リーダーざる理論
リーダーざる理論とは
リーダーざる理論はITプロジェクトにおけるリーダーに求められる仕事を定義した理論です。
※ ここでいう「ざる」とは、湯切りなどに使う調理器具のざるを指します。
決して「ザル = 無責任・無関心で良い」というネガティブな意味ではなく、むしろ真逆の意味合いで使っています。
※「リーダーざる理論」は、メンバーのタスクに過剰に介入するマイクロマネジメントとは異なります。
湯切りに使うざるには、大きく2つの機能があると考えてみましょう。
- 麺を受け止める
- 水を流す
これをリーダーの仕事に例えるのがリーダーざる理論です。
麺を受け止める
麺を受け止めるというのは、話(情報)を自分で整理することの必要性を表します。
例をいくつか示します。
内容を理解せずにそのまま共有しない
リーダーがクライアントとの連絡を担当する場合、やり取りした内容をメンバーに共有する必要があります。その際、内容をよく理解しないままタスクとして依頼するのではなく、きちんと理解した上で伝えることが望ましいと考えます。
たとえば、タスクを依頼した際にメンバーから「この場合はどうなりますか?」「こういうケースでは?」と質問されることも多いと思います。そのときに曖昧な回答を繰り返してしまうと、メンバーからの信頼を失う原因になります。それを避けたい、というのが主な理由です。
もちろん、自分が得意とする領域であれば、事前に理解して整理したうえで伝えることができます。ただし、あまり詳しくない領域になると、どうしても説明や進行が曖昧になりがちです。そのような場合には、すべてを一人で理解しようとするのではなく、メンバーと一緒に実装できる状態に持っていくプロセスを意識して進めることが大切です。
また逆に、メンバーから受け取った内容をクライアントに伝えるときも、十分に理解していないまま共有してしまうと、同様に曖昧な説明になってしまいます。たとえば、デザインカンプを共有する場面では、どのような意図が込められているのかを事前にデザイナーから聞き取っておくことが重要です。
持ち帰りの量を減らす
会議中に質問された内容にすぐ答えられない場合、「持ち帰り」として後ほど回答することになると思います。ただし、この持ち帰りが多くなると、都度確認してから返信する必要が生じるため、どうしてもスピード感が落ちてしまいます。
もちろん、曖昧な回答をするくらいなら持ち帰るほうが良いですが、その場で答えられるように準備しておくことも大切です。
現場から離れる立場になると、どうしても持ち帰る量が増えてしまいがちですが、常に知識をアップデートし、持ち帰りを減らすことで、プロジェクトの進行をよりスムーズにできると考えています。
水を流す
水を流すというのは、話(情報)を適切に伝達する必要性を表します。
いくつか例を示します。
頭出しなどの情報を止めない
「まだ決定ではないけど」という前提で、頭出しの情報が共有されることがあります。これは、「頭出しですが」と明言される場合もあれば、特に断りもなく会話の中で軽く触れられるだけのケースもあります。こういった情報は、たとえ未確定であっても、実際には裏で動いている見えない進行として捉えるべきです。
後になってから「そんな話、聞いてない」となると、作業やスケジュールに影響を及ぼすこともあります。だからこそ、たとえ些細な内容でも「〇〇があるかもしれないらしいよ」といった形でメンバーに共有することが大切です。
あらかじめ情報を軽くでも伝えておくことで、チーム全体が先を見据えた動き方ができるようになります。結果的に、「急にそんなこと言われても。」という意図しないトラブルの抑止にもつながります。
進捗状況に関してこまめに共有する
「これ、どうなってますか?」と聞かれないように、自分から進捗を適切なタイミングで共有することが大切です。逆に、滞っているタスクがあれば、こちらから「今どんな状況ですか?」と声をかけて進行を促すことも含まれます。
「こまめに」の頻度はプロジェクトによって異なります。週次で十分な場合もあれば、毎日や週に数回の共有が必要なケースもあります。重要なのは、「どうなっているのか分からない」と思われないように、必要な情報を必要なときに届ける姿勢です。
まとめ
リーダーざる理論は、単に情報を伝えるだけでなく、受け止めて理解し、必要な形で流すという役割をリーダーに求める考え方です。
プロジェクトを進める中で、リーダーが情報の「通り道」になることは多いですが、その中身を精査し、状況に応じて伝え方や受け止め方を工夫することで、チーム全体の動きが大きく変わります。
メンバーに寄り添いながらプロジェクトを支えるために、「ざる」のように“受け止めて、流す”という姿勢を意識してみてください。
皆さまのプロジェクトがよりスムーズに進むことを願っています。
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