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ゲーム業界における新収益認識基準の話でLTに登壇してきた

に公開

GGLT に参加してきました

GGLT(Game Gatling Lightning Talk) とは: ゲームに関することなら何でもありのライトニングトークイベントです

https://gglt.connpass.com/

関西にいたころから参加させてもらっており、今回久しぶりの開催ということで声をかけてもらって登壇の機会をいただきました。

登壇内容

発表資料はこちらです。

発表内容2つで迷っていて「ゲームのサーバエンジニアリードに必要な技術」とこのタイトルで悩んで今回はこちらにしました。

登壇の意図

自分はLTをする場合は真面目な内容よりも勢いでしゃべって笑ってもらうのを目的として話すことが多いのですが、今回は少し固い内容だったのもあり意図的にスライドや話す内容を緩めにしました。

こちらを選んだ理由としては新収益認識基準の対応と真面目に向き合う機会があったのですが、ゲーム業界で新収益認識基準にちゃんと向き合ったことのあるエンジニアってかなり少ないんだろうなあということでどこかでアウトプットしておかないと勿体ないと思ったからです。

ただ流石にLTネタにすると流石に具体的な内容に触れる時間はなかったので、少しブログで補足できればと思います。

新収益認識基準について

新収益認識基準とは、2021年から導入された新しい会計基準です。

「収益認識」というのはだいたい「いつ売上を認識するか」という意味になります。

新収益認識基準以前では日本では収益を認識するタイミングは包括的な基準が定められておらず比較的自由に売上計上のタイミングを選べたのですが、企業の事業内容が多様で複雑化した現在では混乱を招く可能性が出てきました。

そこで、日本の会計基準も国際的な会計基準に合わせて統一することになったというのが導入の背景です。

なお LT の中ではスライドに記載しているのみで言及していませんでしたが、新収益認識基準が強制適用される対象は 上場企業、上場予定企業、会社法上における大企業 になります。

そのため、適用が必須の会社は一部の企業に留まります。

しかし、サーバエンジニアの視点としては正しい会計処理を満たすことを意識する必要はあるでしょう。

新収益認識基準の5つのステップ

新収益認識基準では売上は5つのステップを経て検討した金額とタイミングにより計上されます

これらはスライドで簡単に説明させてもらった程度の内容に留めておきます。

で、なんかゲームに関係あるの?

これらのステップは真剣に考えるとオンラインゲームにおいて適用するには難しいものが多々あります。

このスライドにあるように、即時に売上に認識するか充足期間に渡って売上を認識するかは販売物の実態によって異なります。

また、履行義務の終着点がどこなのか不明なものが多く、全てのものを正しく売り上げ計上するのは相当ややこしいことになります。

さらには、消費物であったとしても二次通貨やガチャを考慮すると厳密に消費物の単価がいくらだったのかを正しく追跡するのは可能であっても高コストです。

ちなみにこのスライドのような話を現場で話しているときは「こうなったら消費アイテムの中に有償消費アイテムと無償消費アイテムが出来て大変なことになるよね……」みたいな笑えない会話がされていました。怖すぎる。

なお、ガチャに対して会計基準をどう認識するかは企業によっても異なり、次世代監査法人IPOフォーラムさんの記事にどの企業がどちらで対応しているのかについて詳しく書かれていたりします。
https://jisedai-kansa.jp/ipo-qa/post-1442/

どう対応するのか

結論としてはLTでも述べましたが、公認会計士や会社経理の方ときちんと相談していくのがやはり重要でしょう。

例えば、僕が対応した際には「消費アイテムについては厳密な単価計算をしなくても、こういう報告の出し方をしてくれれば後は会計処理でなんとか出来ますよ」みたいなことを経理の方に言ってもらえてかなり実装を簡易的に済ますことが出来ました。

厳密な処理になっていなくても、会計上の計上処理が正しければ問題ないということですね。

やはり専門的な話は専門家に相談するのが一番でしょう。

まとめ

オンラインゲーム、特にスマートフォンゲームに関する収益認識基準に関しては、モバイル・コンテンツ・フォーラムさんが以下のような資料を出しています。

https://japanonlinegame.org/2020_0316/

https://www.mcf.or.jp/temp/guideline_smartphonegame_revenue_recognition.pdf

この資料では以下のように述べられています。

なお、上記の判断及び進捗度の適切な見積方法は、企業が提供するゲームの性質
や、ゲームの中で使用されるアイテムの性質等を加味して決定されるべきもの
であり、企業やゲームによって、収益の認識時期は異なる可能性がある。そのた
め、単一の収益認識方法を会計基準の中で定めることは適切ではなく、各社が、
自社が提供するゲームの実態を反映した適切な方法に基づき収益を認識すべき
であると考えられる。
(中略)
このような状況において、会計処理を画一的に定めると取引の経済的実態を適切に表現できず、実態にそぐわなくなる虞や実務上過度の負担を強いる虞があります

つまり、統一的なな会計基準が定められていないのは不便と感じるかもしれませんが、類似する過去の事例や他企業の例を画一的に適用するのではなく、ゲームの実態を反映した適切な方法をちゃんと検討することで実態にそぐわない会計処理を適用したり、過度な負担を強いられないようにという配慮がされているというわけです。

各企業が制作・配信するゲーム性の特徴を捉えずに、会計処理を画一的に定め
ると、取引の経済的実態を適切に表現できず、実態にそぐわなくなる虞や実務上
過度の負担を強いる虞があり、ひいてはゲーム制作に対する健全な創造活動を
失うことになり兼ねません。
本質的には、新しい収益認識の会計基準に沿って、各企業が制作・配信するゲ
ームの実態や実状に即した会計処理を適用していくことが重要であると考えま
す。

スライドにも書きましたが、正しさを追及しすぎて過度な対応を行うことによって本来の目的である創造活動に影響を与えてしまう可能性もあります。

もちろん企業として正しい会計処理を取るための努力は必要で、そのためにはこういった事柄への理解や、専門家への相談を行うことで本来行う必要のなかった複雑な対応を避けられるケースもあるかもしれません。

モバイルゲームを含めオンラインサービスは近年出てきたあたらしい概念であり、こういった制度や概念において整備しきれていない部分もあるでしょう。

そういった中でも整備に期待しつつ、理解を示しながらあるべき姿を検討していくことも重要だと感じる出来事でした。

……といったことを語るには、LTはあまりにも時間がなさ過ぎたのでここに書かせてもらいました。

あらためて、登壇の機会をいただき GGLT の運営の皆様、および参加者の皆様ありがとうございました。

次回の機会があればまた東京から飛んでいきたいと思います。

それでは。

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