title: Firebase・AWS Cognito・Auth0 の比較
Firebase・AWS Cognito・Auth0 の比較
認証機能を実装する際に、「Firebase Authentication」「AWS Cognito」「Auth0」のいずれを採用するか迷うことがあると思います。
本記事では、これら3つのサービスを比較し、それぞれの特徴やメリット・デメリットを整理します。
目次
概要
Webやモバイルアプリでユーザーのログインやアカウント管理を実装するためには、認証基盤が必要です。これらを自前で構築すると、セキュリティ対策や運用が非常に大変です。
そこで登場するのが 「マネージド認証サービス」 です。代表的なものとして以下の3つが挙げられます。
それぞれ ユーザー管理・認証フロー・ソーシャルログイン・カスタマイズ性 といった機能を提供し、さまざまな開発スタックに対応しています。
各サービスの特徴
Firebase Authentication
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概要
Google が提供している開発プラットフォーム「Firebase」の一部として利用できる認証機能。メール/パスワード、SNS連携(Google、Facebook、Twitter、Apple等)など、よく使われる認証フローを簡単に導入可能。 -
特徴
- 他の Firebase サービス(Realtime Database / Firestore、Cloud Functions など)との連携が容易。
- スマートフォンアプリ(iOS/Android)向け SDK が充実しており、Push通知やアナリティクスと組み合わせて利用しやすい。
- 比較的シンプルな構成で、短期間で認証を実装できる。
- Firebase Console からユーザーを管理するUIが比較的わかりやすい。
AWS Cognito
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概要
AWS が提供している「Amazon Cognito」は、ユーザープール(User Pool)とIDプール(Identity Pool)という概念を使って、ユーザー管理と認証を行うサービス。 -
特徴
- AWSの豊富なサービス(Lambda、API Gateway、S3、DynamoDB など)とシームレスに連携可能。
- カスタム認証フロー(Lambdaトリガーなど)を設定して、柔軟な認証ロジックを実装できる。
- 多要素認証(MFA)をサポートしており、セキュリティ要件が高い場合にも対応しやすい。
- AWS アカウント内で完結するため、インフラを一元管理したい場合にメリットが大きい。
Auth0
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概要
Auth0 は、Okta 傘下のIDaaS(Identity as a Service)企業が提供するクラウド認証プラットフォーム。SNS連携やエンタープライズ向けの多様なIDプロバイダとの連携など、幅広いユースケースに対応可能。 -
特徴
- シングルサインオン (SSO) やエンタープライズ連携(Active Directory、SAML、OAuth 等)に強みを持つ。
- 画面やフローのカスタマイズ性が高く、UI/UXを作りこみたいケースにも対応できる。
- 多くのSDK・ライブラリ(React、Vue、Angular、iOS、Androidなど)を提供しており、導入が比較的容易。
- 管理コンソールのUIやドキュメントが充実している。
料金比較
料金は執筆時点の概算および公式ドキュメントを参考にしたものです。最新情報は公式サイトでご確認ください。
サービス | 無料枠・フリープラン | 有料プラン例 |
---|---|---|
Firebase Authentication | - 月間 10,000 アクティブユーザーまで無料 ※ 以降は従量課金 (目安: $0.01/ユーザーなど) |
- 従量課金 - 他の Firebase サービス利用時の料金と合算 |
AWS Cognito | - 月間 50,000 MAU (アクティブユーザー) まで無料 ※ 一部リージョンで異なる |
- 従量課金 (例: 50,000 ユーザーを超えた分 $0.0055 / MAU など) |
Auth0 | - 無料プラン (7,000 MAU / 2つのSNS連携までなど制限あり) | - Developer / Teams / Enterprise プラン - 追加で認証数・機能拡張に応じて課金 |
メリット・デメリット比較
サービス | メリット | デメリット |
---|---|---|
Firebase Authentication | - Firebase との連携が容易 - 簡単に実装できる - SDK が豊富 |
- Firebase 上での運用が前提になる - 細かいカスタマイズは制限がある |
AWS Cognito | - AWS サービスとの連携が容易 - カスタム認証フローの柔軟性 - 大規模でもスケーラブル |
- 初学者には学習コストがやや高い - AWS 関連サービスの設定が複雑になる場合がある |
Auth0 | - 幅広い認証フローやエンタープライズ連携に対応 - カスタマイズ性が高い - ドキュメントと管理UIが充実 |
- 無料枠がやや小さい - エンタープライズ機能を使うとコストが高くなる - サービス自体の月額費用が上がりがち |
利用シーン例
-
Firebase Authentication を選ぶ場合
- フロントエンド / モバイル開発で Firebase を中心に利用したい
- MVP やプロトタイプを素早く作りたい
- シンプルな認証要件で十分なプロジェクト
-
AWS Cognito を選ぶ場合
- AWS サービス上でバックエンドを構築している
- 既存の AWS インフラに統合したい
- 多要素認証やカスタム認証フローなどセキュリティ要件が高い
-
Auth0 を選ぶ場合
- エンタープライズ連携(SAML、AD、SSOなど)や高度なカスタマイズが必要
- さまざまなプロバイダと連携したい
- UI/UXや認証フローを細かくコントロールしたい
まとめ
- Firebase Authentication: シンプルに始める場合や、Firebase の他サービスと連携してモバイル・Webアプリの開発を一気通貫で行いたい場合におすすめ。
- AWS Cognito: AWS 環境に統合できるメリットが大きく、スケーラブルかつセキュアな認証が必要な中〜大規模プロジェクトに向いている。
- Auth0: 幅広いカスタマイズやエンタープライズ連携が必要な場合に強み。自社内のSSOやサードパーティ連携など複雑な認証要件に対応しやすい。
最終的には プロジェクトの規模・要件・既存インフラ に合わせて選択すると良いでしょう。
参考リンク
- Firebase Authentication 公式ドキュメント
- Amazon Cognito 公式ドキュメント
- Auth0 公式ドキュメント
- AWS Cognito 料金ページ
- Firebase 料金ページ
- Auth0 料金ページ
以上が Firebase、AWS Cognito、Auth0 の比較となります。それぞれの最新情報は公式ドキュメントや料金ページをご確認ください。
これら3つは認可ロジックを提供しないのか?
