【QA Career Talk After Talk】QAエンジニアの生存戦略 -AI時代におけるスキルセットを考える
はじめに
こんにちは、令和トラベルの miisan です。
先日開催された「QA Career Talk vol.5 〜QAエンジニアの生存戦略~」イベントにご参加くださった皆さん、ありがとうございました!また、イベント中はたくさんの質問、Xでの感想などありがとうございました!
久しぶりの「QA Career Talk」かつ初のハイブリッド開催ということで、楽しく有意義な時間を私も過ごすことができました。
イベントはたった1時間という限られた時間でしたので、全ての参加者の気になるポイントにお応えすることが難しく、申し訳ありませんでした。
この記事では、イベント後アンケートでいただいた感想や質問にも触れ、当日時間の都合上、お応えしきれなかった点について、改めてお話しさせていただきます。
AIとエンジニアの関係性はまさに今、変化の渦中にあります。私自身も「答えがまだないもの」に向き合いながら、毎日試行錯誤しています。
そんな中でもイベントのキーワードの一つにした"サバイバルキット"を武器に、立ち向かっていくヒントになれば!というのが、今回イベントのテーマでした。
ここでは、皆さんと同じように未来を模索するQAエンジニアの一人としてお話ししていきます。
当日参加者向けのアフタートーク的なブログとなっているので、もしもイベントの概要が気になる方は、こちらもチェックしてみてください👀
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※ 当日の様子が気になる方は #qa_career_talk
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#qa_career_talk のコメント・質問に応えていく!
AI活用、実際どうしてる?現場のリアルな話を聞かせて
「AIをQAに活用するって、具体的に何をどうしてるの?」という質問を多くいただきました。
特にDevinの活用方法に対する質問が多かったので、ここではDevinについて紹介します。
2025年に入ってすぐ、令和トラベルではDevinを試用期間として導入しました。
現在はプロダクト開発に所属しているメンバーのほとんどが日々の業務で活用しています。
特にQAチームでは、Devinを使って、テスト自動化・仕様理解の補助・テスト実行などに活用しています。
テストコードの自動生成
E2Eテストのベースをサポートしてくれています。令和トラベルでは、Playwrightを使っているので、相性が良いです。
Slack上のインターフェースのみでPRの作成まで行えます。
もちろん、テストコードのリファクタリング提案や修正にも使えます。
仕様検索と仕様理解
Devin Searchを活用しています。こちらはQAエンジニアのみならず、PMなども活用しています。
Devinを導入していれば誰でも活用できるので、まだ使ったことがない!という方は、簡単な質問から聞いてみてください。
QAエンジニアの強みであった、仕様を理解していることの価値が薄れていく感覚がじわじわと襲ってきます。
JIRAチケットから自動でテスト実行し、証跡を残す仕組みの構築
開発チームと協業し、開発プロセスそのもののを変えようと挑戦しています。
例えばJIRAを作成したときに、descriptionを読み取り、最初のPRコミットまではDevinによって自動で作成されるような仕組みになってきています。
その延長線で、JIRAの課題からdescriptionを理解して、テスト生成→実行→証跡まで自動で行うPoCを進行中です。
ある程度、これくらいの案件の時はこういう使い方をしたら良さそうだね、という輪郭は見えてきました。
まとめ✍️
Devinを活用し始めてから一番インパクトを感じたのは、これまで「読む→考える→書く→直す」だった作業が、「書いて→直す」くらいになって、チーム全体の生産性が大きく向上しました。
一方で、「仕様理解」がAIによって代替されつつある状況が進むと、これまで以上に人間は 「仕様を超えた価値提案」 にフォーカスできるようになっていきます。
私たちQAエンジニアは、もっとカスタマー体験やサービス全体の品質向上に向き合える存在になっていけると思っています!!
他にもClaude Codeを使ったり、Cursorを使ったりと、弊社ではAIツールの活用に制限を現段階では設けていません。(2025年7月現在)
また、AI活用を促進するためにいくつかの準備もしてきました。
詳細については、以下の記事を参照ください。
具体的な活用方法についてもっと深掘りして聞きたい方はこちらのイベントで、弊社のメンバーが登壇しますのでご参加ください!
「赤鬼プロジェクト」ってなんですか?
