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ObsidianでPKMを始める

2025/01/11に公開

PKM (Personal Knowledge Management) とは日々の生活で個人が得た知識・知見を管理・活用するプロセスのことです.自分のPKMについて見直すにあたって,近年PKMツールとして注目を集めているObsidianを使い始めました.

私の知識管理

私は個人開発や自己研鑽の勉強,日々の業務のなかで得られた情報・知識をテキストとして書き残しています.人間の記憶容量には限りがあり,学んだこともいつかは忘れてしまします.(忘れなければ脳がパンクして新しいことを学べません...)そこでノートに知識を書き出し外部記憶装置に貯蔵しておくことで,脳だけでは処理できない情報を扱えるようにしています.

また情報をテキストに書き出すことは,インプット・アウトプットによる知識の理解・整理・定着を促します.情報を自分のものにするため,学んだことを自分の知識で再解釈し,自分の言葉でテキストに書き出して,自分の中にあるほかの情報との関連付けを行いながら理解を深めていきます.

これまで私は書き出した知識や情報をマークダウンに書き出して管理していました.手順書などのメモは1ファイルにまとめて書いて管理をしていましたが,ソフトウェア開発やマネジメントの用語のメモに関しては,1つのファイルにまとめていたり,別々のファイルに分かれていたりして検索性があまりよくありませんでした.

また,情報の紐づきから知識の探索・整理を行いたかったので,Wikipediaのような特定の単語のリンクからその語について記載したメモを飛ぶような構成を作ろうとしていました.しかしマークダウンのリンクはただのテキストなので,ファイル名の編集や移動などによってリンク切れを起こしやすく,情報のネットワークが気づかないうちに切れてしまうということがよく起こりました.

ツールの探索

マークダウンだけでは知識・情報の管理に限界を感じたため,PKMツールの導入を検討しました.
導入候補として仕事でも使用しているOneNote,同僚に薦められたNotion,Webで検索したときにたびたびたどり着くConsenseを調べていました.

OneNote

仕事では会社がOffice 365を契約している関係で,使用が奨励されているOneNoteで業務手順や会議メモを取っています.また私はWindowsユーザーなので,個人で使用しているPCにはデフォルトでOneNoteが入っています.

https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/onenote/digital-note-taking-app

Microsoft製のアプリなのでWindowsで使用するには導入コストが低いです.さらに同じくMicrosoftが提供しているOneDriveによるクラウド管理がOSの機能として利用できるため,データのバックアップも簡単にできます.また日々業務で使用しているので,新たに使い方の学習コストもありません.

一方,普段から使っているだけあり,自分にとって物足りないところをよく知っています.良くも悪くもWordのように文字装飾やリスト,節タイトルなどをリボンのボタンを押して切り替える必要があり,そこそこ見栄えの良いページにするだけでも操作が煩雑になってしまいます.また,リンクはハイパーリンクを張り付けるため,リンク先のページが移動したときにリンク切れを起こしやすくなっています.

Notion

仕事の同僚は会社からの薦めをよそに,Notionを使って業務メモの管理をしていました.彼はモバイルアプリのエンジニアで,アプリのデザインなども担当しているためFigmaを使用しています.Figmaとメモを連携するなどして,Notionを活用しているとのことでした.

https://www.notion.com/ja

Notionはページをマークダウン記法で記述することができるため,簡単なキーワードを入力するだけで節やリスト,テーブルを記述することができます.またページのリンクについて,現在のページにリンクしているページを列挙するバックリンク機能が備わっています.関連する情報をリンクでたどることをしたいので,この機能は非常に魅力的です.

Notionの導入は前向きに検討したのですが,オンライン環境でしか利用できないという点が問題でした.Notionはデータをサーバー上に保持しています.そのためオフライン環境ではサーバーにアクセスできず,ページ編集ができません.私は勉強会に参加したときのメモも管理したくて,オフライン環境で動作できるものを探していたので,今回は導入を見送りました.

Cosense

Webで用語を検索するときに,時たま個人の方が書かれたScrapboxのメモにたどり着くことがありました.調べてみると,いつの間にかScrapboxからCosenseという名前に変わっていました.

https://scrapbox.io/

CosenseはWikiのように,1トピック1メモで記載し,単語に対して別のメモのリンクをつなげて知識を管理することができます.またバックリンク機能も備えており,こちらも知識のつながりをネットワークとして表現するには相性のいいサービスです.個人利用者の場合は無料で使用できます.

自分のイメージするPKMはCosenseのような使い方が基本だったので,導入後の運用がイメージしやすかったのですが,こちらもオンラインでの利用が前提であったため,今回の選択肢からは外れました.

