推定:
未知分布を特徴づけるパラメータ(平均、分散、確率分布のパラメータなど)をデータから求めます。最大尤度推定(ML)などの手法がここで登場します。
2. 仮説検定と推測統計:
観測データを用いて、ある仮説(帰無仮説)が成立するかどうかを検証します。サンプルサイズや分布を踏まえた統計的検定によって、データに基づく結論を導きます。
3. サンプリング:
母集団全体を観察できない場合、標本を抽出して母集団特性を推定するプロセスが重要となります。サンプルサイズや抽出方法は、推定の精度やバイアスに大きな影響を与えます。
中心極限定理 (Central Limit Theorem, CLT)
中心極限定理は、統計学・確率論において非常に重要な定理です。
要点:「独立同分布(i.i.d.)な確率変数からの十分に大きなサンプルサイズの平均は、元の分布の種類に依らず、正規分布へと近似できる」というものです。
この性質のおかげで、私たちは多くの現実的な問題において、サンプル平均などの統計量を正規分布で近似し、推定や予測を行うことが可能となります。
応用例
• ガス分子の運動・温度特性
• 乱流現象の統計的モデル
• 計測誤差(ガウシアンノイズ)のモデル化
• カルマンフィルタによる状態推定
• 天候予測やカオス的システムへの確率モデル適用
• 行動経済学や社会科学での人間行動モデリング
まとめ
確率と統計は、「モデル(分布)がわかっているが結果が未知」の場合に用いる確率的アプローチと、「観測データは手元にあるがモデル自体が未知」という状況で用いる統計的アプローチという、異なる角度から不確実性に挑む学問領域です。
本記事で取り上げた基礎的な概観は、今後より詳細な理論や手法、ベイズ統計や機械学習手法への入り口となります。これらのコンセプトを押さえることで、データ分析能力を着実に高めるための一歩を踏み出すことができるでしょう。
次回以降は、この講義を順次まとめていきます。実践的なデータ解析やモデル構築に役立つ強固な基礎力へと繋がることを願っています。
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