パネルディスカッション内でAI活用のための育成支援の話の中で、取り上げました。
令和トラベルでは、 "AIオールイン" を掲げており、全社横断プロジェクトとして「赤鬼プロジェクト」をAI活用を加速させるために立ち上げました。
プロダクト開発組織だけでなく、全社各チームから"AI局長"を1人ずつ選出し、以下のような活動を進めています。
- AI活用事例の共有
- ツール選定・評価
- 困っていることの相談・壁打ち
プロダクト開発組織だけが生産性を上げるのではなく、全社レベルのAIスキル平均値を上げるための全社施策です。
名前の由来は「鬼に金棒」から。「AIを使いこなせれば、すごい人がさらに強くなるよね!」という願いを込めて、"赤鬼"です👹
QAチームとしてもこの取り組みに関わっており、「赤鬼プロジェクト」で話された内容は毎週のQA定例でAI局長から共有してもらっています。
逆にAIにまだ難しいと感じているところは?
AIに任せられないことは、2025年7月現在の私の感覚では、まだあります。
さすがに「AIに全部任せればいいじゃん?」までの距離感はある気がします。
AIのサポートは日々進化していますが、今のところ人間が優れていると感じる点はこんなところです。
文脈の理解と背景把握
ビジネスロジックや「なぜこの仕様になっているか」の洞察や察する力。
エッジケースの発見
経験や直感から来る「こういうの落としがちなんだよね…」「なんか嫌な予感がする」という勘どころ。バイアスに気付ける感度・見抜く力。
最終的な品質判断
最終意思決定・判断力。コンテキストを与え続けても「これで十分」と判断するには、AIだけに任せることはやはり難しい感覚があります。ルールや基準に従ったそれらしきものにたどり着く速さでは、到底及びませんが、責任を取れる意思決定は人間にしか現時点ではできません。
コミュニケーションと交渉力
私たちは組織で動くので、これまでもこれからもステークホルダーと会話しながら品質という曖昧なものを守り、育て続けることが大事な役割という中で、この辺りの強みは残されている気がします。
とはいえ、毎日のように加速度的に進化するAIの成長速度は、人間とは比べ物になりません。そういった中で、私たちがAIと協業していくうえで大事なのは、AIもメンバーの一員と捉え、得意なこと・不得意なことをきちんと理解し、分担して補い合う関係を築くことだと思います。
AIプロダクトをどうQAするのか?
「AIをどうQAするのか?」という面白い質問がありました。
これは、まさに手探りでやっているところです。
一つ例に挙げると、先日令和トラベルではAIによる旅行プラン提案機能 「トラベルプランナー(ベータ版)」をリリースしました。
「トラベルプランナー(ベータ版)」は、NEWTに掲載されている各種ツアーの旅程情報をもとに、AIが自動的に旅行プランを提案する機能
この機能では、私たちもカスタマーになりきり、裏側のプロンプトを調整する時間をかなりかけました。
とはいえ旅行プロダクトのいい点は、このカスタマーになりきるフェーズを楽しみながら体験できることです。
一方でこの案件を通して改めて感じたことが、従来の"正解を検証するQA"から、"予測と調整を繰り返すQA"に変わってきているということです。
試行錯誤のポイントとしては、
- プロンプト精度の見極め
- 挙動を制御するルール設計
- 再現性のない動きに対して、どう品質を担保するか?(プロンプトの一部を変えた時の影響を想定することが難しい)
などが挙げられました。
開発初期の要件定義や、最初に与える「コンテキスト」がますます重要になっているので、これまで以上にQAエンジニアも「考える」フェーズから一緒に関わることが鍵になっていくと思います。
QAオンボーディングの中身について詳しく教えてほしい
令和トラベルでは全社オンボーディング、部署オンボーディング、職能オンボーディングと階層で分かれています。
今回のイベントで私が紹介したのは、全社オンボーディングの中で毎月実施している「QAオンボーディング」についてでした。
具体的には、令和トラベルにおける品質向上がどういうことを指すのか、全社で体験をより良くしていくためのスタンス、QAチームの巻き込み方など、プロダクトメンバー以外にも理解しておいてほしい話をしています。
QAのオンボーディングについては、“品質”をみんなのものにするために行なっている入社者オンボーディングという記事で紹介しています!
ただ、オンボーディングのあり方についても変化が必要と考えています。これまでも弊社のオンボーディングはかなり手厚い設計になっていましたが、AI時代におけるオンボーディングのあり方も変わるべきと考えており、今後は入社後文字通り"垂直立ち上げ"できる新しいオンボーディングの設計にも着手していきたいと考えています。
AI時代に必要なQAのスキルセットは?市場変化もふまえ、聞きたい
新しいスキルセットに向けて、私たちが考えていることとしては、QAチームでもAIスキルを前提とした働き方にシフトしつつあります。
完全に私の解釈だけで必要なスキルを挙げてみます。
AI時代における必要になりうる不変的スキル
- 言語化力:考えを伝え、定義する力
- 人間力:多様な人と共に働ける力
- 共感・納得を生む力:人の心を動かす説得力
詳しくはこちらの記事で紹介しています!
