🗒️

NotebookLMが変える、開発ドキュメントとの向き合い方

に公開5

NotebookLM が変える、開発ドキュメントとの向き合い方

1. はじめに

Google の「NotebookLM」は、モバイルアプリ対応や音声概要機能など、急速に進化を遂げている注目の AI ツールです。

その本質的な価値について私は、便利な機能以上に「ユーザーが提供した資料に基づいて、対話的に活用できる」仕組みにあると考えています。NotebookLM は、アップロードされた情報のみを参照する「ソースグラウンデッド」な特性を持ち、そのことによって他の AI ツールとは一線を画す、精度と信頼性を備えています。

しかしこれほど優れた特性を持つにもかかわらず、NotebookLM を十分に使いこなしているという話はあまり耳にしません(新機能に関する紹介記事は多く見かけるものの)。本記事では、NotebookLM の特長をあらためて整理しつつ、開発現場における活用方法、導入によってどのような変化がもたらされるのかをご紹介します。


2. NotebookLM の特徴

NotebookLM が開発現場にもたらす最大の価値は、以下の 5 つの特徴に集約されると考えています。

  • 信頼性:根拠を明示する安心感
    NotebookLM は、回答に使用したソースの該当箇所を必ず引用として明示します。つまり、「なぜそのように答えるのか」が常に可視化されるため、仕様書や要件定義など、正確性が求められる場面でも安心して活用できます。

  • 安全性:プライバシーに配慮された設計
    アップロードした資料は、AI モデルの学習には使われません。また、Google Workspace 利用者であれば、契約に基づいてデータ保護が行われます。
    ※品質向上の目的で、一部のケースでは人間のレビュアーが確認する可能性があります。

  • 精度:ハルシネーションの抑制
    NotebookLM は、ユーザーが提供したソースの範囲内でのみ回答を生成します。この仕組みにより、ハルシネーションの発生率が大きく抑えられます(完全にゼロではありません)。結果として、信頼性を保ちつつ、必要な情報を迅速に抽出できます。

  • 柔軟性:多様な形式に対応
    NotebookLM は PDF、Google ドキュメント、Markdown、Web サイト、YouTube 動画、音声ファイルなど、幅広い形式の資料に対応しています。Confluence、スプレッドシート、PDF、動画など複数形式の資料が混在するプロジェクトでも、一元的に管理・活用できます。
    ※現時点では Google スプレッドシートには直接対応していないため、PDF に変換するなど工夫が必要です。

  • 集合知:チームナレッジの強化
    NotebookLM は、チーム全体のナレッジを共創・蓄積するための土台としても機能します。資料を集約することで、共通の情報をもとに判断や議論ができるだけでなく、「メモ作成」や「ソースへの追記」といった機能を活用し、チームのナレッジを日々アップデートすることが可能です。チームの認識のズレを防ぎながら、ナレッジを育て続けられる仕組みです。


3. NotebookLM で解決できる課題

私たちのプロジェクトには、これまでの開発者や PdM、メンバーが蓄積してきた多くのドキュメント資産があります。これらの情報は、上で挙げたような特徴を持つ NotebookLM を活用することで、さらに価値を高めることができます。まさに「ナレッジの山」が「ナレッジの宝庫」へと変わり、今後の開発を力強く支える基盤となる可能性を秘めていると私は考えています。

では、開発現場では具体的にどのような変化が起こりうるのか。以下に整理してみます。

新規メンバーのオンボーディング効率化

  • 😩 Before(導入前)

    • ドライブ一式を共有されても、資料は PDF・スプレッドシート・動画など資料は複数にまたがり、それぞれが相当なボリュームになるので、全体像を把握するのにひと苦労。

    • 長尺のレクチャー動画や細かく分かれた仕様書を自力で読み解く必要があり、理解に時間がかかる。

    • 過去の経緯や用語の定義が明文化されておらず、同じ質問が何度も繰り返される。

  • 💡 After(導入後)

    • 音声要約や FAQ 形式のガイドにより、概要把握が圧倒的にスムーズに。必要な資料にもすぐアクセス可能。

    • 動画は要点を自動抽出してテキスト化、各資料に自然言語で質問すれば、引用付きで即座に背景や仕様を理解できる。

    • 過去の意思決定や変更履歴もドキュメントを横断して参照でき、背景の理解も含めた「実践的なオンボーディング」が実現。

要件把握、仕様理解にかかる時間の短縮

  • 😩 Before(導入前)

    • リファインメントやプランニングの直前に要件を再確認したくても、手元の開発で手一杯で時間が足りず、資料を読み返すのが一苦労。

    • 複数の資料を横断する必要があり、前提条件や背景情報の抜け漏れが発生しやすい。

  • 💡 After(導入後)

