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デザインというサービスを提供することを考える

2023/01/31に公開

1 この記事を書こうと思ったきっかけ

この記事を書こうと思ったきっかけ,もっと正確に言うとこの記事に書いていることを考えるようになったきっかけは,インターン先の先輩に言われた「rayさんはまだ,ビジネス視点をきちんと身につけられていないように見える」という言葉です.

昨年末の先輩との個人面談(的なもの)でワークスタイル的なことを相談したら途中からキャリアイメージの話に発展し,その末に最後の方に言われたのが冒頭のセリフでした.

たしかその場では「ビジネス視点が大事なのは解ってるんですけど〜,それをどうデザイナーとしてのスタンスに組み込んでいけばいいのか悩んでて……」みたいなよくわからん返事をした記憶があります.まあ図星だったのでね.がは.

そういうわけで,これはその先輩からの問いかけに対する私なりのアンサーソングです.ビジネスとしてリリースされていくプロダクトに,デザイナーの立場でどう向き合っていけばいいのか.

1.1 前提の補足

本題に入る前に,一応前提となる私の状況を簡単に整理しておきます.知ってるよ〜という人は 2 まで読み飛ばしてください.

インターン先は所謂クライアントワークの会社です.「企画 \to デザイン \to 実装 \to リリース」というフローの中の「デザイン」の部分に特化してお力添えする感じ.実際に実装するのはクライアント企業所属のエンジニアさんだったり別の開発会社のエンジニアさんだったり色々です.

そこで私が関わっているプロジェクトの 1 つがとあるモバイルアプリ[1]のデザイン改善です.私が参画してからは(最初を除き)収益導線の改善の話が多かったです.所謂広告とかアプリ内プレゼントキャンペーンとかそういうの.

2 学生サークル開発という理想郷

2.1 自分的ユーザ至上主義三か条

最初に関わったプロジェクトがそういうものだったのがおそらくあまりよくなかった.KPI[2] を分析してここ変えたら数値改善しそうだなというポイントを図に起こして,最後は UI として表現する,その流れが自分の思想と相反しているように見えて,暫く私のモチベは目に見えて地に落ちました[3]

さて,この自分の思想というやつですが,インターン先で仕事を始める前から一応自分の中に存在していました.デザインを作る時の判断の優先順位みたいなもので,自分ではユーザ主義とかユーザ至上主義と呼んでいます.

  1. ユーザに不利益を与えないこと.
  2. ユーザに利益となるものであること.
  3. その他デベロッパー側の都合は,全て上記に対して劣後すること.

私は収益導線がこの上なく嫌い[4]なので,少なくとも自分を想定ユーザとした時には収益導線の存在は 1. に反することになります.そして KPI を改善したいというのは言ってしまえば運営側の都合なので 3. になります.この,3. に入るはずのものが 1 番大事にすべきものより上位に来ている状態が,個人的にかなり気持ち悪かったのだと思います.

2.2 TitechApp には KPI が存在しない

ここで少しだけ,私が所属している大学サークルの話をします.Titech App Project という非公認のデベロッパーサークルに所属しています.TitechApp という大学生活がちょっと便利になるアプリや Titech Info という学内の情報が載っている web サービスを提供しています[5]

そんな弊サービスは修士課程以上の学生を対象に収益化を行っていますが[6],これも今の寡占状態を利用して荒稼ぎをしてやろうという魂胆ではなく(たぶん……)もしこの有料化に反発して新しい競合サービスが出てくるようなことがあればそれもいいよね,というスタンスでした.

そんなサービスなので,当然 KPI という概念もありません.時々学年別の普及率を眺めてすごいね〜となるくらいです.サービス改善の議論は完全にユーザビリティベース(そしてエンジニア陣のやる気)で,そんな環境が私は大好きでした.おそらくユーザ主義な自分のスタンスもこの環境があったからこそ形作られてきたものだと思います.

私はこのサークルに入っていなければデザイナーを目指すことはなかったですし,最初に「ユーザを大切にしたい」という自我を確立できたことは間違いなくよいことだったと思っています.今後ビジネスとしてサービスをリリースしていく世界に身を置き続ける以上,その中でユーザビリティとビジネスのバランスを取っていくなら今はユーザビリティへの思いが重すぎるくらいがちょうどいい.たぶん.

なので私は,弊サークルの考えと環境はいつまでも肯定し続けるつもりです.しかしそれとは別に,私が今後メインで身を置く環境がビジネスとしてサービスを作る世界だというのも事実です.その現実と上手く折り合いをつけることができなければデザイナーとして働き続けるのも難しい,というか自分の性格的にしんどいだろう,という危機感は持っていました.し,学生という免罪符が機能しているうちに向き合うべき課題なのも間違いなかったと思います.

3 ユーザ至上主義がユーザ至上主義を殺す

終わりが見えてきました(書く側の視点).ちなみに現在 2023 年の 1 月 29 日です.なんでお題をもらってから 1 ヶ月以上経ってるのに書き終わってないんですかね.結論自体は 1 月の半ばくらいに出ていたと思うんですが…….

