Devin AI導入所感:開発・運用業務の自動化による効率化への第一歩
はじめに
開発・運用業務における人的負荷の軽減と効率化を目的としたDevin AI導入の取り組みについて何回かに分けて紹介していきたいと思います。
本記事では、実際の導入プロセスと設定項目について画面付きで詳しく解説します。
*本記事は2025年7月時点の情報に基づいています。Devinの機能は継続的にアップデートされているため、最新情報は公式ドキュメントをご確認ください。
社内のAI活用の背景
社内の開発チームでは複数の課題に直面していました。
- 本番アラートの深夜対応が頻発:システムの稼働が不安定になり、エンジニアの負担が大幅に増加
- 改善・修正要望の山積:対応が追いつかない状況が継続
- 属人化の進行:担当サービスが多岐にわたる中で、特定のメンバーに依存する体制
このような状況を受け、AIを活用して以下の領域での自動化・省力化を図れないか検証を進めることが決定しました。
- アラート対応の初動自動化
- 問い合わせ対応の効率化
- ドキュメント整理と属人化解消
- その他の運用作業
また、社内的にはGitHub CopilotやCursor、Claude Code等も活用が進んでいますが、どれが良いか評価中の段階です。
Claude Codeがいい感じそうなので私も試したいところではありますが、他のメンバーにお任せして私はDevinに集中しています。
本記事の狙いと対象読者
- Devin導入を検討している開発チーム
- 設定を、実際の画面とともに解説
- 導入時の注意点と運用のコツを共有
Devinとは
Cognition社が開発した自立型AIソフトウェアエンジニアです。
Devinは、コードのリファクタリング、バックログに入る前の小さなバグやユーザー リクエストの処理、PR のレビュー、単体テストの作成、バグの再現、社内ツールの構築など、さまざまな業務を行うことができます。
他のエージェント型のAIと比べると以下のような違いがあるかと思います。
Devin:コンソールおよびSlackからのチャットベースによる指示
Claude Code:CLIによるコマンド実行
GitHub Copilot Agent:エディタによる作業指示
料金プラン
Core、Team、Enterpriseの3種類
Devinへの基本的な指示や学習機能、Wikiなどはプラン共通で利用可能。
項目 | Core プラン | Team プラン | Enterprise プラン |
---|---|---|---|
月額料金 | $20 / 月 ~(従量課金) | $500 / 月 | 個別見積もり |
含まれる ACU | なし | 月 250 ACU | ACU数は契約に応じて調整 |
ACU 単価 | $2.25 / ACU | 約 $2.00 / ACU(11% 割引) | 契約内容により変動 |
同時実行セッション数 | 最大 10 | 無制限 | 無制限 |
ユーザー数 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
API 利用 | – | 利用可能 | 利用可能 |
Slack / GitHub 連携 | – | 対応 | 対応 |
プライベートクラウドデプロイ | - | - | 対応 |
SAML/OIDC SSO | - | - | 対応 |
チームスペースの分離 | - | - | 対応 |
主な用途 | 個人利用・試用向け | 小〜中規模チーム向け | 大規模組織・高度な要件対応 |
やや料金プランが分かりづらいですが、
Coreプラン:単純に従量課金で月々最低20ドルから
Teamプラン:月額500ドルで250ACUが提供。使い切った場合はセッションが停止。翌月まで待つか、追加でACU購入することで利用再開
CoreプランではACUが全然足りないという事前情報があったため、効果検証する上で必要最低限のプランがTeamプランだと判断しました。
また、Teamプランからは下記のような機能が使えるのも良い点です。
- Slack連携
- プルリクエストのコメントに対して自動応答
- APIが使える
※実際に利用した実測値としては、1日頻繁にDevinとやり取りすると、1人で50ACU以上使うこともありました。
導入
Get started
Sign Up
アカウント作成、認証コード入力
GitHub連携の設定
※GitHubかGitLabに接続必須
以降
GitHubアカウントとの連携承認
対象リポジトリの選択
求められるGitHubの権限
Read
- Dependabot alerts
- actions
- checks
- commit statuses
- deployments
- members
- metadata
- packages
- pages
- repository advisories
- repository hooks
- repository projects
Read and write
- code
- discussions
- issues
- pull requests
- workflows
プラン選択
※画像ではACU減少時の自動購入をオンにしてますが、オフにして申し込みました。
1か月触った感触としては最初から自動購入オンでも問題ないと感じています。
Devinのコンソール
サブスクリプションの登録が完了するとDevinのコンソールが表示されます。
最初にしておくべき設定
