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書籍「学びとは何か」読書メモ
学びとは何かを読み終えたので、読書メモをまとめた
記憶と知識の違い
- 「学ぶ」と「覚える」、「知識」と「記憶」を同一視しがち
- 記憶力の良さにはいくつかのタイプがある。情報を頭に焼き付けて保持する能力(人間はこれが苦手で訓練されたチンパンジーにも負ける)、 無意味な数字の羅列を覚える能力(記憶力の世界大会)、普通の人が気に留めない事実に気づいて記憶する能力(シャーロック・ホームズ)、情報に意味を付与して正確に記憶する能力(将棋棋士)
- プロの将棋棋士でも全く意味のない無造作に並べられた駒の位置は覚えられない。情報に意味を加えて覚える訓練をすることで、特定の分野で優れた記憶力を得られる。記憶力それ自体が向上している訳ではない
- かつ覚えた情報を必要な時に取り出せるようにする事が意味を持つ。情報を記憶して、取り出して使えること。これが知識なのかもしれない(本書でも正確な定義は出ず)
スキーマ
- 人間は目にした情報の行間を補っている。そのために使われるのがスキーマ。 例えば専門知識を持たない人が専門書を読んでも行間を補うスキーマがないから理解できない。
スキーマの意味
- 膨大な情報から必要な情報だけを取捨選択する
- すでに持っている知識が次の学習に大きな役割を果たす
- 人は客観的な学習をできない。常に自分のスキーマを通して学習する
スキーマに関する実験
- 図形を記憶させる前に「これはアルファベットのC」「これは三日月」と 異なる情報を与えると、図形を再現するときに偏りが生まれる。スキーマに記憶が歪められる実験
生きた知識かどうか
- 頭でわかっているだけか、体で覚えていて使えるか。生きた知識か死んだ知識かの分岐点
- (「体で覚えているか」は少し抽象的だと感じたけど、のちの章で生きた知識を使うときは前頭葉のみならず脳の広範囲が活動することから納得感がある表現のように感じた)
知識のシステムを作る
- 子供が母国語を習得する時と大人が外国語を習得する時のアプローチは大きく異なる
- 子供は大人の会話を聞いて言葉の意味を推論する。子供にコップという言葉を教えると周りのものを全て(形が似ているものを)コップと呼び始める。それを親から修正される過程でコップの定義を習得していく。コップと似ているものの呼び方が異なるもの(ジョッキとか?)に触れるたび、「同じ物体を複数の言葉が示すことはあり得ない」という思い込み(スキーマ)を使って、ジョッキはコップより狭義に使う、といった形に推論の修正をしていく。すでに知っている単語と似た単語を学習していくことで知識のシステムを習得していく。たとえば数を学ぶことで抽象的な概念の習得が始まり、またシステムが書き換えられる。
- 大人の外国語学習は「Yは日本語でいうXと同じ」と比較して暗記していく。推論と修正がない。
誤ったスキーマを修正する
- 情報の取捨選択を通して効率的な意識を支援するが、誤ったスキーマは誤った結論に誘導する
- 例えば子供は数を自然数だと解釈する誤ったスキーマを最初に持つため割り算が苦手。1と2の間に無限の数が存在する概念を理解できないため、比率や密度の概念も理解しづらい。自然数のスキーマから脱却した時に初めて密度などを理解できるようになる
- 外国語の学習でも誤ったスキーマがよく学習を妨げる。英語と日本語では完璧に対応する言葉が存在しなかったり(日本語だと擬音語が豊富に存在するのに対して英語だと擬音も内包した動詞が存在したり)、中国語だと「持つ」も数十パターンの言葉が存在したり。
- 確証バイアスが働くためスキーマの修正は非常に難しい。一方スキーマがなければ記憶することも困難なので、誤ったスキーマを作らない事はほぼ不可能。気づいて修正する必要がある
習熟する方法
- 熟達者は知識を素早く取り出して判断するのが上手。物理科の学生と教授に問題を見せると教授は即座に適切な公式を思い出して、一部を直感で補いながら問題を解決していく。考えなくても実行できることが多い。知識に基づく予測力が高い。予測力は審美眼を持つことで使われる。普通の人では気づけない情報に気づくことで善し悪しを判断できるようになっていくことが必要
- 本をよく読む人ほど、ほとんど考えなくても書かれている情報が頭に入ってくる。普段読まない人はより時間がかかるのと同じ
熟達による脳の変化
- 熟達するほど問題を解決しようとする時に前頭葉が機能しなくなる。逆に運動野の脳活動が増えて範囲も広くなる。考えなくてもできるようになる。裏を返すと一度習得した処理経路に依存するようになると、初心者よりも考えなくなるので修正が困難になりそう。赤ちゃんは生後1年程度は音の違いを認識できるが、それ以降は英語のrとlが聞き分けられなくなる。日本語に特化した処理経路が完成するため
- 自分が習熟した領域に関する他人の動きを見たときのミラーニューロンの活動が活性化する。バレエダンサーが他のバレエダンサーの動きを見るときに脳の活動が活性化する。素人はさほど活性化しない。自分の行動に置き換えて差分を認識する、審美眼が働くかどうかの違い
- 生きた知識はまんべんなく脳全体に記憶されることから、たとえば子供の学習のために前頭葉を集中的に刺激することが果たして意味を持つかは疑問
生きた知識を生み出す知識観
- 知識に対する知識観をこの本ではエピステモロジーを呼ぶらしい(でも他の定義とはだいぶ違う気がする?)
