😽

リピート支援者に対するUXリサーチの取り組み

2024/12/24に公開

この記事はREADYFORアドベントカレンダー2023の24日目の記事です。
(クリスマスイブですね!)

こんにちは!UXデザイナーで業務委託をしているわたなべです。
普段はUI作ったり、ユーザーインタビューをしたりしています!

リサーチの実施背景

今期のREADYFOR[1]プロダクトの注力ポイントとして、「リピート支援者を増やして、”支援者[2]の貯まる” プラットフォームにする」というものを掲げていました。
リピート支援者を増やすためにはまずは「リピート支援者に対する理解を深めなければいけない」という思想のもと、自分の元に調査相談が来たのがきっかけです!

特定カテゴリリピート支援者のリサーチへ

リピート支援者の調査と言っても一度にすべてのリピート支援者を把握することはできません。
そのため、まずは実態として"特定カテゴリのプロジェクトを支援しているユーザーは、同一カテゴリの他プロジェクトにも支援する傾向が強い"という定量的な根拠をもとに、一部のカテゴリに絞り調査を開始することにしました。

まずはデータを定量・定性両面から見ながら、"ある集団"に共通して見られる行動や言動を説明できるようなユーザーゴールや価値観・動機を想像して、仮ペルソナを複数体作成しました。
仮ペルソナは調査前におけるプロダクト関係者における共通のユーザー仮説として可視化され「その仮説が本当にあっているのか?」を検証するリサーチを設計しました。

ユーザーインタビューは調査設計でアウトプットの質が決まると言っても過言ではありません!
そのため、以下のようなフォーマットをもとに目的から丁寧にブレイクダウンさせて設計を進めていきます。

項目 内容
①調査目的 調査を通して達成したいゴール
②調査目標 調査目的を達成するために必要なアウトプット
③調査項目 調査目標を作成するためにユーザーに聞きたいこと
④リクルート条件 調査項目を聞くために適したユーザーの条件

【調査設計のTips】

  • 常に調査目的を意識しながら設計を進める
    • 気づいたらアウトプットを欲張って目的からずれていたりするので気をつけましょう
  • 調査目的では、アウトプットを”どう活用するか”まで記載する
    • 調査が終わって満足してしまい、そのまま特に活用できない、、という失敗が起こります
  • 調査項目は幅広い関係者で洗い出す
    • インタビューはより多くの関係者に見てもらうことでより効果的なものになります!インタビュー当日に呼ぶだけではなく、まずは関係者で発散→収束することで自分事化した上で見学してもらえるようになります。

インタビューに向けての準備

調査設計が終わったら、それらを元にインタビューに向けての準備を行います。
主なタスクは以下のようなものがあります。

  • インタビューガイドの作成
  • 被験者のリクルーティング
    • アンケート配信
    • 日程調整
  • 分析用フォーマットの準備(Figjam)
  • 記録用フォーマットの準備(スプレッドシート)
  • 被験者提示資料の作成
  • パイロットテスト
    • パイロットテストを受けてのガイド修正

今回工夫したところで言うと、インタビューでの重要なポイントである「その人がどうリピート支援者化していったのか?」のコンテキストを探るために被験者の提示資料として以下のようなものを作りました。

ただ質問をしていくだけではリピート支援者につながるための重要なきっかけを見失ったり、時系列がごっちゃになったりする懸念がありましたので、話を聞きながらこういった年表を被験者の方と一緒に埋めながら認識合わせをしつつ、インタビューを進めました。
インタビューでよくある失敗は聞いてる側がユーザーのことを"わかったつもり"になってしまうことです。(しかもやっかいなことにこれらの失敗はなかなか気づくことができません。。)
そのためできるだけユーザーとの認識を合わせられるように、可視化できる部分は積極的に可視化することをオススメします!

ただこの年表には反省点もいくつかありました。
一番はフォーマットを3つの項目にわけ複雑にしたせいで、記録者の負担がかなり大きかったことです。
リアルタイムでの記録というだけでも大変なのにフォーマットに当てはまるように記録していくのは少し無謀でしたね。。次回へ活かせたらと思います!

いざインタビュー!

いよいよインタビュー当日です。
実際に対象とした特定カテゴリ支援者の条件に合う人に個別にメールを送りインタビュー依頼をすると、5名のユーザーさんが参加してくれました!
参加されてくれた方は皆さんとても協力的で、「どうして支援をはじめたのか?」「なぜそのカテゴリへの支援なのか?」「なぜリピートするようになったのか?」など直接支援者の方から聞けるとても貴重な機会となりました!
あらためてログやアンケートだけではわからない部分を聞くと一気にその人たちの解像度があがるなと実感しました。

【インタビュー当日のTips】

  • インタビューを見学しながらリアルタイムでの議論をする
    • インタビューは鮮度がとても大事です。インタビューに関係者をできるだけ多く呼び、見学してもらいながらたくさんの議論を交わしましょう!
    • 手軽にスタンプなどでリアクションをつけれるSlackのスレッドを活用するのがオススメです。
    • 慣れてないひとでも感想を投稿しやすいように関係者が積極的に意見をだしましょう!
  • デブリーフィングを行う
    • 鮮度が大事だという同じ理由で、少しの時間でも良いので、その時のインタビュー内容について、振り返りをみんなで行いましょう
    • その時にでたアイデアなどは別の場所に貯めておくと分析やアイディエーションの時に役に立ちます!