早速Devinに色々お願いしたいところですが、その前に最低限設定しておいた方がよいと思う設定について紹介します。
日本語で応答するように指示(ナレッジ)を追加
- 場所: Devin's Resources > Knowledge
- 設定理由: デフォルトでは英語で応答するため
- 設定方法: 新しくナレッジを追加し、以下のプロンプトを設定
- ユーザーへの確認や質問は必ず日本語で行うこと。徹底して日本語でのコミュニケーションを維持する。
最初から定義されているSystem knowledge
は編集できないため、新しくナレッジを追加する必要があります。
モデル学習へのデータ利用
- 場所: Organization Settings > General
以下2つ。チェックオフで良いと思います。
- Devinを評価する: Devinの成長を測る評価を作成するために、あなたのデータを使用することを許可してください。これを有効にすると、あなたのデータは評価目的のみに使用され、トレーニングには使用されません。
- Devinをもっと賢くする: あなたのデータがDevinのトレーニングや改善に使用されることを許可します。これが無効の場合、Devinのモデルを訓練するために、入力と出力を含め、あなたのデータは一切使用されません。
追加クレジットの支払い設定
- 場所: Billing > Usage & Limits
「Configure Auto-Reload Settings」でACUが不足したら自動的に追加で購入されるようになります。
私たちが導入した際には設定せずに進めましたので追加購入の設定を行う必要がありましたが、
プラン申し込み時にクレジットカード情報を入力時に追加購入の設定はできそうでした。
普段使いでDevinを使用するとTeamプランの250ACUでも簡単に使い切ります。
必要になってから設定すれば良いと考えて、いざ必要な際に決裁者が捕まらず待ちにならないよう先に設定しておくのが良いでしょう。
UIと言語対応
コンソールは英語のみ対応
ブラウザ翻訳は可能ですが、翻訳状態で他メニューのリンクをクリックするとエラー発生率が高い
設定変更等は翻訳を解除して実施することを推奨
チャット欄のオプション
他の生成AI同様チャット欄に指示を出すことでDevinが考えて行動してくれます。
チャット欄の下部には設定項目がいくつかあります。
左側:
- @:リポジトリやファイル、プレイブックなどを指定可能です。
- ファイル添付
- リポジトリの選択
- Devinのモード選択(Agent、Deep Agent、Ask)
右側:
- Improve Prompt(プロンプト改善)
- 送信するSlackチャンネルの指定
プロンプトの改善機能がチャット欄の近くにあるのは良いですね。
プロンプト改善を実施すると改善されたプロンプトが英語で再設定されます。
英語の方が精度は上がりそうですが、(私の)可読性が下がります。
Devinの設定メニュー
Devinの設定メニューは以下のようになっています。
所々Devin's~~となっているのがほかのサービスにはないメニュー名だなと思います。
人っぽさを醸し出してると思うのは私だけでしょうか?
- Devin's Resources(Devinのリソース)
- Knowledge(ナレッジ)
- Playbooks(プレイブック)
- Secrets(シークレット)
- Devin's Settings(Devinの設定)
- Repositories(リポジトリ)
- Devin's Machine(Devinのマシン)
- Customization(カスタマイズ)
- Organization Settings(組織の設定)
- General(一般)
- Members(メンバー)
- Devin's API(DevinのAPI)
- Integrations(統合)
- MCP Marketplace(MCPマーケットプレイス)
- Billing(請求)
- Plans(プラン)
- Invoices(請求書)
- Usage & Limits(使用状況・制限)
- Referrals(紹介)
- Metrics(メトリクス)
- Pull Requests(プルリクエスト)
- Productivity(貢献度)
- Account Settings(アカウント設定)
次にDevinのメニューについて掘り下げて紹介したいと思います。
Devin's Resources(Devinのリソース)
Knowledge(ナレッジ)
Devinの振る舞いを調整するプロンプトを設定できます。
System knowledge
は最初から登録されており、編集不可となっています。無効にはできるため、自分たちのプロンプトが育ってきたら無効にするのもありかと思います。
Auto Organize: 作成したナレッジを整理整頓する機能のようです。
Playbooks(プレイブック)
- 開発作業のテンプレート集
- 繰り返し作業のパターン化に活用
運用等での調査タスクなどをうまく定義出来れば使い勝手がよさそうだと感じました。
Secrets(シークレット)
Devinが扱える秘密情報を管理する機能
キーの作成方法はGitHub等のシークレット作成と同じような形式なので特に問題なく操作できます。
Redacted
のトグルをオンオフでシークレットに設定した値をコンソールから見れるかどうかを設定可能。トグルがオンでマスクされます。
