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引用: 経営行動

2023/06/05に公開

引用

"選択"を可視化するためには何が必要か? という観点で、選択に関係のある部分を抜粋しました。
また本記事は、選択とは 概念編の引用部分に相当します。

参考文献自体は1978年のノーベル経済学賞を受賞したHerbert A. Simonの書籍なので信頼できるものかと思います。

  • 書籍情報
    • 題: 新版 経営行動 経営組織における意思決定過程の研究
    • 著者: Herbert A. Simon
    • 訳者: 二村敏子 / 桑田耕太郎 / 高尾義明 / 西脇暢子 / 高柳美香
    • 発行所: ダイヤモンド社

以下、引用部分と可視化の視点でのコメントを下部に書いていきます。


引用010

P1 経営は、通常、「物事を成し遂げること」の技法として論じられる。特に、機敏な行為を保証するための過程や方法が強調される。人々の集団から一致した行為を確保するために、諸原則が提示される。しかしながら、この論議の全てにおいて、全ての行為に先立つ選択--現に行われることよりも、むしろなにがなされるべきかを決定すること--に対して、あまり注意が払われない。本書が扱おうとすることは、この問題--行為に導く選択の過程--である。

  • 用語定義: 選択
    • 本書での意味: 目的をもった選択に限る。
  • 用語定義: 行動(行為)
    • 本書での意味: 目的をもった行動に限る。行為と行動をほぼ同じ意味として扱う。

引用020

P4 多くの行動、特に経営組織内の個人の行動は、合目的的である

  • 用語定義: 合目的 [形動]ある物事が、一定の目的にかなっているさま。(weblio辞書)
    • 本書での意味: 参考書と同等

引用030

P4 ある過程によって、この数多くの代替可能行為は、実際にとられる一つの行為へとしぼられる。この過程を指す場合、「選択」と「決定」の言葉は、この研究では同義語として用いられる。

  • 用語定義: 決定
    • 本書での意味: 決定と選択は別とする。決定とは選択肢から一つの行為が確定した状態や、選択というステップが終了したことを意味する。

引用040

P6 決定のハイアラーキー
合目的性の概念には、決定のハイアラーキーの考えが含まれている--ハイアラーキーにおいて下に向かう各段階は、そのすぐ上の段階で示された目標の実施である。
行動は、それが一般的な目標あるいは目的によって導かれるかぎり合目的的である。行動は、それがあらかじめ選ばれた目標の達成に貢献する代替的選択肢を選択するかぎり、合理的である。

決定のハイアラーキーは目的のハイアラーキーと同一で、本書では目的と手段の階層と呼ぶ。


引用044

P6 これらの目標の意識的あるいは熟考した統合が、決定にさいして行われないときでさえも、統合は、一般に、実際には行われることに注目すべきである。自分の機関のための意思決定をしようとするとき、レクリエーションの行政管理者は、種々の、またときに互いに矛盾する目的を、その相対的な重要性の観点から相互に比較考慮しなければならない。

統合された価値体系から決定をくだすこともできるし、逆に、決定から価値体系を導くこともできそう。
具体的には階層分析法 (analytic hierarchy process : AHP)など


引用050

P55 主要用語の曖昧さ 「目的」は、それをめざして活動を行う対象あるいは目当てとして、ほぼ定義できよう。「過程」は、目的を達成する手段として定義できよう。したがって、目的を達成するために過程が展開される。

  • 用語定義: 目的
    • 本書での意味: 参考書と同等(「目的」は、それをめざして活動を行う対象あるいは目当て)

手段とは目的を達成する過程である。よって、手段の演算で目的を示すことができれば妥当性のある手段になると考える。

  • 手段 = 目的となるケース
    • 例) 手段1 + 手段2 + 手段3 = 目的 ← 順不同であれば、独立した進捗など
    • 例) 手段1 + 手段2 + 手段3 = 目的 ← 順序がある場合は、詳細化されたスケジュールなど
    • 例) 手段1 * 手段2 * 手段3 = 目的 ← KPIなど

引用060

P55 しかし、、目的はそれ自体、一般に、ある種のハイアラーキーを形成していよう。

目的と手段の階層について


引用070

P90 すなわち、ある事象がおきるならば、われわれは、その言明は真実であったといい、他の事象が起きるならば、虚偽であったという。このことは決して、それが真実であるか虚偽であるかを、われわれがまえもって決めうることを意味しない。ここに判断が介入するのである

