チームトポロジーで考えるAI時代の開発組織と豚カツ屋
本記事の3行まとめ
- チームトポロジーは「早く・安全に価値を届ける」組織設計のフレームワーク
- AI時代だからこそ、4つのチームタイプと認知負荷の考え方を理解する
- すべての事象は豚カツで説明できる
はじめに
2025年、生成AI(GitHub Copilot、ChatGPT、Claudeなど)が急速に普及し、開発現場はかつてないスピードで変化しています。
ツールは便利になった一方で、 「新しい認知負荷」 をチームに持ち込んでいるのではないか?という問いが浮かびます。
この記事では、ソフトウェア組織設計のフレームワーク 「チームトポロジー」 をベースに、AI時代に改めて考えるべき組織デザインについて整理します。あと豚カツの話をします。
チームトポロジーとは?
チームトポロジー(Team Topologies) は、2019年に出版されたソフトウェア開発組織の設計論です。2021年に日本語訳が出版されています。
ポイントは「認知負荷を適切に分散させ、価値を早く・安全に届ける」こと。
本記事で紹介する主なキーワードは以下です:
- 認知負荷:チームが処理できる情報量には限界がある
- 4つのチームタイプ:ストリームアラインド、プラットフォーム、コンプリケイテッド・サブシステム、イネイブリング
- 3つのインタラクションモード:コラボレーション、ファシリテーション、サービス提供
※書籍では、他にも逆コンウェイ戦略、チームAPI、組織的センシング、チームサイズ(ダンバー数) など、多くの重要な概念が紹介されています。
4つのチームタイプ
チームトポロジーでは、すべてのチームを次の4種類に分類します。
チームタイプ | 役割 | 具体例 |
---|---|---|
ストリームアラインド | 顧客価値を直接届ける | ECサイト検索、決済機能 |
プラットフォーム | 共通基盤を提供する | CI/CD、クラウド基盤 |
コンプリケイテッド・サブシステム | 高度な専門領域を担う | 暗号化ライブラリ、レコメンド |
イネイブリング | 学習・支援を行う | アジャイルコーチ、テスト自動化支援 |
豚カツ屋におけるチームトポロジー
概念をイメージしやすくするために「豚カツ屋」で例えてみましょう。
- ストリームアラインドチーム=ホール・キッチンスタッフ(お客に直接価値を届ける)
- プラットフォームチーム=POSシステム、調理器具、おいしい豚などの調達(基盤整備)
- コンプリケイテッド・サブシステムチーム=先代から続く秘伝のタレ(専門性・複雑性)
- イネイブリングチーム=接客トレーニングの開催、食材の品質管理研修(能力移転)
完成した「トンカツ=顧客への価値」と考えると、組織設計のイメージが掴みやすいはずです。
生成AIにおける新たな認知負荷のリスク
生成AIは「導入すれば便利」という単純な話ではありません。
ストリームチームにとっては、AIそのものが新しいドメインとして立ち現れ、学習コストや運用ルールが増えることで認知負荷を高めるリスクがあります。
ありがちな落とし穴
- プロンプト作成やガイドライン学習に時間を取られる
- アップデートが早く覚えることが多すぎて疲れてしまう
- セキュリティやガバナンスのルールが増えて開発が重くなる
解決の糸口
チームトポロジーの観点を応用すれば、これらは制御可能です。
- プラットフォームチーム:安全に使えるAI基盤を整備する
- イネイブリングチーム:AIリテラシーやプラクティスを教育・支援する
- インタラクションモードを切り替え、状況に応じてコラボレーションやファシリテーションを実施する
まとめ:AI時代でも有効な組織デザイン
- チームトポロジーは技術論ではなく組織デザイン論
- 生成AI時代に重要なのは、便利さよりも認知負荷をどうコントロールするか
- 個人の努力に頼るのではなく、仕組みとしてチームを強くすることがカギ
行動提案
- 自分のチームを4タイプに当てはめてみる
- チームAPI(目的・責務・連携方法)を1文で書いてみる
- AIツール導入時に「認知負荷は増えていないか?」を問いかけてみる
参考文献
今回紹介した内容は、チームトポロジーの一部です。より深く学びたい方は、ぜひ書籍を手に取ってみてください。
おわりに
今回の記事は、福岡でのLT登壇をもとに再構成しました。
「チームトポロジーをAI時代にどう実践できるか?」という視点が、みなさんの現場にもヒントになれば幸いです。
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