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5G NSAとはなんですか?

2022/12/18に公開

この記事はBBSakuraNetworksアドベントカレンダー2022の18日目の記事です。

皆さんこんにちは。rkumakuraと言います。
会社のアドベントカレンダーを機にblogを始めてみました。(のんびり書いていきたい)

本日は、たまーにモバイル業界界隈で聞く5G NSAについて、自分の勉強も兼ね記事を書いていこうと思います。

5GとNSAの関係

5Gについては皆さんお聞きになったことが多いと思います。(CMもよく流れたりしてますよね)
一方NSAはどうでしょうか??5Gという言葉に比べると知名度はほとんどないかもしれません。
普段皆さんが当たり前のように利用されている5Gですが、実はその5GとNSAはとても深く関係しています。NSAとは5Gのアーキテクチャ構成を指す言葉になっています。

NSAとは?

NSAとはNon-Stand Aloneの略語です。
各国の通信事業者が5Gを世の中に広げていく過程で、どのような構成/展開シナリオが考えられるか?3GPP[1]上で定義された5Gアーキテクチャの構成方式を指します。

3GPP TS37.340より

NSAには複数種類(Option)が用意されていまして、上記画像のNSAはCoreシステムがEPC、RANシステムがLTE(4G)+NR(5G)を使う方式の構成になっています。
複数のRANを利用するため、MR-DC(Multi-Radio Dual Connectivity)と呼ばれ、特に上記画像の構成をEN-DC(E-UTRA[2]-NR[3]Dual Connectivity)と言います。

NSAは既存LTE(4G)に5Gを加えることでより高速な通信サービスを実現しています。

5Gの展開シナリオっていろいろ

ここからはNSAについてさらに踏み込んでいきたいと思います。
先ほど軽く5Gの展開シナリオについて、3GPP上で定義されていてNSAは複数種類(Option)が用意されているとお伝えしました。ここでNSAはどんなOptionが用意されているか確認してみます。

5G deployment option(3GPP TR38.801/RP-161266より)

展開シナリオは大きく分けると、NSAとSA方式に分ける事ができます。その中で各国の通信事業者は自分たちのネットワークを考慮し、どのOption(以降Opt)が適当か、その後のマイグレーションをどうするか検討して選択します。

ここでSA(Stand Alone)方式についてご説明しますと、Coreシステムに対して1つのRANシステムが接続している方式を指します。

SAについて最近真の5Gという謳い文句?で、NSAの超高速・大容量通信という特徴に加え、超低遅延、多数同時接続も可能になったと各社がアピールしていますが、世間で言っているSAはCoreが5GC、RANがNR単独という構成になっており、3GPPの世界ではOpt2になります。

NSAとSAの大きな違いは、RATが単独か、複数RATを利用するかです。なのでNSAの場合、Opt4/7のようなCoreが5GCでRANがLTE(4G)+NR(5G)でもNSAと呼ばれます。

では国内の通信事象者は、NSAについてどのOptionを選択しているでしょうか?また世の中的にはまずNSAがサービス開始されましたが、それは何故なんでしょうか?

Option3を選択

まずは結論からお話しますと、Opt3を各社選択しています。
その理由は、上の方で記載しました「各国の通信事業者は自分たちのネットワークを考慮」という言葉にヒントがあります。つまり国毎でどのようにモバイルネットワークを構築し展開してきたかによって、選択するOptionが変わってくるのです。

日本の場合、LTE(4G)に対して多額の投資を行いサービス展開してきました。そのため既存の基盤を十分に生活かしたいと考えるし、5Gシステムをいきなり単独で構築しサービス提供する(つまりOpt2のSA)にしても、時間もコストもかかり過ぎてしまいます。

それらの懸念を解決するために選択候補となるのがOpt3となります。
Opt3の特徴として以下があります。

1. Opt3(NSA)はEPCを流用するため開発期間/投資を抑えられる
2. Opt3(NSA)はLTEのカバレッジを利用可能

5Gでは高周波数帯も扱いますが、電波が飛ばずエリアが広範囲にカバーできません。
そのためOpt2でサービス提供を考えた場合、全国をカバーするにはとてつもない数の基地局を展開する必要があります。

それならばまずはNSAでEPCを利用しつつ、既に広範囲にエリアカバーができているLTEカバレッジを利用して、5Gサービスを提供したいと事業者は考えたと想像します。
それらの利点を活かしたOpt3(NSA)を事業者が選択したのは妥当かなあと思います。

Option3はさらに分類される?


Option3(3GPP TR38.801より)

Option3a(3GPP TR38.801より)

Option3x(3GPP TR38.801より)

Opt3には3(無印)、3a、3xがあります。これらは何が違うのかというと、U-Planeの通るパスやDC(Dual Connectivity)によりスループット向上、トラヒック分散をしているかどうかが違いになっています。

ここでポイントになるのが5Gで新しく割当された高周波数帯です。ここで誤解を恐れずに言ってしまうと、もうLTE(4G)まででモバイルで使えそうな周波数帯は埋まってしまい、5Gの要件である超高速・大容量通信を実現するには広い帯域幅が空いている高周波数帯を使うしかなかったのです。

ではOpt3/3a/3xの中で超高速通信を実現させるのに一番適したものはどれでしょうか?
答えはOpt3xです。国内事業者も選択して、世界の他の国でも採用する事業者が多いです。