- 「知識」を断片的な暗記の対象ではなく、変動するシステムとして要素が加わるたびに絶え間なく見直されて変化していくものとして捉える事が生きた知識を生み出す
- 生きた知識は自分で発見する。主観的に解釈される。新たな知識を生む。暗記するのではなく意味を理解する事が習得につながる。「何が起こるべきか、何が起こるはずがないか」と言う予測をしながら世界を観察する。思い込みを自分の中に作り適宜修正していく
- 知識観には3つの段階がある。絶対主義、相対主義、評価主義。絶対主義は言われたことを鵜呑みにする。相対主義は「知識は解釈されるものである」と理解しているが「人は人、自分は自分」だからどの結論でもOKだと考えてしまう。評価主義は知識を単なる考えとは区別して、モデルを構築して、実験によって立説可能な仮説を立てて、証拠と照らし合わせて評価する。
おまけ:批判的思考とは
- 英語では「argue」。argueは「give reasons or cite evidence in support of an idea」とあり、evidence(証拠)を示すことでアイデアを支持すること、とある。反対意見を述べるだけとは異なる
- evidenceは不可算名詞。アイデアを支持するために論理的に整合性の取れたピースを組み合わせた、不可分なもの、と考えると納得がいく
鍛錬のコツ
- アマチュアは楽しむために練習する。プロは必要なことを練習する
- イチローが小学生の頃からプロと同じ球速を出せるようにバッティングマシーンを調整してもらって打っていたイメージ。ゴルフもプロの練習ほど退屈で、アマはかっ飛ばして気持ち良さを味わう
- 才能とは優れた練習を設計して繰り返す性格的特性を指すのかもしれない。自分を可能な限り客観的に見て、問題点を見つけてその克服のために新しい練習を設計できること。自分の分野の超一流のパフォーマンスがどのようなものなのかを理解できる。自分がどのレベルにあって、超一流の人たちとどんな隔たりがあるかわかる。その隔たりを埋めるために何をしたら良いのか具体的にイメージできる
- IQは立ち上がりの速さを予測するためには有力だったが、一定レベル習熟してからの発達具合には大した差がなかった
- ある程度習熟すると脳みそを他のタスクに使えるようになるため臨機応変な対処が可能になる。いつもと同じことが通じない時に他の人とは違うものの見方や捉え方をして別の対応を考えられる
おまけ:一般とは違う脳みその作りに天才は多いのか
- ほとんどの人が使える脳部位を使えなかったため他の脳部位で補っていたために普通とは違う発想ができる人が時々生まれるのは確か。ただ統計情報が不足しているため判断できない
探求人の育て方
- 探求人:この本では生きた知識を数多く習得している人を指していると思われる
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- 探求エピステモロジーを持つこと。知識は自分で発見するもの。使うことで体の1部にするもの。システムの1部に組み込むこと。システムをどんどん変化させていくこと。こうした考え方をいかに育てるか
- 特に幼少期は様々な現象に対して「なぜ?」を問いかけ自ら答えを求めていく姿勢。端的に言うと知識は教えてもらうものではなく自分で発見するものと言う認識を持つこと
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- 親自身が探求人であること
遊びから育つ
- こうした学習姿勢は遊びから生まれるが、どんな遊びでも良いわけではない
遊びの条件
- 楽しくなければいけない。遊び自体が目的でなければいけない。遊ぶ人の自発的な選択によるものでなければいけない。遊ぶ人が能動的に関わる必要がある(遊ばせてもらっているものは遊びではない)。遊びは現実から離れたもので演技のようなもの。子供が何かのふりをしていたらそれは遊び。
遊びの種類
- 用途を制限しないおもちゃを与えられた方が創造性や探究心が身に付く遊びを経験できるが、こうしたおもちゃは渡されたときに使い方がよくわからない。親自身がそれを使って遊ぶ手本を見せたり、誘導しなければいけない(粘土を渡されても食べるだけで遊べないイメージだろうか)
- ごっこ遊びから知性が発達する。たとえばただの積み木を別のモノとして見立てたり、象徴能力が特に人間は秀でている。
- 結果に対する報酬は逆効果。過程を褒める。
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