    • 様々な資料を元に概要を理解できる。

    • 「この機能に関係する仕様・背景は?」などの質問で、関連ドキュメントを横断しながら要点、気になるポイントへの理解を掘り下げる。

    • 仕様の根拠や変更履歴も引用付きで確認できるため、短時間でも精度の高いインプットができるように。

チーム内の情報非対称性の解消

  • 😩 Before(導入前)

    • Slack や口頭での議論が個人の中にとどまり、他メンバーには結論だけが伝わることで背景が不透明に。

    • 「それ、どこかに書いてある?」という情報の行き違いが頻発。

  • 💡 After(導入後)

    • 議事録や Slack ログを NotebookLM にソースとして追加することで、会話の背景まで簡単に理解できるように。

    • 誰でも「なぜこうなったか?」を質問でき、チーム全体で共通の認識が持てるように。

プロジェクト固有の用語集(ユビキタス言語辞書)

  • 😩 Before(導入前)

    • 部署やプロジェクトごとの略語・制度用語がわかりづらく、理解に時間がかかる。

    • 会話の中で当然のように出てくるが、新しいメンバーや他部署の人には伝わりにくい。

  • 💡 After(導入後)

    • 専用の用語集ノートを整備し、NotebookLM に「〇〇って何?」と聞けば、定義と出典をすぐに確認可能。

    • 用語の揺れや誤解が減り、チームの共通言語として定着しやすくなる。


4. これからの NotebookLM に期待すること

NotebookLM は、以下のような機能が改善されることで、さらに強力なツールへと進化すると考えています。

  • 情報管理性の向上(タグ・フォルダ管理)
    現状、ノートがフラットに並ぶだけなので、プロジェクト単位・機能単位で管理しづらい。
    ノートが 10 件を超えたあたりからカオスになり、再利用性が激減する可能性がある。

  • 更新・同期フローの自動化
    元ファイルを更新しても、NotebookLM に反映されないため、毎回手動で読み込み直しが必要。
    要件資料は度々更新されるので、最新情報に容易にアクセスできない、また質問の回答が最新情報に基づいていない可能性があるのは、運用上のボトルネックになってしまう。

  • より多様なフォーマットへの対応

    • Google スプレッドシート や CSV ファイルを正しく構造ごと解釈してほしい。
    • Confluence や Figma が読み込めると、よりシームレスに既存のドキュメントを資産として活用できるようになり、一気に NotebookLM の情報基盤化が進む(現在は他フォーマットに変換しテキストベースの情報として読み込まれている)。
    • 画像は中身を解析できるようになると、より汎用性が高まる。
  • 多様な出力のフォーマットへの対応
    現在の出力はプレーンテキストで、スライド資料や社内文書に転用しづらい。
    議事録や仕様概要として使うには、手作業で整形する負担が大きい。
    例えば Markdown 形式など出力形式を選べるようにすることで、活用できる範囲は一気に拡大する。


5. NotebookLM を活用するヒントを探す

プロジェクトやチームにおいて活用方法を模索している場合、NotebookLM に“NotebookLM のユースケース”を読み込むと、効率的に活用事例を収集できます。

  • Discord と Reddit が使える
    NotebookLM には、ユーザー同士が活発に活用事例を投稿している場があります。

    • Discord: use-cases チャンネル(公式コミュニティ)

    • Reddit: r/NotebookLM サブレディット

  • 会話ログをそのまま NotebookLM に放り込んで質問する
    それぞれのチャンネルから直近のやり取りを全てコピペして 1 つのノート(NotebookLM 活用ノート)に追加し、質問を投げます。

    開発現場での活用事例にはどんなパターンがある?
    
    オンボーディングで活用されている例を抜き出して
    

6. NotebookLM を使う上での注意点

NotebookLM は非常に強力ですが、利用にあたって以下の点には特に注意したいです。

  • AI の回答は鵜呑みにせず、必ずファクトチェックを
    NotebookLM はソースに基づいて回答を生成するため、ハルシネーションは抑制されますが、ゼロではありません。また、ソース自体の情報が古かったり、誤っていたりする可能性もあります。AI の回答を業務に適用する際は、必ず引用元のソースを確認し、人間による事実確認を行う必要があります。

  • 機密情報の取り扱いには注意
    アップロードしたデータは AI の学習には使われませんが、品質向上や安全性のために人間のレビュアーが内容を確認する場合がある点には注意が必要です。特に高い機密性を持つ情報をアップロードする際は、企業や組織のポリシーを確認し、慎重に判断することが重要です。


7. まとめ

NotebookLM は、単なる AI アシスタントではなく、ドキュメントと対話できる新しい開発インフラです。
うまく活用すれば、チームのナレッジは「読むもの」から「引き出すもの」へと変わり、開発の精度とスピードを大きく高めることができます。

