Cline × モブプロで、PdMもエンジニアも巻き込めるAI開発勉強会を実施してみた
本記事では、社内で試してみた「AIモブプロ会」という勉強会の形式を紹介します。バイブコーディングの現場導入に悩んでいる組織の参考になれば幸いです。
はじめに
本業ではプロダクトマネージャーをやりながらも、趣味や副業を中心に日々それなりにアプリケーションを作っていて、最近ではCline・Cursor・WindsurfといったツールでAIにコードを書かせています。
こうした開発方法は最近ではバイブコーディングという呼ばれ方をするようにもなり、ソフトウェア開発の在り方が大きく変わっていくことは間違いないと思います。
しかし、「所属組織での仕事でもみんなバリバリ活用しています!」という環境が当たり前かというとまだまだそういうわけではないと思います。
私たちREADYFORでも自分たちにあった使い方を模索している中ですが、「Clineモブプロ会」という名目で勉強会を開いてみたところ、かなり良い手応えを得られたので、まだまだ発展途上の取り組みではありますが紹介します。
社内Slackで投稿した、勉強会のイメージ図
上記がやっていることのほぼ全部です。
- AIへの指示出しに慣れている人・挑戦したい人がドライバーとしてコーディングを行う
- その様子を見たい人がナビゲーターとして作業内容をレビューする
- 作業がひと段落してプルリクエストまで出せたら終了。あとはみんなで感想戦
言ってしまえばこれだけですが、参加してくれたエンジニアメンバーからは、
- 「思ったより色々できる。PR 作ってくれる[1]の便利ー!」
- 「想像より遥かに『実際に使える』感じがした。最近人間がボトルネックになるって発表があったけど、今日の30分でみて実感&確信してしまった」
- 「思っていたより色々やってくれる。PR作成はぜひ使いたい。vimで使えたらなあ…」
などなど良い反響をもらえて、第2回・第3回と継続的な開催につながっています。
どうしてモブプロ?
社内でのAI活用を進めるために、「Cline[2]を使って勉強会をしよう」というのは決めていたものの、どんな形式にするかはかなり悩みました。
よくある形式として、
- ドキュメントや記事を映しながらClineの概要や動作原理を解説する
- 各自でドキュメントや記事を読んで意見交換する
- ハンズオン
- もくもく会
などを検討したものの、あまり成功するイメージが湧かなかったからです。
社内で勉強会に興味がありそうだった数人に、Clineのようなツールについてどう思うか話を聞いてみたものの、
- 指示出しが面倒臭い
- 適切にコンテキスト与えるのが面倒臭い
- すでにできあがっているもので使おうとすると辛い
- わからないものを動かして本番に入れる怖さ
のように、興味はあるものの積極的には手を出せていない様子。
そもそも、「要件に沿って動くように、プログラミング言語で的確に素早く質の高いコードを書く」スキルと、「要件に沿って動く質の高いコードを書いてもらえるよう、自然言語で的確に素早く指示する」スキルは似て非なるものです。
前者を得意としているプログラマーの中でも後者になると手を動かしづらく、「自分でコードを書いたほうが速い」とすでに習熟したやり方を選んでいるという方は少なくないのではないでしょうか。
深く話を聞いていったところ、
Clineが何であるか以上に、Clineでどれくらい楽になるのかにみんな関心があると思う
何も情報なく「さあやって」だと手が動かないと思うから、Clineで何ができるのか・デモみたいなものは見ておきたいという気持ちがある
まだ本質的にAIを面白がれていない。これを試そうという心の炎が灯っていない状態で、そのきっかけがほしい。その炎さえ灯れば勝手に走れる
という意見をもらい、「このやり方ならみんなで面白がれるのでは?」と思いついたのがAIモブプロでした。
「AIへの指示出しに慣れている人が現実の開発タスクに挑戦する様子を見ながらも、受け身になることなくAIの作業内容の良し悪しをみんなでわいわいレビューする」
そんな流れを作りやすいモブプログラミングは、社内での勉強会にはぴったりでした。
AIモブプロ会の開き方
1回あたりの時間は、気軽に参加してもらいたかったので1時間としています。
事前準備
- 要件が決まっていて30分程度で倒せるぐらいの開発タスクを見繕っておく
- その回のドライバーを決める
- ドライバー役の人には以下の準備を整えてもらう
a. Clineなどバイブコーディングに使うツールを利用する準備
b. 対象タスクの作業をするための開発環境を構築してローカルで動作確認できるようにしておく
当日の時間は限られているので、できるだけスムーズに作業に入れるようにしておきます。
当日
- ドライバーの人が画面共有[3]して作業する。できれば画面全体を共有して、動作確認の様子も一緒に見れるようにする
- ナビゲーターの人は以下のような関わり方で参加する
a. AIに指示しながら開発する流れがどんな感じかを知る
b. どのような仕様・コードにするのがいいかを助言する
c. できあがったコードの品質についてフィードバックする - 作業がひと段落してプルリクエストまで出せたら終了
- 時間いっぱいまでみんなで感想戦。Googleドキュメントなどに感想や疑問を書き込んでワイワイ話す
あくまで「AIを使って現実の開発タスクをどこまで解けるか?」という実験なので、最後の感想戦が意外と大事でした。
READYFORの中では
- こういう場面では使えそう
- ここが上手くいかなかったけど理由はこうかも。次はこうするといいかもしれない
- AIに書いてもらうとしてもこういう能力は必要そう
といった議論が盛り上がりました。
PdMもコントリビューター入りする時代
ちなみに第2回のモブプロでは、エンジニア経験のないプロダクトマネージャーが小規模なコード改修にチャレンジ。
無事にプルリクエストを出してリリースするところまで完走して、社内リポジトリのコントリビューターにその名を刻むことができました。
雑談チャンネルにて
AIを駆使すれば非エンジニアでもサクッと改修を済ませてコミット……とはいかなくても、ナビゲーターからのサポートで完走できるのもモブプロの良いところ。
AI時代でも欠かせない前提知識やスキルを見つめ直す機会にもなりつつ、PdMとエンジニアがより近い距離感でプロダクト改善を回していける手応えも得られました。
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第1回目の開発タスクは修正箇所さえ特定すれば1行修正で済む簡単なものでしたが、コーディングだけでなくghコマンドを使ってプルリクエスト作成までやらせてみたところ、便利さが伝わりやすかったようです ↩︎
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Clineとは何かについては Clineに全部賭ける前に 〜Clineの動作原理を深掘り〜 という記事が分かりやすいです ↩︎
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本当はLive Shareを使ってドライバー交代もやりやすくしたいものの、少なくともClineは相性悪いようで画面共有を使っています ↩︎

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