難しい文章が難しい理由と読書用ブラウザ拡張
はじめに
読書用ブラウザ拡張
こんな読書用ブラウザ拡張をつくりました。単語タップで同じ単語が同じ色にハイライトされます。ほぼ全てのインターネットのページで動きます。(以下、Zennの記事への適用動画。タップ部以外の下の方も同じ単語がハイライトされてる点、注目ください。)
これが難しい文章の攻略に効くのですが、どう効くのか、最後まで読み進めると分かるはずです。
【追記】体験版、用意できました。
難しい文章(例)
例えば以下の文章です。
化学結合
化学に明るい人なら大したこと無いかもしれないので、以下も用意しました。
純粋理性批判)
カント(これも難しくない人は、何かご自身と程遠い分野の堅い系の文章を想像してほしいです。
身近なところでは、Zennでご自身が詳しくない領域の記事などです。
難しい本の特徴 - 「分かること」は「分けること」
専門性が高い文書は現象を「うまく分けよう」とします。
例えば、冒頭の化学の例であれば「結合」という概念がありますが、「化学結合」、「分子内結合」、「分子間結合」、「金属結合」、「イオン結合」、「共有結合」などといった言葉を用意し、それぞれの定義を行います。これは言葉を「分け」ることで現象を「分け」ていることになります。分けられた概念同士の関係を示すことで、それらを理解した(「分かった」)ことになります。
形容詞による細分化
言葉で現象を分ける際は、基本となる名詞に対して形容詞がかかってきます。化学結合の例もそうなっています。
名詞の頻出化、際限ない組み合わせ爆発
これにより、同じ単語が何度も出てきます。上であれば「結合」です。更にそれに留まらないです。一度形容詞を付与された名詞は全体としても「名詞」になります。例えば「共有結合」は名詞となり、それをさらに区別するために「極性共有結合」「非極性共有結合」といった単語が出来上がります。概念間の説明をする際には形容詞 x 名詞の組み合わせが掛け算が出てきます。「人間理性」「純粋理性」「純粋直観」「純粋悟性概念」、、などといった具合です。
難しい理由 - 同じ単語(名詞)が何度も出現
このような同じ単語の連続は、退屈を招くと同時に視認性を著しく低下させます。冒頭の2つを再度確認してほしいです。
(化学結合、純粋理性批判)。
(難しい理由は他にも語彙が難しい等ありますが、それも上の作用で単語が長くなった際に端的に〇〇、と表すために造語されたものだったりします。)
処方箋 - 自然言語へのハイライトの試み
しかしこれは逆に利用できます。答えを書いてしまうと複合されている形容詞、名詞を「色分け(ハイライト)」できます。
専門的文書とハイライトとの相性
他にも専門的文書にとりわけ都合が良いのは、上記形容詞、名詞は厳密に同じものが使われます。
これは言い換えると意味がぶれてしまうから、です。たとえ同じ意味であっても、「共有結合」と"Covalent Bond"を同一文書内で無断で使うのは「普通はない」です。
これはハイライトに非常に有利です。つまり一つの単語をハイライトすると、かなり広範な領域が色分けしてハイライトされます。
ハイライト例
冒頭の「化学結合の記事」にハイライトした結果を示します。
多色ハイライト(化学結合、完全体)
!?本当に読みやすくなっているのか?と思われたかもしれまん。
その感覚は恐らく正しいです。目がチカチカするのが上回って、却って読みにくくなります。
多色ハイライトだけでは×です、他に必要な条件がいくつかあります。
多色ハイライト成功の必要条件
必要条件1 - 漸次ハイライト
まず、既に出来上がってしまっているのがまずいです。
最小限のハイライト
多色を使うことで視認性が下がります、目がチカチカします。
これは普段ハイライトに慣れていないのもありますが、慣れていてもそうです。
できれば色は最小限でいきたいところです。
意図が読めるハイライト
目がチカチカするのもありますが、一番イケないのはハイライト意図が読めない場合です。
色を使う=多次元化、つまり自由度が上がっています。
それ故に結果の可能性、ハイライトして分けられた結果の種類はとても多いです。
既に出来上がったハイライトから、その意図をすぐに読み取ること、これは殆ど不可能です。
ハイライトを使い分ける文脈は無数にあります。
例えば共有結合をイオン結合と見分けたいのかもしれないし、共有結合を共有電子対といった具合に、結合の話と電子対の話を分けたいのかもしれないです。
ハイライトの意図が読めない場合は全くの逆効果になってしまいます。
対策としての漸次ハイライト
ハイライトを最小限にして趣旨を理解しながらやるには、「必要なときだけ」「自分でハイライト」すればいいです。
必要なときとはもちろん、読んでいて区別したいなという単語が出てきたときです。
これを少しずつ実行していきます、他人ではなく自らの手で。
これならハイライトで使われる色は最小限になるし、意図も読めます。
必要条件2 - 高速ハイライト
しかし漸次ハイライトも問題があります。つまり「ハイライトコスト」です。
ハイライトコスト
ハイライトを実行するには、「単語」と「色」の指定が必要になります。
普通はキーボードやマウス、コンテクストメニューを利用します。
これらの使用は読書からの集中が切れさせる要因となるので、必要最小限で済ませたいです。
しかしこの、キーボード等による設定が相当な足かせになります。
化学結合のページで検索を試してみるとよく分かります。
そもそも多色ハイライトできないですが、それに目をつむっても不便です。
毎回キーボードやモバイルならフリック入力を求められます。コピペするにしても範囲選択からのCtrl+c、もしくはモバイルならコンテクストメニュー選択、からのテキストボックス内でのペースト動作が必要です。
さらにこれらは単語指定であって、色をどうするかの選択も待っています。
このようにハイライトコストは一条件を指定するだけでも相当に大きいです。複数ならなおさらです。これでは読書からの集中が毎回切れて逆効果です。
処方箋 - タップハイライト
上記を問題点を解消すべく、筆者はタップハイライトという技術を開発しています。
タップだけで高速ハイライトを実現してます。
読書を妨げないでハイライトの色分け効果をフル活用するには、これくらいの速度感が必要です(形容詞、名詞の文脈ではないですが高速なことに注目ください)
タップハイライトの簡単なものは既にSafari拡張としてAppストアに置いてあります。
興味がある人は是非、ご自身の手で動かしてほしいです。
上に述べたとおりに、意図が読めないハイライトは逆効果だからです。
逆にご自身で動かせばいつもとは違う読書感が得られます。とりわけ、視野の拡大とそれがもたらす余裕感を体感してほしいです。
あとがき
折角なのでZennの記事で実験すると面白いかもです、専門用語が多く出てくるのでかなり読みやすくなります。Zenn BooksもWebで見えるので、○です。
例に出したWikipediaも効果的です。
他にも論文にも強いです。たとえばarXivなどの○○Xiv系に使ってみてください。arXivはhtmlがない(基本はPDF)ですが、ar5ivというサービスがあります。そちらと併用するとハイライトして読めます。過去にar5ivについての記事を書いてます。よければ見てみてください。
以上、最後まで読んでくださりありがとうございました。
おまけ
読書会、挑戦してみます。
次の投稿で、具体的にZennの記事をどうタップハイライトしていくと良いか、ご説明します、定石があります。
【追記】体験版、用意できました。
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