知識の不完全さが、判断を生む。


引用080

P92 決定の過程は、せいぜい二つの主要部分に区分されうると期待できるにすぎない。第一の部分は、中間的諸価値の体系化とそれらの相対的な重要性の評価を含むであろう。第二の部分の本質は、この価値体系の観点から行為の可能な諸方針を比較することにあるであろう。

"価値の体系化"と"行為の可能な諸方針の比較"の2つの観点が必要という点で本書に組み込みこんだ。


引用085

P106 もしも目的が挑戦を受ける場合には、その目的がめざすあるより基本的な目的を示すことによって、また前の目的を達成することは後の目的達する手助けになるという確信(根拠が確実であるかもしれないし、確実ではないかもしれない仮定の事実)を示すことによって、まもられる。
~略~
連鎖の終わりはおそらく美徳、真理、そして美といった最終的な価値であろう

  • 用語定義: 確信
    • 本書での意味: 参考書と同等

引用090

P113 目的のハイアラーキー
諸目標が、おそらくはその力を他のもっと遠い目的に依存しているという事実から、これらの目標をハイアラーキーに整列させることが導かれる。各階層は、下の階層からみれば目的と考えられ、上の階層からみれば手段として考えられる。目的のハイアラーキー的構造を通じて、行動は統合され一貫したものとなる。なぜなら、一連の代替的行動の各々が、価値の包括的尺度--「究極の」目的--の観点から重みづけされるからである。

  • 用語定義: 究極の目的
    • 本書での意味: 参考書と同等(意味: 目的の階層の最上位に位置する目的)

引用095

P115 手段-目的図式の限界
このような手段-目的のハイアラーキーの観点からの合理的行動の分析は、ある一定の注意が払われないならば、不正確な結論を導くことになるだろう。

第一に、特定の代替的行動の選択による目的の達成は、他の行動を選択することによって達成されたであろう他の諸目的を斟酌しないために、しばしば不完全にしか、または不正確にしか記述されない。

第二に、実際の状況のもとでは、手段を目的から完全に分離することは、通常不可能である。なぜなら、代替的な手段は通常、価値的に中立ではないからである。

第三には、この手段-目的という述語は、意思決定において果たす時間という要素の役割を曖昧にしがちである。もしも、目的がある状態や状況を実現することであるとするならば、ある一時点では一つの状態しか生じないかもしれないが、ある期間にわたれば多くの状態が存在しうるわけであり、選択は特定の目的によって影響されるだけでなく、異なった時点でどの目的が実現されるかについての期待によっても影響される。


引用100

P115 合理的な意思決定は、代替手段が導こうとする目的それぞれに関して、各々の代替手段を比較することをつねに必要とする。第8章で後述するようにこのことは「能率」--限られた手段で最大の価値を達成する--が、経営上の決定における指導的基準でなければならないことを意味する。

  • 用語定義: 能率
    • 本書での意味: 参考書と同等

引用110

P116 選択によって以下の二つの問題が課される。
(1)もしある目的が特定の時点に実現されるならば、その時点にどんな代替的目的が放棄されなければならないか。
(2)もしある目的が特定の時点に実現されるならば、この目的の実現が、他の時間において実現するであろう目的をどのように制約するか。

可視化のポイント: 相反する目的と、目的による目的の制約


引用120

P117 時間という要素は、さらに他の方法でも意思決定に入り込んでくる。決定のなかには、新しい状況を作り出し、そうした状況が、今度は後続する決定に影響を与えるという意味で、取り返しのつかないものがある。

可視化のポイント: 選択間の時間的関係


引用130

P118 手段-目的図式に対して提起されてきた難点は、(a)それが意思決定における比較の要素を漠然としたものにすること、(b)決定における事実的要素を価値的要素から分離することに十分に成功していないこと、(c)目的思考行動における時間という変数に対する認識が不十分であること、である。

a,cについては可視化することで解決すると考える。
bについては具体に対してそれぞれ定義する必要がある。


引用140

p118 決定、あるいは選択は、ここで用いられる術後としての意味では、各々の瞬間における行動のための代替的選択肢の内の一つが、実行のために選択される過程のことである。ある期間にわたる行動を決めるそうした決定の一連の系列を戦略と呼びうる