Obsidianという選択

Obsidianは私が参加したオンラインLT会で,発表者の方がおすすめのPKMツールとして紹介されて知りました.また後日仕事でオンライン会議をしたとき,相手先が画面共有したさいにデスクトップ上にアイコンが見えたりしていて,少し気になっているツールでした.

https://obsidian.md

ObsidianはWebで検索するとよくNotionからの移行記事が出てくるように,Notionに近い機能を持ちます.

Obsidianのノートはマークダウン表記で記入します.そのため簡単なテキスト表現でリストなどを作成することができます.見栄えをカスタマイズしたいときはカスタムCSSを定義することで好みのスタイルに変更することができます.

Obsidianではリンクによってノートのつながりを表現でき,知識・情報のネットワークを構築できます.リンク同士のつながりはObsidianのグラフビュー機能で確認でき,情報の関連性を視覚的に確認できます.またバックリンク機能も備わっているため,関連する情報をさかのぼって探索することも可能です.リンク切れ問題への対処として,Obsidianはファイル名を変更するとほかのノートに記載されてるリンクも自動で更新されます.

グラフビュー
グラフビュー

ObsidianのノートはVaultという保管庫内で管理されます.Vaultはローカル環境に存在しているため,オフライン環境下でもノートの編集が可能です.ノートを他のデバイスと共有したいときは,VaultをOneDriveなどの管理下に置いたり,Gitで管理することで可能です.有料ですが,公式が提供しているObsidian Syncを使ってノートを共有することもできます.

Notionのようにマークダウンでメモが取れ,リンク機能が充実しており,かつオフラインでも利用可能であることから,Obsidianの導入を決めました.

現状

いくつかWebに書かれているObsidianの使い方の記事を参考にしながら,1か月程度Obsidianを使っています.最初はノートの管理の仕方など新しい考えに慣れる必要がありましたが,今のところおおむね満足して使っています.

https://zenn.dev/game8_blog/articles/0e50c36cd63b98

運用方針として,1ノート1情報・1トピックの作成を心掛けています.1ノートに複数の情報を書くと,ノートの分量が多くなってしまい何が書かれているノートなのかすぐには判断できなくなります.1つのノートの分量はできれば10行程度にとどめておき,そこから関連する情報は別ノートに分割して,リンクで紐づけを行っています.情報をアクセスするときは,ページ中のリンクをたどったり,グラフビューを眺めてノートを開いたり,文字列検索を使ったりしています.

ノートの例
ノートの例

例外でCopilotとの対話のログは1ノートにしています.自分の中でぼんやりとしたアイディアがあるとき,私はCopilotとやり取りをして考えを整理します.このやり取りは対話の流れ自体が一種の情報のようなもので,情報を分割するのが難しいため,やり取りをそのままテキストにエクスポートして1ノートにしています.ほかのノートとは関連する用語をリンク付けすることで,情報の紐づけをしています.

対話ノートの例
対話ノートの例

1つの情報をメモすると,関連する情報について深掘りしていく性格なので,ノートのリンクによって知識のネットワークが広がっていく様を感じられるのがPKMの体験としてとても良いです.

Obsidianにはフォルダー分けやタグ付けの機能もありますが,今はあまり使っていません.最初のころは関連する情報をフォルダーなどでグルーピングしていましたが,すぐにこうもり問題にぶち当たりました.情報は複数の異なる性質の情報に関連付くので,フォルダーのように厳密にカテゴリーで分類するよりも,リンクによるネットワークで紐づけたほうが管理しやすいと感じています.補助的に弱いカテゴリー分けの役割として,MOC (Map of Content) を使っています.

https://pouhon.net/obsidian-folders/7244/
https://kajiri.dev/obsidian-moc-usage-2021

コミュニティプラグインは主にテンプレート生成のためのTemplaterとフォーマッターのObsidian Linterを使っています.情報のつながりを可視化するプラグインも色々あるようなので,慣れてきたら色々試してみたいです.

複数デバイス間で情報の共有するため,ObsidianのVaultはOneDriveで管理しています.コードの履歴管理というより情報を書き残して共有することが目的なので,Gitではなくクラウドストレージサービスを使いました.メインPCがWindowsなのでOneDriveフォルダーにVaultを配置しておき,メイン機とサブ機でドライブを同期させておくことで複数デバイスで編集・閲覧をできるようにしています.

これまでの個人のPKMの問題はObsidianで解決できそうです.ただ,業務で使用しているPCは私用アカウントとの紐づけを禁じられているため,業務で知りえた情報については別にPKMをする必要があます.これはObsidianの問題ではないので仕方ないのですが,どうしても知識の一元管理はできないのが今の悩みです.チームにObsidianの良さをゴリ推しして広めさせて,利用を認めてくれるようにするしかないかな...

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