"DOMException: The play() request was interrupted"の原因を調査する
TL; DR
HTMLVideoElement.play()
による動画読み込み中に HTMLVideoElement.prototype.pause()
を呼ぶと DOMException
が発生します。
この原因の調査が難航したときには、 prototype
を wrap して log を埋め込むような動的解析をすると特定の一助になるかもしれません。
DOMException
との遭遇
私は以前、 JavaScript から <video>
tag の再生 / 停止処理を行うアプリケーションの開発に携わっていました。
そんな中、以下のエラーによって動画が再生できない問題が発生しました。
_Uncaught (in promise) DOMException: The play() request was interrupted by a call to pause().
DOMException: The play() request was interrupted by a call to pause()
HTMLVideoElement.prototype.play()
は <video>
tag の再生を開始する関数です。
HTMLVideoElement.prototype.play()
は呼ばれるとまず動画の読み込みを開始し、それが終わり次第再生を行います。
この関数は返り値として、読み込みが終わり次第 resolve される Promise<void>
を返します。
しかし、読み込みの途中で同一インスタンスの HTMLVideoElement.prototype.pause()
が呼ばれると、この Promise<void>
は reject され、 DOMException
が throw されます。
video.play()
starts loading video content asynchronously.video.pause()
interrupts video loading because it is not ready yet.video.play()
rejects asynchronously loudly.DOMException - The play() request was interrupted - Chrome for Developers より引用
play()
/ pause()
のスパゲッティ
仕様や実装によっては一つの <video>
tag に対して様々なタイミングで play()
や pause()
を呼ぶこともあり得るかと思います。
実際に私が開発に携わっていたアプリケーションでは play()
/ pause()
が至る所から呼ばれており、まるでスパゲッティコードのようになっていました。
さらに、動画再生 library として使用している bitmovin-player
package では build 前のコードが公開されていませんでした。
build 後のコード を読んで処理を理解するのは非常に難易度が高いです。
しかし、仮に使用している library が build 前のコードを公開していたとしても、それを読んで原因を調査するのは骨が折れます。
動的解析を試してみる
コードを読んで挙動を把握する静的解析は、以下の 2 点から原因の調査が難しそうです。
-
play()
やpause()
が様々なタイミングで呼ばれる - 動画再生 library の
bitmovin-player
が build 前のコードを公開していない
そこで、コードを動かして挙動を把握する動的解析に挑戦してみました。
前述の DOMException
には HTMLElement.prototype.play
と HTMLElement.prototype.pause
が関係しています。
この 2 つのメソッドがどのような経緯で呼ばれて、どのタイミングでエラーとなるのかを log として出せれば解析の一助になりそうです。
以下は 2 つのメソッドを wrap して log を仕込むようなコードです。
const HTMLVideoElement_pause = HTMLVideoElement.prototype.pause
HTMLVideoElement.prototype.pause = function (...args) {
if (args.length === 0) {
console.trace('HTMLVideoElement#pause', this.src)
} else {
console.debug('HTMLVideoElement#pause', this.src, ...args)
}
return HTMLVideoElement_pause.call(this, ...arguments)
}
const HTMLVideoElement_play = HTMLVideoElement.prototype.play
HTMLVideoElement.prototype.play = function (...args) {
if (args.length === 0) {
console.trace('HTMLVideoElement#play', this.src)
} else {
console.debug('HTMLVideoElement#play', this.src, ...args)
}
return HTMLVideoElement_play.call(this, ...arguments).catch(e => {
console.error('HTMLVideoElement#play', this.src, ...args)
throw e
})
}
このコードでは HTMLVideoElement
の prototype
に生えた play()
と pause()
を wrap しています。
play()
や pause()
が呼ばれたタイミングで stack trace を出力し、元の処理を実行します。
また、 play()
が reject されたタイミングでも stack trace を出力しています。
複数動画がある場合はどの <video>
tag に対する操作かが分かりづらいため、 this.src
を log に出しています。
stack trace が出すぎると読みづらいため、 video.play('timing 1')
のように記述すると stack trace の代わりに 'timing 1'
が log に出るようにしました。
この動的解析により 2 つの DOMException
の原因を特定、問題を修正することができました!
この動的解析手法は他にも応用できる
Production のコードで prototype
を書き換えることはあまり好ましくはないと思いますが、エラーやバグの調査などの用途で prototype
を wrap して log を仕込んだり返り値をいじったりする手法は有効だと思います。
以下のコードを雛形として自分で処理を差し込めるようにしておくと、どこかで役立つかもしれません。
const Class_method = Class.prototype.method
Class.prototype.method = function (...args) {
return Class_method.call(this, ...arguments)
}
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