引用150

P118 決定というタスクは、以下の三つのステップを含む。(1)全ての代替的戦略を列挙すること。(2)これらの戦略の各々から生ずる結果の全てを確定すること。(3)これらの結果の集合を比較評価すること。

選択のステップとして本書に組み込む。
(1)全ての代替的戦略を列挙すること。
(2)これらの戦略の各々から生ずる結果の全てを確定すること。
(3)これらの結果の集合を比較評価すること。


引用160

P119 それゆえ、ある行動方針をひとたび開始してしまえば、すでに実行してしまった部分を完全に放棄するよりは、むしろそれを続けることが好ましいように思われるという事実によって、個人あるいは組織はその行動方針にコミットしてしまうこともありうる。 戦略のこの時間拘束性については強調しすぎるということはない。

可視化ポイント: 戦略の時間拘束性


引用170

P120 意思決定過程における知識の機能は、代替的戦略のどれをとればどういった結果が生ずるのかを特定することである。知識のタスクは、起こりうる結果の全集合から、より限定された結果の部分集合を選び出すこと、あるいは、(理想的には)各戦略と相関している結果の唯一の集合を選び出すこと、である。

選択のステップでは、目的に貢献する選択肢を抽出する必要がある。


引用180

P122 諸結果が通常「孤立した」システムを形成するという事実は、科学者と実務家のどちらにとっても合理性に近づく協力な助けとなる。なぜなら、科学者は彼の実験室のなかでそうしたクローズド・システムを孤立させ、それらの行動を研究することができるからであり、一方、実務家は、状況の他の部分をいちじるしくかき乱すことなく、ある環境条件を変化させるために科学者によって発見された法則を使用することができるからである。


引用185

P126 種々の代替的選択肢のなかに存在している価値は膨大かつ多様なので、個人は、選好にさいしてそれらを重みづけし、そこから選ばなければならない。


引用190

P126 競合する価値の間の個人の選択は、一群の無差別曲線によって記述することができる。これらの曲線は、どういった起こりうる結果の集合が互いに当勝ちであるのか、すなわち選択において「無差別」であるかを示したものである。


引用200

P127 手段-目的の連鎖とは、価値とそれを実現する状況を結びつけ、同様に、そうした状況とそれを生み出す行動とを結びつける予期の系列である。この連鎖のなかの全ての要素は、手段と目的のどちらにでもなりうるが、それは連鎖の価値的な側との結びつきと連鎖の行動的な側との結びつきのいずれが問題となっているのかによる。


引用210

P130 おそらくこれらの複雑性を避け明瞭にする唯一の方法は、適切な副詞と連結して「合理的」という言葉を用いることである。
P130 例のみ抜粋

  • 客観的に合理的
  • 主観的に合理的
  • 組織にとって合理的

引用220

P131 知識は、ある行動をとることによって起こりうる全ての結果のうち、実際にはどの結果が生ずるのかを発見するための手段である。知識が選択の過程の一部であるかぎりにおいて、知識が選択の過程の一部であるかぎりにおいて、知識の究極の目的は、各々の代替的行動の結果として生じる唯一単独の可能性を発見することである。


引用230

P131 手段-目的の連鎖は、行動からその結果として生じる価値にいたるまでの一連の因果的に関連した諸要素、として定義された。そうした連鎖における中間的目的は、価値指標として役立っている。そして、この価値指標を用いることによって、われわれは代替的選択肢を、そこに内在している最終的目的あるいは価値を完全に吟味することなしに評価することができる。

中間的目的は、価値指標として使うことができる。


引用240

P143 一人の孤立した個人の行動が、多少なりとも高い合理性に達することは不可能である。彼が探索しなければならない代替的選択肢の数は非常に多く、彼がそうした代替的選択肢を評価するために必要とする情報はあまりに膨大であるため、客観的な合理性に接近することさえ想像しがたい。


引用245

P144 前章で定義されたように、客観的な合理性とは以下のことを意味している。行動する主体が、(a)決定の前に、行動の代替的選択肢をパノラマのように概観し、(b)個々の選択に続いて起こる諸結果の複合体全体を考慮し、(c)全ての代替的選択肢から一つを選び出す基準としての価値システムを用いる、ことによって、みずからの行動を統合されたパターンへと形づくることである。