⚠️ 重要な注意点:
- 作成後の編集はメンバー権限では不可。管理者権限の場合、編集可能。
- 新規作成したSecretsは新しいセッションでのみ有効
- セッション作成前に必要なSecretsを準備
タイプ別使い分け
タイプ | 用途 | 設定例 |
---|---|---|
Raw Secret | 単一の秘密情報 | GitHub Token, API Key |
Key-Value | 複数の関連情報をセット管理 | 環境別設定値、複数リポジトリの認証情報 |
One-Time Password(TOTP) | 2FA認証 | Google Authenticator等のワンタイムパスワード |
Cookie(BETA) | ブラウザセッション情報 | Webアプリケーションの認証状態 |
複数人がチーム単位で利用することを想定すると、Key-Valueタイプが使い勝手が良いと感じました。
Nameをサービス名として、サービスに必要な情報をKey-Valueの配列として管理できるため、シークレットの管理が煩雑にならないと思います。
「SERVICE_NAME.API_KEY
を使ってAPIアクセスして」のような指示の仕方が可能になります。
Devin's Settings(Devinの設定)
Repositories(リポジトリ)
Devinに許可を与えているリポジトリの一覧
一覧で確認ができるだけで追加・削除等はGitHubの統合から実施します。
Devin's Machine(Devinのマシン)
Devinが機能修正等行う際の開発環境を定義して保管できます。
OSはUbuntu 22.04(x86_64)となっています。
最終的には開発環境構築のためのコマンド集を作るのが目的。
大きく縦に3つペインが分かれています。
左側は環境構築の手順がセクション毎に分かれており、それぞれに必要なコマンドを追加編集していくことで環境を構築できるようになります。
Dockerfileにまとまっている場合はRUNコマンドなどで実行しているコマンドを設定すればよいでしょう。
真ん中はチャットのやり取りを行うことで構築手順を作っていくことが可能です。
右側は開発環境に接続されたターミナルであり、真ん中のチャットでのやり取りで承認したコマンドが実行されます。自分でコマンドを入力して実行することができます。
AIエージェントの開発環境の構築はOpenAIのCodexやGoogleのJulesも似たような機能がありましたが、Devinはチャットしながら環境構築用のコマンドを定義していくのは体験としてよかったです。
Customization(カスタマイズ)
Devinの挙動をある程度制御する設定
ユーザ設定
タスクの承認を待たずに作業を進める:デフォルトOn
Gitコミットオーサリング:Gitコミットの作成者をどうするか。
デフォルト:Devin+ユーザの共著
設定可能な値:Devin+ユーザ、Devinのみ、ユーザのみ
共著の場合、見た目的にはDevinがコミッターになっていますが、Git log上Co-Authored-By
としてセッションを開始したユーザのGitHubアカウントが設定されています。
チーム設定
※チーム設定はメンバー権限では設定変更不可となっており、管理者権限のみ変更可能。
トグルについてはデフォルトではすべて無効なので必要に応じて有効にしましょう。
-
PRコメントと通知でDevinの提案を共有する:
有効にすると、PRコメントやSlackのPRマージ通知に元のプロンプトを含める。 -
既存のSlackスレッドに返信する:
有効にすると、Devin は新しいスレッドを作成するのではなく、メンションされた同じスレッドで返信します。注: 既存のスレッドにメッセージを送信すると、Devin が起動します。 -
古い Devin の PR を自動クローズする:
数日間アクティビティがない場合、Devin がマージされていない PR を閉じるかどうかを設定します。
デフォルト:7日後
設定可能な値:3日後、7日後、30日後、閉じない
こちらは運用方針次第ではあると思いますが、一旦閉じない設定にしています。オートメーションが進んで人が介入せずにPRが出てくるようになってくると活きてくる設定だと思います。
Devinについて言及しているPRコメントにのみ返信してください:
有効にすると、Devinは明示的に「DevinAI」(大文字と小文字を区別しません)で始まるPRコメントのみを処理します。無効にすると、DevinはすべてのPRコメントを処理します(asideとしてマークされていない限り)。
レビュアーとして活用する予定が無い場合は有効にしておくことで不必要にDevinが起動しなくなります。
PR のレビュー担当者としてユーザーを自動追加する:
有効にすると、Devin はプル リクエストを作成するときにユーザーをレビュー担当者として自動的に追加します。
こちらは検証中ですが、Devin自身が作ったPRについてはレビュー担当者として追加はされません。
オープンPRとして:
PRをDevinとして開くか、ユーザーの名前で開くかを選択します。
デフォルト:Devin
選択可能な値:Devin、ユーザ
管理者のみにナレッジ提案を有効にする:
有効にすると、管理者のみがナレッジ提案を承認できるようになります。
ナレッジ提案とは、Devinとのやり取りの中でこちらの指示を自動的に評価してナレッジとして追加するかを提案してくれる機能です。
ナレッジ提案自体は良い機能なので活用していきたいです。
