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医療AIスタートアップを立ち上げる前に知っておきたい全てのこと

2025/03/26に公開

〜心構え・準備・知識・資金調達・現場連携まで〜

こんにちは。NAMコミュニティです。私たちは、非営利で論文のまとめ等を行なっていますので、ぜひご確認ください。

近年、AIと医療の融合が世界的に注目を集め、日本国内でも「医療AIスタートアップ」の立ち上げを目指す技術者・研究者・起業家が増えています。

「医療×AIで社会を変えたい」
「医療の非効率をAIで解消したい」

そんな熱意を持った方が多い一方で、実際に事業として成り立たせるのは想像以上に難しい領域です。

本記事では、これから医療AIスタートアップを立ち上げようと考えている方に向けて、


✔️ 起業前に必要な心構え

✔️ スタート前に知っておくべき知識・体制

✔️ 初期資金と資金調達のリアル

✔️ 医療現場との連携のコツ

✔️ ピボット・失敗・PMFまでの道のり


について、実体験と国内外の事例を交えて、リアルに、正直に書いていきます。


1. 医療AIスタートアップを始める「心構え」

■ 医療は“スタートアップの中で最も難しい分野”のひとつ

医療領域はスタートアップにとって「最もハードルの高い分野」と言われます。その理由は:

  • 法規制・医療機器認証が複雑で時間がかかる
  • 専門家(医師、薬剤師、看護師)との協働が必須
  • 信頼が最重要で、一度のミスが命取りになる
  • 医療機関は新しいものをすぐ導入しない(保守的)
  • データ入手が非常に困難

これらを乗り越えるためには、**技術力以上に「粘り強さ」と「対話力」**が求められます。


2. 起業前に準備すべきこと一覧

● 技術:AIの専門性+医療応用への理解

  • 機械学習/深層学習の実装能力(画像系、NLP、時系列 etc.)
  • 医用画像の基礎(DICOM、放射線診断、病理画像など)
  • 医療データの特性(ノイズ、欠損、非構造性、スモールデータ)
  • モデルの説明可能性(XAI技術)

💡おすすめ準備:Kaggleの医療コンペやRSNA(米国放射線学会)関連の論文実装


● 医療制度・法律の知識

  • 医療機器の分類と薬機法(旧:薬事法)
  • 保険診療・自由診療の違いとレセプト構造
  • 医師法・個人情報保護法(医療分野での扱いは特殊)
  • PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)の役割

💡最低限、薬機法とPMDAの認可フローは理解必須です。


● チーム体制とパートナー選び

成功している医療AIスタートアップの多くが、「異能チーム」です。おすすめ構成:

  • 医療機関出身のドクター・リサーチャー(信頼構築の核)
  • データサイエンティスト/MLエンジニア(技術の中核)
  • BizDev/医療制度に詳しいPM(販売やPMFを担う)
  • 薬事・法務・医療機器規制の専門家(顧問でもOK)

3. 資金調達の目安と戦略

● 初期フェーズ(PoC〜MVP開発):500万〜1,500万円

  • 製品コンセプト立案
  • 医師とのPoC(画像診断補助など)
  • データ収集、仮モデル開発
  • 法人設立、顧問医の確保

💡この段階ではエンジェル投資家、大学連携、助成金が狙い目。


● シード期(臨床試験、薬機対応):3,000万〜1億円

  • 医療機関との共同研究契約
  • 精度検証・臨床データ取得
  • 医療機器としての薬事申請準備
  • UI/UXプロトタイプ開発

💡このタイミングでVCに挑戦、NEDO・AMEDの大型補助金を活用する企業も多いです。


● アーリー〜シリーズA(スケール&販売体制構築):2〜5億円以上

  • PMDA申請・承認
  • 営業組織の整備
  • 病院導入のサポート体制構築
  • 法人向けライセンス・販売戦略

💡医療系VC(慶應イノベーション・インキュベーション、リアルテックファンド等)との連携が鍵。


4. 医療現場との連携で絶対にやるべきこと

✔️ 医療機関との“実証協力依頼”は必須

最初のPoC(概念実証)では、大学病院や地域中核病院との連携が欠かせません。おすすめの進め方:

  1. 顧問医を見つける(現役 or 退官直後の教授が理想)
  2. 共同研究契約を結ぶ(費用を負担してでも)
  3. 実際の医療現場で使えるユースケースを抽出

✔️ “医師のためのUI/UX”を徹底的に考える

  • 操作は直感的か?(タイピング1秒でも嫌がられる)
  • 読影や診断のフローに自然に組み込めるか?
  • 説明可能性を画面上で可視化できているか?

UIが悪ければ**「精度が高くても使われない」**という悲劇に直面します。


5. 医療AIスタートアップに多い失敗パターン

失敗パターン 内容
技術だけに偏る 医療制度・現場ニーズを無視しがち
薬機対応を軽視 後から承認が取れず製品化できない
病院への営業が下手 売上ゼロのまま資金が尽きる
使いにくいUI 医師に「面倒」と言われて放置される
医療現場の協力を得られない データがなくPoCすら進められない

6. 医療AIスタートアップは「10年戦える覚悟」が必要

医療分野は長期戦です。特に「医療機器」としての承認が必要なプロダクトは、PoCからPMDA承認、病院導入まで5〜10年かかるケースも珍しくありません。

短期的な収益性ではなく、

  • 社会的意義
  • 長期的インパクト
  • 医療従事者との信頼

に根ざしたビジョンと経営姿勢が求められます。


まとめ:医療AIスタートアップに必要なのは「覚悟」と「共創力」

医療AIスタートアップは、華やかなBuzzワードの裏に、膨大な規制対応・倫理配慮・医療理解という地味で泥臭い作業が詰まっています。

けれど、それを超えた先にある「命を救うプロダクト」を世に出すというゴールは、何ものにも代えがたいものです。


🔍 最後に:これから起業したい人へのアドバイス

  • 「医療従事者」と一緒にチームを作ることが最優先
  • 最初はマネタイズよりもPoCの成功を重視
  • 規制と薬機法は軽視せず、早期に相談を
  • 資金調達は「想像の2倍」必要と考えて動く

次回は「医療AIスタートアップのピッチ資料の構成法」や、「PMDA申請にかかる期間・費用」などについて書いていきます。
読んでくださってありがとうございました!


ご希望があれば、この記事のPDF化・Notionテンプレート化・LP用コピーも制作可能です。お気軽にお知らせください。

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