引用250

P145 知識の不完全性
P145 (1) 合理性は、各選択に続いて起こる諸結果についての完全な知識と予測を必要とする。実際には、結果の知識はつねに断片的なものである。

p148 予測の困難性
P145 (2) これらの諸結果は将来のことであるため、それらの諸結果と価値を結びつける際に想像によって経験的な感覚の不足を補わなければならない。 しかし価値は不完全にしか予測できない.
P148 評価の正確性と一貫性は、想像した結果におけるさまざまな価値要素を突き止め、予測の場合にも実際に経験する場合と同じような重みをそれらの諸要素に与える能力を、個人がどのくらいもっているかによって、制約されている。

p148 行動の可能性の範囲
P145 (3) 合理性は、起こりうる代替的行動の全てのなかから選択することを要求する。実際の行動ではこれらの可能な代替的行動のうちのほんの二,三の行動のみしか心に浮かばない。


引用255

P147 合理的な選択は、決定の基礎となっている限られた要素の集合がその性質上、変数のクローズド・システムに合致する範囲において、すなわち、重要な間接的な影響が存在しない範囲において、実現可能なものとなる。


引用260

P163 実体的計画立案
p163 手続型計画立案


引用270

P167 計画立案過程
計画立案にふくまれている心理的な過程は、選択の一般的な基準を選ぶことと、そのほかに特定の状況への適用によってその基準を特殊化することから構成される

計画立案過程は本書における"価値の管理"に包含される


引用274

p185 (1) 経済人は最大化をする--彼の利用できるすべての選択肢のなかから最善の選択肢を選ぶ--のに対して、彼のいとことでもいうべき経営人は、満足化する--満足できる、もしくは「まあまあ」の行為のコースを探す。満足基準の例としては、ビジネスマンにとってはありふれたものであるが、経済学者にとってはなじみの薄い「市場シェア」、「妥当な利益」、「適正価格」といったものがあげられる。

本書では最大化と満足化を両方取り入れている。


引用277

p185 (2) 経済人は、「現実世界」の全ての複雑性に対処しているとされる。経営人は、知覚された世界が、現実世界を構成する、せわしなく次々と生じる混乱をきわめて単純化したモデルあることを認識している。経営陣は、状況を互いに緩やかに接続されたものとしてとり扱う--現実世界の事実の大半はいかなる単一の状況とも強い関連性がなく、もっとも重要な原因と結果の連鎖は、たいてい短く単純である。そのときに関連性がないようにみえる現実の諸価値、すなわち大半の側面をこ、考慮の対象からはずすことができる。経営人は(ついでにいえば、経済人以外の全ては)状況のごくわずかな要因だけをもっとも関連がありきわめて重要であるものといて考慮する。特に経営陣は、一つもしくは二〜三の問題しか一度に扱わないが、それは、注意の制約によって全てのことがらに同時にかかわれないためである。

  • 用語定義: 全知の人
    • 本書での意味: 経済人(economic man)
  • 用語定義: 現実的な人
    • 本書での意味: 経営人(administrative man)

引用280

P187 フォン・ノイマンとモルゲンシュタインのゲーム理論には、少なくとも五つに分けることのできる明確なコンセプトがあり、それらは全て重要である。
(1) 可能な未来の行動を、個々の選択地点から別れていく枝をもつ「木」としてあらわすということ。その結果として、個人は、そうした選択地点それぞれにおいて、とるべき適切な枝を選ばなければならないことになる。
(2) 競争状況における合理的選択の定義として、ミニマックス(競争相手に直mねした際にもっともよい結果が得られるであろう枝を選択する)を採用するということ。
(3) 競争状況において、自分の動きを相手に予想されないように混合戦略(たとえば、ブラフ)を使用すること
(4) 三人以上のプレーヤーがいる競争状況の合理的選択を、連合形成のの可能性という観点から定義すること。
(5) 結果の確率分布だけがわかっている不確実性に直面した際、意思決定者は基数的効用関数をもち、期待値を最大化するように選択すると仮定すること。

競争状況は扱わない。1つの目的に向かって動くことを想定する。

  • 用語定義: 選択地点
    • 本書での意味: 参考書と同等

引用290

P188 本書「経営行動」における限定された合理性の理論は、このリストの(1)の項目を組み入れており、(3)および(4)の項目とは適合している。しかし、リストの残りの項目は経営人よりも経済人を特徴付けているもので、本書で使用されたモデルの一部ではない。


