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Fastly Compute 開発の基礎 (1) アカウントの準備とリソース制限の理解

2023/12/04に公開

この記事は Fastly Compute (旧 Compute@Edge) 一人アドベントカレンダー 4 日目の記事です。

これから開発環境を整備して初めてビルドやデプロイをする方向けの手順を紹介するシリーズ(Fastly Compute 開発の基礎)の第一回目です。本稿ではアカウントの整備と、リソース制限についての解説を行います。

アカウント作成

以下の入力フォームに必要項目を入力して作成を進めます。アカウント作成のためには下記以上の情報は聞かれず、フォームの冒頭にも記載がある通りクレジットカードの入力は不要です。以下の入力を進めると、トライアルアカウント(別名 Developer アカウント)が作成されます。

トライアルアカウントの制約事項についてはこちらの記載を参考にしてください。トライアルアカウントは本番環境のワークロード向けには設計されていないこと、サポートやサービスSLAの対象外であること、トライアルの場合リソース利用について追加の制限がかかることなどの記載が確認できます。

補足1: リソース制限

リソース制限の詳細はこちらのページで確認ができます。主要な制限値について以下に抜粋しておきます。トライアルの場合の追加の制限については "(.. for free trials)" とある記載がある内容が該当します。

設定値については比較的余裕のある制限値になっていると思います。例えばパッケージのサイズについてトライアルでも 100 MB まで利用することができます。利用する依存モジュールのために WASM のパッケージサイズが大きくなりがちだったり、プロジェクト初期で後々どの程度までパッケージサイズが膨らむか見通しづらい状況でも安心して使うことができます。

補足2: コストの計算方法

少し脱線しますがここで Compute のコスト計算方法についても触れておきます。(日本語で記載されている情報があまりにも少ないため)

Compute の費用は Fastly の通常の CDN の費用計算に加えて、Compute 独自の価格体系を足し合わせることで計算します。例として、CDN の費用例について公式サイトが説明している以下の例を使いながら説明します。

お客様のサイトの当該月分トラフィックのほとんどが北米とヨーロッパであり、1,000万リクエストで10 GBのトラフィックを処理した場合、データ転送量とリクエスト数を合わせ、月額 $8.70 USD となります。

上記のように CDN の配信で 1,000 万リクエスト(使用帯域は10GB)を既に処理しており、これに加えて新たに 100 万リクエスト(使用帯域は1GB)を Compute で処理する(合計 1,100 万リクエストを処理)するようなケースを想定すると、新規に追加した Compute 部分は (a) $0.87 + (b) Compute 独自の価格帯系 で求めることができます。(b) の計算は以下を足し合わせて求めます。

  • Compute Requests(リクエスト数): $0.50 / Million Requests
  • Compute Duration(メモリ使用時間): $0.000035 / GB-Sec ※50ms刻みで請求される
  • vCPU Seconds(vCPU使用時間): $0.000045 / vCPU Sec ※vCPUの利用が20msを超過した場合のみ10ms刻みで請求される

今回の Compute の処理では簡便のためにメモリ使用時間が 50ms で vCPU の利用が 20ms であったと仮定すると、vCPU については超過時間がなく $0 での請求とみなせるため、(b) = $0.50 + ($0.000035 * (128/1024)GB * (50/1000)Sec * 1,000,000req) = $0.50 + $0.21875 となり、(a) $0.87 + (b) 約$0.72 = 約$1.59 と計算されます。つまり Compute を加えた 1,100 万リクエストの処理のために発生する費用としては、当初の $8.70 USD に新規の 約$1.59 USD を加えた金額が見積費用となります。

ここまでの想定トラフィック量や金額感でお分かり頂けるかと思うのですが、トライアルアカウントでは一般的な検証利用には十分な月額 50 USD 分の利用枠が付与されるため、この見積が必要になるケースは少ないと思います。一方で、有料アカウントで商用・本番環境での利用を検討する場合は、アクセス数の想定をもとに上記のような費用見積をしながら利用計画を立てる形となります。

まとめ

本稿ではアカウントの作成方法、Compute のリソース制限の考え方やコストの計算方法について紹介しました。明日は実際の開発環境の整備について紹介したいと思います。

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