このセクションでは,まあ単純に自分の視野が狭すぎたよね!という話と,ユーザビリティが 1 番大事という姿勢は変えずに解釈を拡大することでユーザ至上主義をユーザ主義に昇華したい,という話をしたいと思います.

3.1 自分はなんのサービスを提供しているのか

まず 1 点目,自分が提供に関わっているサービスとは一体なんなのか,という話.

私は自分のことを,ユーザにアプリを提供するサービスにデザイナーとして関わっている,と認識していました.そのこと自体は間違いではないですし,もしこれが自社サービスであったら実際それ以上でもそれ未満でもなかったはずです.

しかし冒頭で書いたように,私が所属しているインターン先は自社開発ではなくクライアントワークの会社です.つまり私は,クライアントのサービスのデザイナーであると同時に,「クライアントの求めに応じてデザインを作成する」というサービスの提供者でもあると言えます.このサービスのユーザはクライアントなのだから,ユーザにとってよい UX を,よい UI を,と言っていてもクライアントが納得してくれるようなものを出すことができなければ,それはデザインというサービスのユーザを蔑ろにしていることになりはしないか.そういうことを考えました.

エンドユーザを大切にすることは正しいことだと思っています.それと同時にクライアントも自分が提供に関わっているサービスのユーザだということを理解した上で,彼らの利益を出したいという気持ちにしっかり寄り添っていく,それができて初めて「ユーザを大切にしています」と胸を張れるのではないかとも思ったのです.

3.2 ユーザにとっての 1 番の不利益はなにか

  1. ユーザに不利益を与えないこと.
  2. ユーザに利益となるものであること.
  3. その他デベロッパー側の都合は,全て上記に対して劣後すること.

2.1 節で私が掲げた三か条です.その際私は 1. を理由に収益導線の不当性を主張しました.その上で,利益を上げたいというのは 3. に該当するのでこれが 1. に優越するのはおかしい,という論理展開をしました.

しかしこの論理には 1 つ大きな欠陥があります.報酬と引き換えに,私たちデベロッパーはユーザに対して一定の責任を負います.それは利用に値するサービスであり続けるという責任であり,不用意でサーバを止めないという責任であり,不具合には可能な限り速やかに対処するという責任であり,利用してくれるユーザがいるサービスを死なせないという責任です.

収益を目的とせず,メンバーへの報酬の支払いがないサークルにおいてはこの責任がありません.実際開発状況はメンバーのやる気に大幅に依存します.改善も不具合対応も保全も怠ったからといって始末書を書かされることもありません.たぶん.

そうではなく,サービスがビジネスとして機能し続けるためには,関わっているデベロッパー全員がユーザに責任を負う必要があります.そしてデベロッパー全員に責任を要求するためには,サービスが報酬を保証できるだけの収益を上げなければならない,はずです.それができずにサービスを死なせてしまうことこそが最も 1. に反することなのではないか,ということを言いたいのです.

過度に 1. を追求することは,最悪の形で 1. に反する結果に繋がりかねない.だから結局「ユーザを大切にするならまずはサービスを死なせないこと」「ユーザはこのサービスが提供され続けるためならどこまで許容してくれるのか」の 2 点を常に意識し続けるのが本当のユーザ主義というものだったのではないか,そんな結論に至りました.

4 おわりに

この結論(特に 3.1 で書いたこと)に気付いた時はすごいハッとするような感覚があったんですが,半月経って文章に起こしてみるとなにこいつ当たり前のこと言ってるんだ?って気持ちになりますね.本当にこれで記事公開するんですか.まあ本質なんてきっと思っている以上にシンプルなことが多いんじゃないでしょうか.たぶん.

ここで書いたようなことに気づけたのは今のインターン先のいいところ,というか価値のあるところだったんじゃないでしょうか.特に自社開発の会社でインターンしていたら 3.1 で書いたような視点は身に付かなかったと思います.

とりあえず一定満足するものが書けたので終わり.4700 字でした.教養卒論[7]にするにはちょっと足りなかったですね.

脚注
  1. 全力でぼかします.万が一特定される書き方をしようものなら殺されるので ↩︎

  2. 売上が変動する要因として重視するデータのこと.広告で収益を確保しているアプリだと,DAU(1 日どれだけの人が開いてくれるか)・リテンション(利用継続率)・導線のクリック率や PV 数などが KPI になってきます ↩︎

  3. 当時は給料をもらっていることに対する最低限の責任感と昇給で周りに遅れたくないという恐怖だけで仕事をしていました.それでも最初は同期とギリギリ同時に上がれたので,生来のクソデカ責任感が明確に役に立った初めての例. ↩︎

  4. Twitterで出てきたプロモーションツイートを全てブロックしていたらブロックアカウント数が3000を超えました ↩︎

  5. 開発や保全の状況はサークルメンバーのやる気に大幅に左右されます.現状のサービスに不満や意見がある方はぜひ入部をご検討ください(提案すれば割と自由にやらせてもらえます) ↩︎

  6. 月150円です.学部生も寄付自体はできるよ!いただいた収益は私たちの開発費用や飲み代になります ↩︎

  7. 東工大 3 年次全学共通必修.5000 字以上書くと 2 単位もらえます ↩︎

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