「Firebase Authentication」「AWS Cognito」「Auth0」は主に 認証(Authentication) を担うサービスです。
一方、認可(Authorization) のロジック(たとえばロールベースのアクセス制御や細かな権限管理など)は、基本的に アプリケーション側 で実装する必要があります。
基本方針:認証(Authentication)と認可(Authorization)の分離
一般的に「認証」は以下のようなプロセスを指します:
- 認証(Authentication): ユーザーが「誰であるか」を確認する (例: メールアドレスとパスワードでログイン)
そして「認可」は次のようなプロセスです:
- 認可(Authorization): 認証されたユーザーが「何をできるか」を決定する (例: 管理者だけがユーザー管理画面にアクセスできる)
これら3つのサービスは主に「認証」部分をサービスとして提供しており、アプリケーションの要件に応じた細かなロール管理やアクセス制御ルールなどは、開発者がそれぞれのサービスの拡張機能や自前のロジックで実装・管理するのが基本です。
各サービスでの認可機能のサポート例
Firebase Authentication
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カスタム クレーム(Custom Claims)
Firebase Auth にはユーザーのトークンにカスタムクレームを付与する機能があります。
これにより、ユーザーに「admin: true」のような属性を持たせ、アプリ側のロジックで管理者機能を実行可否判断する、といった基本的なロールベースアクセス制御が可能です。 -
Firestore ルール / Realtime Database ルール
Firebase 特有のデータベース(Firestore, Realtime Database)では、ルールを用いてアクセス制御(認可ロジック)を書けます。
ただし、これらはあくまでFirestore/Realtime Databaseのアクセス制御に特化した仕組みです。
幅広いサービス全体の認可ロジックは、アプリケーションやCloud Functionsなどで実装する必要があります。
AWS Cognito
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グループ(User Pool Groups)
CognitoのUser Poolに「グループ」を作成し、ユーザーを紐付けることでロールベースの制御を簡易的に行えます。
ただし、これはユーザーの属性情報としてグループが付く程度の機能なので、最終的にどの操作を許可するかはアプリケーション側で判定する必要があります。 -
Identity Pool と IAM ロール
Cognito Identity Poolを使うと、認証されたユーザーに対して特定のIAMロールを割り当てる仕組みがあります。
これにより、ユーザーのロールに基づきAWSリソース(S3やDynamoDBなど)へのアクセスを細かく制御できます。
ただし、あくまでAWSリソースへのアクセスをIAMベースで管理するアプローチなので、アプリケーション独自の権限管理には別の仕組みを用意する必要があります。
Auth0
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Role-Based Access Control (RBAC)
Auth0のダッシュボードや拡張機能を使って、ユーザーに「Role」を割り当て、それをトークンに含めることは可能です。
エンタープライズプランなどでは、より高度なルールを書いて柔軟にトークンを編集したり、カスタムクレームを付与できます。
ただし、最終的に「どのロールがどのAPIをコールできるか?」などの制御は、アプリ側やAPIゲートウェイ側で実装・設定するケースが多いです。
結論:あくまで「認証が主」、認可はアプリ側で補う
各サービスとも**「ユーザーが誰であるか」** を担保する部分(認証)は充実していますが、「ユーザーが何をできるか」(認可)まではフルカバーしません。
ロールの概念を持っているサービスもありますが、そのロールに基づいて具体的に何を許可/不許可にするかは、最終的にアプリケーションコードやAPIの設定などで制御します。
ポイント:
- Firebase Authentication: Custom Claims と Firestoreルールでシンプルな認可を実現
- AWS Cognito: グループ (User Pool Groups) / Identity Pool / IAMロールでAWSリソースに対する認可を管理
- Auth0: RBAC 機能があり、カスタムクレームを付与できるが、実際のアクセス制御はアプリ側が行う場合が多い
したがって、どのサービスを選んでも最終的な認可ロジックはアプリやバックエンドでコーディング・設定する必要がある、という点は押さえておきましょう。
Discussion
Auth0を取り上げていただいてありがとうございます。2024年9月に無料プランの改定を行い、月間アクティブユーザー数の上限拡大、およびSNSを利用したログインの制限数を撤廃いたしましたので、ぜひそちらもご確認いただければ幸いです。