まだ発展途上の部分もありますが、それでも現場に変化をもたらす力があると感じています。
その効果を最大化するには、ノートの整理・分類・命名といった情報設計の工夫が欠かせません。

今回は触れきれなかった部分もありますが、もし他に良い活用事例があればぜひ教えていただけるとうれしいです。

Rehab Tech Blog

Discussion

kake2kake2

joseさん、素晴らしい記事をありがとうございます。
構想が明確で凄いです✨!!✨
m(_ _)m
NotebookLMを活用したナレッジ共有の仕組みについて、とても共感です✨

特に「ナレッジの山」を「ナレッジの宝庫」へ変えるという視点は、まさに開発現場の本質的な課題を捉えていると感じます。チーム全員が同じ理解・同じ方向性を持つことで、効率的で創造的なコミュニケーションが生まれるという点、本当にその通りですよね。

介護業界の現状を見ますと、医療と比べて標準化が進んでいない実情があります。事業所ごと、地域ごとにケアマネジメントの理解もバラバラで、職種による知識格差も大きいのが現実です。

そんな中で、NotebookLMのような仕組みは多層的に活用できますよね!
①開発者視点での標準化とナレッジ共有
②事業所経営者の視点
③介護現場での実践知の共有と教育
④各職種(レセプト、リハビリ担当など)固有のナレッジ

実装にあたっては、どうお考えですか?
既にお考えておられると思いますが
まずは小さくトライアルから始めるのが良いですよね。特に開発者の認識齟齬によるバグや利用者リスクが高い領域から着手し、以下のような基盤づくりが重要かと、、
■データの精度管理
■時系列での履歴管理
■古いデータの適切な処理
■バージョン管理のルール策定

また、せっかくの仕組みも使われなければ意味がないので、プロダクトオーナーとの密な連携も不可欠ですね。構想段階から巻き込んで、プロダクトの方向性と合致した形で進めることが成功の鍵だと思います。

そして何よりも、
新しいツールを積極的に導入し、知見を積み重ねながら現場をより高みへと導こうとする姿勢に、技術者としての誠意と情熱を感じます。
m(_ _)m

小さなトライアルを重ねて経験則と知見を蓄積していくしかありませんよね。特に介護現場のデータは独特の特性があるので、それを一番理解している皆さんが最前線でアウトプットの良し悪しを判断できる立場にいることは大きな強みだと思います。

一般的な事例を参考にしながら、コツコツと前進していく。その積み重ねが「生きたデータ活用」につながっていくのでしょう。思い描く理想を信じて続けることで、必ず成果は見えてきます。知見は都度、必要な場面で収集していけば十分ですよね。

心から応援しています!頑張ってください!
今回の記事、本当に参考になりました。
m(_ _)m

m(_ _)m

ありがとうございます!

kake2kake2

P.S. 以前のスクラム開発導入の記事も拝読しました。「チームの自律性向上」「ユーザー価値を意識した開発」「柔軟で効率的な体制づくり」という3つの期待値が、今回のNotebookLM導入とも見事に連動していますね。

スクラムで「不確実性に立ち向かい、協力して課題を解決する文化」を築き、そこにNotebookLMという「ナレッジ共有の基盤」を組み合わせることで、チームの成長がさらに加速しそうです。

ウォーターフォールからスクラムへ、そしてナレッジマネジメントの革新へ。継続的な改善への取り組みに本当に素晴らしいです!!!✨️🌟

m(_ _)m

kake2kake2

joseさん、
素晴らしい記事をありがとうございます。
m(_ _)m

私は、最新の情報を確認したく初歩的ですが、下記の動画を視聴しました。その上で、ツール活用の感想をお伝えしますね。言わずもが、釈迦に説法となっていましたら、ご容赦くださいね。

m(_ _)m

https://youtu.be/4shjUSh9DTQ?feature=shared

YouTube動画でのNotebookLM解説も拝見し、このツールの可能性についてさらに理解が深まりました。

私が特に良いと思ったのは、NotebookLMを単なるドキュメント検索ツールではなく、【チームの合意形成と求心力を高めるツール】として活用できる点です。

実際の運用では、以下のような二層構造が効果的かもしれません。
①使用者A:一次ソースから有意義なノートを作成する役割
②使用者B:作成されたメモから知見を得て活用する役割

また、会議体での活用について考えてみました。みんなが同意できた内容をメモ機能で保存し、それを共有する運用ルールを作ることで、参加できなかった人への配慮や「あれなんだっけ」という記憶の断片を結びつけることができそうです。

このプロセスを繰り返すことで、個人の海馬に記憶された断片的な情報が、チーム全体の暗黙知として定着していく。まさに 【「ナレッジの山」が「ナレッジの宝庫」へ】という、joseさんの表現通りの変化が起きると思います。