引用300

P189 古典的理論で見過ごされた要素
第一の欠落は、どのような決定がどのような特定の時間になされるかを定めるアジェンダを設定する過程である。
二番目は、注意を向けるように選ばれた問題についての表現を獲得もしくは構築する過程でもある。
三番目は、意思決定者がそこから選択する代替的行動を創出する一連の過程である。


引用305

P190 このようなアジェンダを設定するシステムは、包括的な効用関数といったものを一切必要としない。探索の優先順位を設定するためにのみ、ニーズの緊急性が比較される。必要とされるものは、緊急性をしらせ、そうしたシグナルの強さを増加させていく単純なメカニズムだけである。なにものも最大化される必要がない。

アジェンダ作成やその更新では、"新たな問題の出現"や、"新鮮なインプットの取り込みの発生"などを前提としたシステムで必要と考える。つまり知識を穴埋めするためのフィードバックによって、過去と同じプロセスで進められる選択が発生する特殊ケース。


引用307

P191 決定を求める問題の数が単に増加しても、そうした問題全てに注意を向けることが存続のために不可欠でないのであれば、アジェンダ設定のタスクがこみ入ったものになることはない。十分に緊急度が高くないものはアクティブなアジェンダにはならない(われわれの多くは個人生活のなかでこうした現象をよく知っている)。多くの潜在的なアジェンダ項目は、問題でも機会でもありうる。問題とは、それに注意がむけられていなければトラブルを引き起こすかもしれない項目である。機会とは、もしそれに注意が向けられれば、利益や存続の確率を高めるかもしれない項目である。


引用310

P198 意思決定における段階
意思決定過程をアジェンダ設定、問題の表現、代替的選択肢の発見、代替的選択肢の選択といった副次的過程に分割することは、ときとしてつぎのような批判をされてきた。

本書では意思決定における段階を選択のステップとして取り込む。


引用320

P234 能率の基準
能率の基準はつぎのことを要求する。同じコストがかかる二つの代替選択肢であれば、より組織目的の達成度が高いほうが選択されるだろう。あるいは、同程度の達成をもたらす二つの代替選択肢であれば、よりコストが少なくて、済むほうが選択されるだろう。


引用330

P383 情報システムのデザインを成功させる鍵は、技術を注意という資源の限界と適合したものにすることにある。
1、インプットに比べてアウトプットが小さい。したがって、さらに追加的な注意を必要とせずに、注意を節約する。
2、受動的であるとともに能動的でもある有効な索引がついている(能動的な索引とは、つぎの過程に情報を送るために自動的に情報を選択肢、フィルターをかける過程のことである).
3、単に情報を蓄えたり検索するだけでなく、問題を解決し、解を評価し、意思決定をすることのできる、分析的かつ合成的なモデルをもつ。


引用340

P390 能率の基準は、主として利益目的によって導かれる営利組織にそれを適用するとき、もっとも理解しやすい。そのような組織では、能率の基準は、個人が利用できる全ての代替的選択肢のなかから、最大の純(貨幣)利益を組織にもたらすものの選択を命じる。
P390 能率の基準は、それが「算出」の最大化にかかわるかぎり組織の目的に関連をもち、それが投入を上回る算出の正の差額の維持にかかわるかぎり存続の目的に関連をもつ。


引用350

P392 決定における積極価値
決定に含まれる消極価値は、通常、時間あるいは貨幣費用によってゆおやくされうるが、積極価値はそれより幾分複雑な様相をみせる。 それは、活動の諸目的を述べることによって、またこの諸目的の達成の程度を測定する使用の作成によって、与えられる。 最終目的の達成における管理活動の効果を示す測定値は、いずれも、その活動の結果の測定値であらわされる。


引用360

P393 諸目的の定義
パブリック・サービスのための諸目的を定めることは決して単純な仕事ではない。第一に、可能なかぎり価値の観点から諸目的を述べることが望ましい。すなわち、それらが相対的に最終的な目的の表現である場合にのみ、それらは適切な価値指標となる。

目的の階層における妥当性は、"相対的に最終的な目的の表現である"をパブリック・サービス以外の一般的なことにも適用できるものとして本書では解釈している。


引用370

P394 達成-程度の問題
諸目的を定めることで、経営決定における価値要素の問題が全て終わるわけではない。加えて、目的が達成されるべき程度を決める必要がある。

可視化ポイント: 目的達成の程度


引用380

P396 価値のための共通要素-能率の基準
選択の対象AおよびBの間には四つの関係が考えられる。Aの投入をI_A、Bの投入をI_B、そして、それぞれの算出をO_A、O_B、とすれば、この四つの可能な関係はつぎのように表現されよう。
一、I_AはI_Bより小さく、O_AはO_Bより大きい。
二、I_BはI_Aより小さく、O_BはO_Aより大きい。
三、I_AはI_Bより小さく、O_AはO_Bより大きい。
四、I_BはI_Aより小さく、O_BはO_Aより大きい。