QAエンジニアならではのスキル
- コンパス:品質を方向づける設計力・ガードレールを作成できる力・方向性を持つマネジメントスキル
- メガホン:他職能やAIとの協業力・推進力
- ロボット:開発プロセスにおけるプロセスの壁を越境する・AIを用いた開発ガードレールの策定
そのほか、プロンプト設計やコンテキスト伝達力、早いサイクルでフィードバックが回り始めることを考えると"内省×PDCAサイクル"の実践も求められると思います。
これまで必要とされていた能力も多いですが、これらをどれだけ高い水準で実行できるかどうかにより、その差分はこれまでとは比にならないレベルで成長角度を変えてしまう可能性があります。
チームの平均値についてこられないメンバーも環境によっては出てきてしまう恐れもあります。
私は最近上記に挙げたポイントをポテンシャル含め保有もしくは実行してきたかどうかなどを、選考プロセスなどでは見ることが増えています。
また求める人物像やそもそも採用による組織拡大の優先度における考え方は、各社大きく変化していると感じます。
この辺りについては、需要があれば完全オフレコオフライン開催でまた企画したいと思います。
これからの時代、QAエンジニアに必要なことはなんですか?
これもとても難しい質問ですし、おそらく答えを持っている人はいない可能性があります。
これまでの変化とこれからを予測した仮説の話をしておくと、生産性と人間の価値の再定義は異次元な速度で私たちに問われていくと思います。
私がQA戦略の一つに組み込んでいることとしては、生産性を30%改善することです。
今後AIによってプロダクト開発の生産性が上がったその先で、私たちがボトルネックになってはいけない。今のうちから生産性を大きく改善するために、プロセス改善などから挑戦しています。
また単純に生産性の上がった世界で、負債の少ない形で、継続的デリバリーのできるサービスを維持し続けられるかどうかは、成長し続けられるサービスになれるかどうかを分ける可能性があります。スピード命の世界に変わっていく中で、良いものを早く届けることの価値が一層増していくかもしれません。こうした中で、良いものを作り続けられるために、チームや組織をリードできることは、QAエンジニアに求められることの一つになるだろうと思います。
さらに、QAエンジニアの価値の発揮の仕方は多方面へと広がる可能性を秘めていると考えています。
カスタマーへ届ける体験をデザインし、実現する人に、よりシフトしていくのではないでしょうか。
テストやレビューといった"行為"の価値が相対的に薄まっていくなら、私たちの存在の価値は、どんな体験を生み出せるか、トップラインをどれだけ伸ばせるかで決まってくるはずです。
私たちは技術・UX(体験)・ビジネスの領域を越境して、カスタマーに価値を提供し続けることを目指していくつもりです。
そんな組織にするため、私含め役割の越境をメンバーに求めています。
このような挑戦を一緒に向き合ってみたい方は、ぜひ同じ船に乗って仲間になってくれると嬉しいです!QAエンジニアはもちろん、他エンジニア含め募集しています🤝
最後に
今回のイベントを通して、改めてQAエンジニアという仕事の「今」と「これから」を私自身、見つめ直すことができました。
技術も、役割も、必要なスキルも、大きく変わっていく。そして誰も予測できません。
AI時代に変わろうと、私たち人間が使うサービスの良し悪しを最後に決めるのは人間です。
これからも"QAの本質"を見失わず、あらゆるコラボレーションを橋渡しする存在として、変化に柔軟に向き合っていきたいと思います。
引き続き、みなさんと一緒にこの変化の激しい時代を乗り越えていければと思います。
それではまた、QA Career Talkでお会いしましょう🙌
質問やディスカッションはいつでも大歓迎です。Xでも、気軽にお声がけくださいね!Xはこちら:miisan
お知らせ
令和トラベルでは毎月技術的な知見を共有しあうための勉強会を毎月開催しています!
また、令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています🤝
もちろんQAエンジニアも大募集中です・・・!!!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。
それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️

令和トラベルのTech Blogです。 「あたらしい旅行を、デザインする。」をミッションに、旅行におけるあたらしい体験や、あたらしい社会価値の提供を目指すデジタルトラベルエージェンシーです。旅行アプリ「NEWT(ニュート)」を提供しています。(NEWT:newt.net/)
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