ペルソナ/価値マップ/ジャーニーマップの作成

無事にインタビューも終わり、いよいよ膨大な発話データと向き合う時間です。
詳細は今回省きますが、以下のような流れで分析を行いました。

  1. 被験者ごとの簡易まとめ作成(基本インタビューと同時進行)
  2. 発話データの補完
  3. 発話データの雪片化
  4. スペクトラムで似ているユーザーの洗い出し
  5. KJ法で個別の発話をグルーピング
  6. グループごとの関係性を矢印で可視化
  7. 価値マップ(正確には親和図)としてまとめ
  8. 価値マップからペルソナシートの作成
  9. 被験者と作った年表や価値マップ・ペルソナシートからカスタマージャーニーマップの作成

【分析のTips】

  • とにかくたくさん議論する!
    • 分析時には正解不正解というものはあまり重要ではなく、より多角的な視点が求められます。小さな発見もとりあえず発言しておくと他の方がさらに広げてくれたりします。成果物も大事ですが、分析フェーズでの議論から生まれたアイデアや発見が一番効果があったということも珍しくありません。
  • 自分たちの都合のいいように分析しない
    • 分析中に分析者がバイアスに囚われてしまうこともよくあります。あくまで分析者は客観的に中立であるべきです。知らず知らずのうちにユーザーの声を都合よく解釈していないか、めんどくさがらずに事実(記録)に立ち返って進めましょう。

今回は詳細まで公開することはできませんが、なんとなくアウトプットの雰囲気だけ見ていただければと思います。

ペルソナ

価値マップ
実際こうしたアウトプットをみてみると、我々の持っていた仮説はかなり当たっていました!
詳細は控えますが、特定カテゴリに支援しているからといって同じ価値観を持っているわけではなく、あくまで自分の考えや信念といったものに共感ができるプロジェクトが支援の対象となっていました。
また、リピート支援者は、支援後もそのPJの活動を追い続けてSNSをフォローしたり、その流れで新たなPJを発見したりと自発的な良い支援の循環サイクルを持っているんだなと実感できました。


ジャーニーマップ
今回はペルソナのジャーニーマップも作成しました。リピート支援者するまでの流れを細かくインタビュー内で深堀りしましたので、それを時系列に沿ってマッピングしています。
こうしてマッピングしていくと「初回に支援するためのきっかけはなんなのか?」「そこでどんな体験をすれば2回目の支援につながるのか?」「それが当たり前となるためにはどんな環境が必要なのか?」が可視化され、関係者間での共通認識へとつながります。
今回の調査では「ずっと自分にできることはないかと思っていた」という人も多く、クラウドファンディングという手段を見つけてしまえば、意外にもそこで寄付するハードルもそこまで高くなかったようです。こういった何かしたくても手段を知らない人にアプローチしていくことは、新規支援者を獲得する上でも重要だと感じています。(リピート支援者を増やす話題とは逸れますが、、)

リピート支援者を増やすためのアイディエーション

今回のインタビュー結果からでたアウトプットをもとに、調査に協力してくれた皆さんと一緒にアイディエーションを実施しました!

「こういう施策をしたらペルソナが喜ぶんじゃないか?」「リピート支援者化するためのきっかけとしてこういうものを提供したらいいんじゃないか?」という観点でたくさんのアイデアが出たのでいくつか紹介できればと思います。

  • 年1でその年に支援したPJの活動報告やらで使われた写真が動画になって送られてくる
  • 支援した団体との結びつきを強め、リピート支援を誘うため、実行者のSNSフォローをより促すUIにする(PJページの実行者のアイコン横にSNSアイコンを表示するなど)
  • 支援時にリターンなし支援を任意で選択できるようにする
  • 活動報告にリアクションスタンプ機能で気軽に反応を示せる など

まとめ

久しぶりに実際のユーザーさんに直接話を聞く機会ができたことで、新たな発見とプロダクト関係者間でのユーザー像のすり合わせができてとても有意義な案件でした!
先にも書きましたが、やはりどうしても提供側に立ち続けると実際のユーザーを”わかったつもり”になってしまうことはあるあるなので、定期的にインタビュー調査は実施するべきだなと感じました。

あと思ったのは、過去にいくつかの会社でリサーチを手伝ってきましたが、READYFORの皆さんはすごくリサーチに積極的ですし、分析での議論も活発だなと思っています!ユーザーに対して興味をもち、自分のアイデアを伸び伸び話せる社風はすごく素敵ですね!

脚注
  1. クラウドファンディングのプラットフォームサービス ↩︎

  2. クラウドファンディングのプロジェクトを支援する人 ↩︎

READYFORテックブログ

Discussion