一と二の場合、どちらを選択するかあきらかである。しかし三と四の場合はそうではない。
Aは、Aと、AB間の費用の差額によって可能とされる代替的な活動、を合わせ含む第三の可能性Cによって、置き換えられるべきである。もしこれが行われれば、選択は、一定の資源を代替的な活動BおよびCに用いることによって得られる結果の比較問題になる。行動の能率は、一定の行動にとって代替的な諸行動から得られる結果の最大値に対する、当該行動から得られる結果の比である。

P397 能率の基準は、一定の資源の使用から最大の結果を生む代替的選択肢の選択を命ずる

P399 彼は、エネルギー保存の法則によって、有効なエネルギーの算出はエネルギーの投入をこええないことを知っている。ここから、算出が投入と相応しい状況、すなわち「完全」能率の概念が生まれる。 社会科学においては、算出と投入が比較可能な単位で測定されることはまずない。

P400 現実の問題は、経営者にそれが起こるときは、つねに相対的な能率に関係があるのであって、絶対的な能率は全く必要とされない。さらにこの理論では、能率の数値は必要ではなく、単に二つの代替的可能性の能率の大小が比較できればよい。こうした状況では、投入に対する算出の比としてと、また可能最大値に対する実際値の比としての能率の定義は、同じというに等しい。

本書では、代替的選択肢を絞り込む手段として能率の基準を取り込む。


引用390

P400 経済学の類似
能率の基準は、経営の決定に適用される場合、経済理論における効用最大化の概念に著しく類似していることが知られうる。ここで主張されることは、能率の基準がつねに経営者の決定を支配するということではなく、むしろ、もしかれらが合理的なら、そうなるであろうというものである。そのような合理性が実際の行動に通常みられる特質である、と主張するのではない。他方、効用最大化の原則は、一般に、説明原則としても、すなわち市場における実際の行動の記述としてだけでなく、経済学の文献において説明されてきた。

二つの命題間の類似は、それらの基礎にある仮定にも及んでいる。これらの仮定の第一は、使用しうる資源に希少性があることである。第二の仮定は、当該諸活動が「手段的」活動であること、すなわち、ある種の「結果」という形で積極価値を生むために行われる活動であることである。第三に、二つの命題は、ともに、少なくとも主観的に、結果を測定する諸価値の比較可能性を必要としている(この仮定はすでに前説で論議した)。


引用395

P407 経営状況の分析が行われるであろうかなりはっきりした段階が、少なくとも四つある。最高位の段階では、結果、すなわち帰還目的の達成が測定される。こうした結果に貢献するのは、経営的遂行の諸要素である。これらの次位に、努力で測定される投入がある。最後に努力は貨幣費用で分析されよう。
 数学心のあるものは、この構造に、経済学者の「生産関数」に全く等しい一組みの方程式を見るであろう。


引用400

P408 社会的生産関数の決定
以上にすすめてきた考察からつぎのことがいえる。意思決定過程の事実的部分、すなわち科学的処理になじむ部分は、結局、経営活動の生産関数の決定になる。これは最も重要な研究課題であるが、いままでほとんど手がつけられていない。 こうした関数の理解に向かう経過にはつぎのような明確な一連の段階が含まれている。
(1) それぞれの活動によって影響を受ける価値ないし目的は、観察と測定ができる表現で定められなければならない。
(2) こうした関数の達成度を決定する経営変数および経営外変数が、列挙されなければならない。
(3) 経営外変数および経営変数が変わるとき、結果が変化する仕方について、具体的、経験的な調査がなされなければならない。

代替的選択肢に対しての生産関数はブラックボックスとして扱う。


引用410

P410 有効な機能別化にはいくつかの前提条件がある。第一に、右に示したように、一般的目的は、それと手段-目的の関係にある従属的な諸目的に分解されなければならない。しかしさらに、活動の技術が、それぞれが主として一つの従属目的に、一つの従属目的だけに貢献するように、機関の業務を異なる諸部分に分別できるようでなければならない。

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