NotebookLMは、多様な思いを持ったメンバーが集まるチームに、プロダクトへの求心力をもたらすツールになる。そんな期待を抱いています。

スクラム開発の記事も拝読しましたが、「検査と適応」のサイクルを支える情報基盤として、NotebookLMは理想的なツールですね。継続的改善の記録と共有により、【強いチームとぶれないプロダクト】が実現できそうです。

m(_ _)m

p.s

実は私も現在、300以上の業務手順書を抱えるインフラ運営チームに参加しています。完全リモートワークで、朝会・夕会・プロジェクトミーティングなど会議体が多く、メンバー間のコミュニケーションが生命線です。

小さな違和感や文面の真意を理解するには、一般知識、業界知識、組織知識、プロジェクト知識、技術者の知見など、多層的な暗黙知が必要不可欠です。

現在はTeamsチャット、SharePointのドキュメント、Redmineチケットを全てURLリンクで繋げていますが、新規参加メンバーにとってはこの情報の「るつぼ」から必要な情報を見つけ出すのは至難の業です。既存メンバーですら、チャットの過去検索や時系列での追跡に苦労しています。

だからこそ、NotebookLMのような仕組みに大きな期待を寄せています。バージョン管理された正しい情報へのアクセスを習慣づけ、文化として定着させるには、プロダクトリーダーからの継続的な意義と効果の発信、そして参加メンバーを巻き込んで「自分事」にしていくことが不可欠ですよね。

joseさんの取り組みは、まさに私たちが直面している課題への解答になりそうです。

josejose

ご丁寧なコメント、ありがとうございます!

NotebookLMを「合意形成と求心力を高めるツール」と捉える視点には、大いに共感しました。
一次ソースを整理する役割と、それを活用する役割に分けた二層構造のアイデアや、会議での合意内容を共有・活用する運用方法など、現場でそのまま活かせる具体的なご提案なので、大変参考になりました。

また、インフラ運営チームでのご経験に基づいたお話からも、NotebookLMは、まさに人と情報のコミュニケーションハブとして機能しうるツールだと、改めて感じています。

今後も貴重なご意見いただけると幸いです。ありがとうございました!

kake2kake2

○その後のお試し
試しにNotebookLMへ介護保険法の全文を厚生省のURLを指定して取り込みしました。
そして、”介護保険と医療保険の給付が重複する日が認められない法的根拠を教えてください。”
とチャット欄へ入力しました。回答は 「ご提示の資料だけでは、介護保険と医療保険の給付が重複する日が認められないとする直接的な法的根拠を特定することはできません。」との結論でした。正しい結果です。

必要な情報は ”「保険(医療)給付と重複する保険外負担の是正について」という厚労省通知” が該当します。

このことから私は次の検索条件を打鍵しました。 「外部のWeb情報も検索対象として 関連する文章根拠を探してほしいです。特に厚生省の通知について」検索結果は、目あての情報が生成されました。

(抜粋)”同日算定の禁止: 特に訪問看護や訪問リハビリテーションなど、医療保険と介護保険の双方に存在するサービスについては、原則として同一日に医療保険と介護保険の両方から給付を受けることは認められていません。どちらか一方の保険からの給付となります。このルールは、厚生労働大臣が定める「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」などの告示や、それに関する通知で具体的に示されています。” 〜 ”したがって、介護保険と医療保険の給付が同一日に重複して認められないというルールは、介護保険法そのものの条文に明記されているわけではありませんが、法の目的である「医療との連携に十分配慮」[2, 第二条第二項]を実現するための具体的な運用ルールとして、厚生労働省の告示や通知で詳細に定められ、それらが法的根拠となっています。” 〜

当然ではありますが、問いかけ次第で生成される情報の精度が使える・はるかに遠い回答 にわかれます。
生成された情報は、とてもわかりやすく丁寧に根拠も示してくれるので 「NotebookLM」はとても良いツールだと思いました。また深い洞察も含まれて根拠も示されていることは裏付けが出来るので良いです。

ただ、一般的な外部情報だけで生成AIをツール使用する場合は、性能の高い各社のAIツールをそれぞれ使い分けるのが普段使いの状況です。メンバーのオンボーディング効率化を図る場合は、、「NotebookLM」内部の蓄積情報だけを頼りにせずに、法人契約しているGoogleアカウントのgoogle各種ドキュメントへのアクセス検索機能が「NotebookLM」に追加されたら良いと思いました。

あとは、うまく活用してチームのナレッジを「読むもの」から「引き出すもの」へと変えて、開発の精度とスピードを高める方法の試行ですね。ユースケース参考もしてみますが、現場の今を投入して試行してみます。