可用性の高いWebアプリをKubernetesで設計する方法
技術面接でよく出る質問のひとつに「Kubernetesで可用性の高いWebアプリを設計してください」というものがあります。
一見すると難しそうですが、実際にはいくつかの基本要素を組み合わせて答えることがポイントです。
この記事では、可用性(High Availability, HA)を確保するための設計方法を、基礎から丁寧に解説します。
可用性とは?
可用性(High Availability: HA)とは「壊れにくく、止まりにくいシステム」のことです。
例えば、アルバイトが1人しかいない店は、その人が休むと営業できません。
一方で、複数人が交代できる体制なら、誰かが休んでも店は営業を続けられます。
Kubernetesは、この「交代要員」を用意し、障害があっても止まらないシステムを支える仕組みを提供します。
可用性を高めるための設計ポイント
以下は、Kubernetesで可用性を高めるために重要な構成要素です。
1. Deploymentと複数レプリカ
- Deploymentはアプリ(Pod)を管理するための基本単位
- 複数レプリカを設定することで、同じPodを複数立てる
これにより、1つのPodが落ちても他のPodが処理を続けられます。
2. Service(Load Balancer)
- ServiceはPodへの入口
- LoadBalancerを使うと、ユーザーからのリクエストを複数のPodに分散
結果として、ユーザーは1つの窓口を通してアクセスでき、裏側で負荷が分散されます。
3. データベースの冗長化
アプリ本体が可用でも、データベースが落ちるとシステム全体が止まります。
そのため、DBの冗長化は必須です。
方法としては以下の2つがあります。
-
マネージドRDS(AWS RDS, Cloud SQL など)
クラウドベンダーが冗長化やバックアップを自動で実施 -
StatefulSet + PersistentVolume(PV)
Kubernetes上でDBを構築し、マルチAZにPVを配置
4. PodDisruptionBudget(PDB)
PDBは「最低限残すPodの数」を保証する仕組みです。
例えば「常に2つのPodを稼働させる」と設定しておくと、メンテナンスや障害があっても全滅を防げます。
5. Horizontal Pod Autoscaler(HPA)
HPAはPodの数を自動で増減させます。
- アクセスが増えると自動的にPodが追加
- アクセスが減るとPodを削減してコストを削減
急激なトラフィック変動に対応するための仕組みです。
6. リードレプリカ構成(DB)
データベースを**マスター(書き込み用)とリードレプリカ(読み取り専用)**に分けます。
読み取りアクセスをリードレプリカに分散することで、全体の負荷を軽減できます。
7. 監視とアラート
監視は必須要素です。
- Prometheus:メトリクス収集
- Grafana:可視化
- Alertmanager:通知
システムの異常を早期に検知することで、ダウンタイムを最小化できます。
8. ログ集約
Podのログは個別に保存されるため、そのままでは管理が難しいです。
ログを一箇所に集約する仕組みを導入しましょう。
- ELKスタック(Elasticsearch, Logstash, Kibana)
- Loki + Grafana
これにより、障害時の原因調査が容易になります。
9. CI/CDとアップデート戦略
システム更新の際も可用性を維持する必要があります。
- ローリングアップデート:Podを少しずつ新しいバージョンに置き換える
- カナリアリリース:一部ユーザーのみに新バージョンを提供して問題がなければ拡大
このような戦略を取ることで、リリース時のリスクを最小化できます。
全体像(イメージ)
[ User ]
|
[ Service (LoadBalancer) ]
|
[Pod1] [Pod2] [Pod3] ← Deploymentで複数レプリカ
|
|--- 監視 (Prometheus, Grafana)
|--- ログ集約 (ELK, Loki)
|
[DB Master] ← 書き込み
[DB Replica] ← 読み取り
面接での回答例
質問:Kubernetesで可用性の高いWebアプリを設計してください。
回答例:
「アプリはDeploymentで複数レプリカを稼働させ、Service(LoadBalancer)で公開します。データベースはマネージドRDSを利用するか、StatefulSetとPersistentVolumeで冗長化します。PodDisruptionBudgetで最低限の稼働数を保証し、Horizontal Pod Autoscalerでトラフィックに応じたスケールを行います。また、リードレプリカで読み取り負荷を分散し、PrometheusとGrafanaで監視、ELKスタックでログ集約を行います。更新はローリングアップデートやカナリアリリースで可用性を維持します。」
まとめ
- 可用性を高めるには「多重化」「自動化」「監視」の三本柱が重要
- KubernetesはDeployment、Service、HPAなどで可用性を担保できる
- 面接では「構成要素の知識」だけでなく「なぜ必要か」を説明することが大切
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