何度か提案されましたが、提案内容が個別具体の事象であり、ナレッジ化するのが微妙なので、現状採用するに至っていません。
デフォルトモード:
新しいDevinセッションのデフォルトモードを設定します。高速モードは小規模から中規模のチケットに最適化されており、ディープモードは複雑な命令の追跡や、8つ以上のファイルに同じ命令を適用するタスクに優れています。
デフォルト:Fast
設定可能な値:Fast、Deep
Organization Settings(組織設定)
General(一般設定)
Organization Name(組織設定)
組織名を変更できます。
Evaluate Devin(デビンを評価する)
Devinの成長を測る評価を作成するために、データ使用の許可設定。
有効にすると、データは評価目的に使用されます。トレーニングには使用されません。
Make Devin Smarter(デビンをもっと賢くする)
データをDevinの学習と改善に使用することの許可設定。
無効な場合、Devinのモデル学習に使用されません。
Organization Members(メンバー管理)
Devinを操作可能なメンバーの一覧とメンバー追加、メンバーの権限変更が行えます。
- メンバーの権限は「管理者」か「メンバー」
- メンバー招待は管理者だけでなく、一般メンバーでも実行可能(その場合、権限はメンバーに限定)
Devin's API
DevinをAPI利用する場合のAPIキーの発行とその管理ページ
APIキーは1つしか作れず、目的別にAPIキーを分けて利用することは現状できない。
Integrations(外部サービス連携)
Devinが標準で連携可能にしているサービスの一覧です。
各サービス毎に接続する対象を追加・削除が可能。
- GitHub/GitLab(必須統合)
- Slack
- Linear/Jira(タスク管理)
MCP Marketplace(MCPマーケットプレイス)
つい最近追加されました。
Devinが使えるMCPをマーケットプレイスから選択して統合できます。
Billing(請求)
Plans(プラン)
プランの一覧
ACUの追加購入等の設定もここから可能。
このページはメンバー権限の場合、参照不可
Invoices(請求書)
請求書が確認できます。
Stripeが使われてます。
このページはメンバー権限の場合、参照不可
Usage & Limits(使用状況・制限)
Overview
トータルの使用状況が確認可能
検証している身としては、日ごとの使用量も確認したいので改善してほしいポイントです。
Session Limit
1セッションあたりのACU使用量を設定できます。
デフォルトは5
長時間セッションではDevinのパフォーマンスが低下するため、セッションACU制限を5以上に設定することは推奨されていません。
Usage History
各セッションの作成日と使用ACUが確認できる一覧です。
各セッションのリンクから該当セッションへ直接アクセス可能
Referrals(紹介)
紹介用のリンクとそれによって獲得したACUが確認可能です。
Metrics(メトリクス)
Pull Requests(プルリクエスト)
- セッションとPR作成状況の一覧表示
- リンクから該当セッション/PRへ直接アクセス可能
Productivity(生産性)
今のところ、単位期間あたりDevinのマージ済みPR数のみが確認可能
却下してクローズした数が反映されないのでイマイチですが参考程度に1つの指標として使えるとは思います。
今後に期待。
Account Settings(アカウント設定)
Profile(プロフィール)
- 自身のアイコン変更
- Gitコミット時のメアド切り替え
- 個人メアドの追加・削除
- Devinコンソールで表示される名称の変更
- デスクトップ通知のオン/オフ
- Slack通知のオン/オフ
Support(サポート)
メッセージベースだけでなく、電話やSlackでのサポートも必要に応じてできるようです。
参考リンク
まとめ
Devin導入のプロセスと設定を紹介しました。
-
導入プランの選定理由
- 複数人での利用想定のため、Slack連携・API機能が備わるTeamプランを選択
- Coreプラン(従量課金)では、利用想定に対してACU不足
- 実際に利用してみても、Teamプランの250ACUはあっという間に使い切ってしまう印象
-
導入時に最低限設定すべきポイント
- 日本語応答用のナレッジ追加(デフォルトは英語)
- モデル学習へのデータ利用許可設定をオフにする(プライバシー確保)
- ACU不足時の自動課金設定を行っておく(ACU枯渇時の利用停止を回避)
-
利用上の注意事項・気づき
- コンソールが英語表記のみ。ブラウザ翻訳を使うとエラーが出やすいため、設定変更時は翻訳をオフにすることを推奨
- セッションが長引くとACU制限(デフォルト5)が原因で精度が低下することがあるため、運用ルールの整備が必要
* 「プロンプトの改善機能」は便利だが、英語化されるため可読性が落ちる点が気になった
* Secrets機能は複数チームの利用を考えると「Key-Value型」が便利そう
* Metrics機能は、AI導入前後での効果測定として情報が欲しいので今後の改善に期待
次回予告
次回はDevin活用の実践編として、効果的なプロンプトテンプレート作成と検証結果をお届けできればと思います。
Discussion