別の図を使ってそれぞれの特徴を説明し、どうして3xを選択したか考えてみます。

Opt3はeNB側にトラヒックが集中


Opt3

5Gの高周波数帯で扱う広帯域幅を利用するとLTE(4G)と比較しても10倍以上ものトラヒックが流れることになります。この方式の場合、eNBがC-Planeも制御しつつ大容量のU-Planeも処理する必要があることから、eNBの処理能力向上やバッファ拡張が必要となり、システム負担コストが増大する懸念があります。

Opt3aはeNB/gNBどちらかにトラヒックを寄せる


Opt3a

この方法の場合、そもそも片方側にトラヒックを寄せることになるためDCが利用できず、スループットも向上できません。

Opt3xはgNBに大容量トラヒック処理を担当してもらう


Opt3x

Core側からの大容量トラヒックをまずgNBが処理することで、eNB側の処理負荷を軽減するとともにスループット向上も可能です。C-Planeの処理はeNB側が担当し、gNBはU-Planeに対して専用システムとして振る舞うことになります。

以上の理由から、国内事業者はOpt3xを選択しシステムコストを軽減させながら、5Gの超高速通信を実現させていると考えられます。

NSA(Opt3x)を3GPPシーケンスから眺めてみよう

今度はシーケンスを基にNSA(Opt3x)ではどのような処理が行われているか確認していきます。ここからは3GPPの具体的な処理になるため、3GPP用語も頻出しわかりづらいかもしれません。
もし全体像のみ知りたい場合は、最後の方にポイントだけ絞ったサマリーを記載しておりますので、そちらをご確認ください。

Attach procedureから眺める


Attach procedure(3GPP TS23.401より)

UEがNRとのDC(Dual Connectivity)をサポートしている場合、UEは1.Attach RequestのUE network capability IEのDCNR bitをdual connectivity with NR supportedに設定します。


Attach procedure(3GPP TS23.401より)

次にMMEは既存通り認証処理後、HSSから加入者プロファイルを取得します。
その時、11.ULA(Update Location Answer)のAccess-Restriction-DataにNR as Secondary RAT Not Allowedが有効設定されているか確認します。
有効設定されておらず、NRを利用可能であるとMMEが判断した場合、セッション確立後のAttach Accept内にあるEPS network feature support IEのRestrictDCNR bitをUse of dual connectivity with NR is not restrictedに設定しUEへ送信します。


Attach procedure(3GPP TS23.401より)

MMEはセッション確立時にNRの通信速度などに応じたGW選択をするために、DNSのService Parameterに"+nc-nr"を付与して適切なGWを選択します。
選択したGW向けに12.Create Session Requestを送信しセッション確立後、17.Attach AcceptのRestrictDCNR bitをUse of dual connectivity with NR is not restrictedに設定しUEへ送信、NRが利用可能となります。
またeNBは18.RRC Configuration ReconfigurationでUEに対してNRの電波測定を指示します。
UEは指示を受け、NRの無線品質をeNBに報告します。

EN-DC Secondary Node Addition procedureから眺める


EN-DC Secondary Node Addition procedure(3GPP TS37.340より)

上記のシーケンスはLTE側のAttach処理が完了後のもので、1~6でeNBが主体でgNB側を追加し、UEとgNB側が接続する手順になっています。

eNBはgNBを追加後、U-PlaneパスをeNBからgNB経由に切り替えを実施するため、MMEに9.E-RAB Modification IndicationでgNBのU-Planeパス情報を伝えます。
MMEはS-GWへ10.Modify Bearer RequestでgNB情報を伝え、S-GWからのDLパケットをgNBに送信するように変更します。

S-GWはEnd MarkerをeNB側へ送信し、パケット送信の終了をeNB経由でgNBに伝えます。その後S-GWが受信したパケットはgNB→UE経路となり、併せてgNB→eNB→UE経路と組み合わせる事でDCによるスループット向上を実現します。

最後にNR情報を元にUEは画面のピクト表示を選択します。

端末における5Gピクトの表示について(総務省資料より)

まとめ

ここまで5G NSAをざーっとまとめてきました。ここでは全体のサマリーを記載します。

NSA(Opt3x)を選択することのメリット

  1. Opt3(NSA)はEPCを流用するため開発期間/投資を抑えられる
  2. Opt3(NSA)はLTEのカバレッジを利用可能
  3. Opt3xは5Gによる大容量トラヒック処理をgNBが負担でき、DCによる速度向上も可能

NSA(Opt3x)の動作処理のポイント

  1. 高速大容量通信のための最大ビットレート拡張が必要(S1-C/X2/NAS/S6a/GTPv2など)
  2. 5G端末能力に基づき対応EPC(GW)を選択(DNSのService ParameterにNR用を新規追加)
  3. 加入者契約でNR利用判定処理(LTE only契約者にNRを利用させないようにする)
  4. eNBのgNB追加処理/U-Planeパス切り替え処理(gNB経由でトラヒック制御)
  5. UEアンテナピクト(5G/4G)表示の対応

いかがだったでしょうか?自分にとっても勉強と言う意味合いもあったため、正確ではない部分もあるかもしれませんがそこはご了承頂ければ幸いです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回はRAN側で何か記事を書きたいなあと考えております。

脚注
  1. 3GPP:モバイル技術仕様の標準化団体の名称(https://www.3gpp.org/)
    TS/TR/RPなどは3GPPのドキュメントを指す(https://www.3gpp.org/specifications-technologies/specifications-by-series) ↩︎

  2. E-UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access):LTE(4G)を指す ↩︎

  3. NR(New Radio):5Gを指す ↩︎

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