Web制作者が稼ぐためのOSS活動してたらStripeからの支援が決まった話
OSS活動をしてたら、オンライン決済プラットフォームを運営する「Stripe」からGitHub Sponsorsを通じて支援いただけることが決まりました。
サイボウズさんの 「GitHub Sponsorsを使って「企業」として寄付をした話」 から広がり、日本でも「OSSに対する支援をする/受け取る」ことが話題にあがることが増えたので、何をしてきたかみたいなことを簡単にまとめます。
[Web制作者 = 自分]が稼ぐ環境がほしかった
2017年(もう5年前!)にWeb技術でモバイルアプリをつくるための Ionic Frameworkのイベントを東京で開催した のがきっかけだったように思います。当時は日本でのIonicの人気は下火で、最新のノウハウや事例が出回っていなかったので、それを得るためにMeetupを開催しました。 続いて取り組んだのが確か Ionic日本語ドキュメンテーション 。日本語でドキュメントが読めるようになったらユーザが増えてノウハウなどの情報が増えるかなと。
今では、Angular、React、Vueの進化であったりユーザ数の獲得、また 三井住友銀行アプリ などの大手アプリであったり、 TechFeed や 週末モデル といったサービスの基盤に採用されて普及したことを考えると隔世の感がありますよね!
私がIonicに興味をもったきっかけは、1つのコード書いたら、Webだけではなく、App StoreとGoogle Playで配信できることでした。SEOという言葉は当時でも流行ってましたが、これって結局は「検索ツール」というユーザの接点を大きくすることが目的なわけです。 それならアプリ化したら「ユーザの接点を増やせる」。もっというと、受託でも付加価値がつけれるというかWebアプリだけつくった時より3倍以上の単価になるかも!(※ネイティブの方が比較的単価が高いです)。
それを支えているツールのひとつに「Capacitor」というクロスプラットフォームライブラリがあります。どういったものかは 「私にとってのCapacitorの立ち位置と、Web制作者がCapacitorでアプリをつくれるようになるということ」 で紹介してるので割愛しますが、新しいライブラリとして公開されたばかりの時、唯一弱点がありました。
それは「稼ぐためのツールとして採用してるのに、稼げるためのプラグインが足りない」ことでした。アプリで稼ぐ方法は大きく分けて以下の方法があります:
- 受託開発/運用して収入をもらう
- アフィリエイトで収入をえる
- アプリ上で販売して収入をえる
なのですが、最初「アフィリエイトだAdMob(Googleのアプリ内広告)だ!」と考えた時に気づいたわけです。プラグインがないとAdMobを使ってネイティブな広告をだせない。そこで、 @capacitor-community/admob というプラグインをつくりました(厳密には rahadurr
のレポジトリがメンテされてなかったのでそこから rdlabo
にForkしたものを rdlabo-team
にMOVEして、 capacitor-community
に移行しました)。
そして次に思い立ったのが「アプリ上で物販したら儲けることができるのでは」でした。iOS、Androidともにデジタルコンテンツの決済ツールとしてのアプリ内課金縛りがありますが、物販は好きにしろというスタイルです。そこで決済ツールの @capacitor-community/stripe のメンテナになって様々なリリースをしてました。最近でいうと、ドキュメンテーションの整備ですね。
こうやって取り組みをしていたのをTwitterなどで発信してたところStripeの方が見かけて、「Capacitorまわりでどんな活動してるの?」と連絡をもらったのがきっかけでした。
ただの「おすそわけ」としてのOSS
上記の通り、私のOSS活動ってそう高尚なものではないというか、
- Ionicが日本で使われてないから情報がろくにない。Meetupやって登壇してもらおう
- ユーザ増えて情報欲しいから、日本語ドキュメンテーションつくろう
からはじまって、
- 「やべー、Facebook Login実装って要件に入れちゃったよプラグインつくろう」 → @capacitor-community/facebook-login
- 「アプリに広告だしたい」 → @capacitor-community/admob
- 「物販しよう」 → @capacitor-community/stripe
ぐらいものなんです。みんなの使うものをつくって貢献しよう!!といったものでなく、 自分が使うものをつくって、それをパブリックにして、READMEをつけるおすそわけ程度のものです。メリットとして、自分で気づけなかった不具合を報告してもらえるなどありましたが、「つくったからついでに配布しておこう」ぐらいの意識の低さでした。
OSSへの参加を業務にしたり
もうちょっというと、業務をOSSに向けたりもしています。昨年ぐらいからセミナー依頼を受ける時に、Ionic日本語ドキュメンテーション など各種ドキュメントに該当する部分が未翻訳の場合、業務内容に「セミナー」だけでなく「ドキュメント翻訳」も提案しています。そして受講者の参加要件に、翻訳したドキュメンテーションを読んできてることを入れ込みます。
というのも、本当に初心者向けの講座の場合、受講者のレベルによっては「ドキュメントのチュートリアル程度しかできない」となりがちなんですよね。けれどドキュメントのチュートリアルを終わらせていたら、次のステップを話せる。 そういえば、 capacitor-community/barcode-scanner
が要件にあわないのでつくった https://github.com/rdlabo-team/capacitor-codescanner もいえばそのひとつです。こういう意味では、業務委託であっても提案によってはOSS活動を業務にできます。
まとめ
そういう意味では今回評価いただいた私のOSS活動って「よし素晴らしいことするぞ!」というのはスタートから一貫してなくて、「使いたいからつくるかー」「つくったからおすそわけするかー」「業務でつくるものをパブリックにするか」ぐらいのものでした。 この記事のタイトルに「Web制作者が稼ぐためのOSS活動してたらStripeからの支援が決まった話」とつけましたが、もうちょっと細かく書くと
Web制作者(私)が稼ぐため(情報集めようと思ってMeetupやったり、ツールつくっておすそ分けしたり、お金もらって当該部分のドキュメント翻訳したりとオープンに)OSS活動してたら、Stripeからの支援が決まった話
でもあるかなと思います。 「OSS」というと、難しそう自分は無理だと思われがちですが、おすそ分け程度であってもそれを役立つといってくれる人もいます。その取組に対して、今回私がいただいたGitHubスポンサーというフレームだけではなく、採用であったり応援であったりと様々な形で注目するような時代になったので、「実はパブリックにできる取り組みがいろいろあって」という方はまず公開してみてもいいのではないでしょうか。
また、こういった私の活動に注目し、支援を決めていただきましたStripeには本当感謝です!
おまけ
今回の話で、ずっと先送りにしていたGitHub Sponsorsのページをつくりましたので、「そういうことならうちも支援する!」という会社がありましたらぜひご検討いただけましたら幸いです。
それではまた。
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